東京都東大和市/平成29年3月現在
東京都の中央部の北側に位置する東大和市は、都心から約1時間の距離にあり、昭和30年代から現在に至るまで、住宅都市として発展してきました。現在は約8万5千人が暮らしており、東は東村山市、西は武蔵村山市、南は立川・小平両市、北は埼玉県所沢市と接しています。多摩湖や雑木林を包有する狭山丘陵が広がる、自然にあふれた市です。
東大和市では、市民からの要望に応えて、知的障害専用の福祉避難所の協定を結んでいるほか、東大和助産院と妊産婦等の支援に関する協定を締結しています。
モデル事業を通じてマニュアルを作成
東大和市では、国や東京都が要配慮者の避難支援についてガイドラインや指針を策定するなか、平成22年から「災害時要援護者対策検討委員会」を設置し、平成23年から24年にかけては湖畔地区と栄一丁目自治会で避難支援体制づくりを実施しました。その経験や成果をまとめる形で冊子『災害時要援護者支援の進め方』を発行し、各自治会に配布する等、要支援者への支援のしくみや避難について、取組みを行ってきました。
モデル事業の実施風景
【東大和市の避難行動要支援者支援の取組み】
平成22年11月 | 災害時要援護者対策検討委員会 設置 |
平成23年 8月 | 東大和市災害時要援護者避難支援プラン(全体計画)策定 |
10月 | 災害時要援護者避難支援登録制度 開始 |
湖畔地区で避難支援体制づくりモデル事業 開始 | |
平成24年10月 | 栄一丁目自治会で避難支援体制づくりモデル事業 開始 |
平成25年 3月 | 「災害時要援護者支援の進め方」発行 |
平成26年 4月 | (改正災害対策基本法 施行) |
11月 | 東大和市災害時要援護者避難支援プラン(全体計画)改定 |
東大和市福祉部福祉推進課の池田剛さんは、「東大和市は自治会や民生児童委員の活動が盛んで、ゆるやかなつながりによる見守りの体制が整っていた」と話します。ただ、「災害に関しては、どうしても自分の身に起こるまでは他人事になりがち。毎年総合防災訓練を開催したり、要支援者に着目したワークショップの開催等を行っているが、市民に要支援者への意識を持ってもらうためにはまだまだ努力が必要だと感じている」と言います。
知的障害者専用の福祉避難所を設置
防災訓練の様子
「東日本大震災以後、市民の防災に関わる意識が大きく変わったと感じる。特に障害のある方等は、災害時に真っ先に困難に直面する可能性が高いため、危機意識が高い」と池田さんは話します。実際に東大和市も、知的障害のある子どもを持つ保護者の団体から、東日本大震災をきっかけに「災害時に知的障害者専用の福祉避難所を設置してほしい」という要望をうけました。
当初は市内で対応できないか検討しましたが、東大和市には知的障害者向けの入所施設はありません。検討をすすめる中で、隣接する東村山市にある、社会福祉法人恩賜財団東京都同胞援護会が運営する指定障害者支援施設「さやま園」が受入れに手を挙げてくれました。さやま園は、すでに施設がある東村山市と災害時の要援護者の受入れについて協定を結んでいたため、東大和市では東村山市の防災安全課とも利用範囲等の調整を行い、平成25年6月に、二次避難所の開設支援、災害時要援護者の受入れを含む「災害時における二次避難所(福祉避難所)の開設等に関する協定」を締結しました。池田さんは他市にある施設との協定について、「もちろん市内で支援できるのが理想だが、そう言っている間にも災害が発生するかもしれない。それなら他市の施設だとしても、受入れていただけるところにお願いするのが、最も当事者のためになると考えた」と説明します。
この市外にあるさやま園を含め、福祉避難所の協定を結んでいる施設が実際に開設することになった際には、市の高齢介護課、障害福祉課から、職員を1人以上派遣することが決まっています。池田さんは「施設に福祉避難所の開設をお願いするからには、市が丸投げすることはあってはならないと考えた。派遣職員は、施設の方や避難者の方と直接顔を合わせる機会を持つとともに、市の本部との連絡調整係を担うことになる」と話しました。
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