みらいbaby
小さく生まれた子どもとその家族の思いを支える
掲載日:2023年3月7日
2023年2月号 Topics
 

みらいbaby 代表理事 羽布津 碧 さん

 

みらいbaby 副代表 櫻田 智子 さん

 

あらまし

  • 現在、日本では約10人に一人が、低出生体重児(2,500g未満で生まれた子ども)として生まれています。小さく生まれると合併症や発達の遅れの可能性等のリスクがあり、家族にはさまざまな不安や悩みが生まれます。
  • 小さく生まれた子どもとその家族が暮らしやすい社会をめざして東京を中心に活動を行う「みらいbaby」代表理事の羽布津碧さんと副代表の櫻田智子さんにお話を伺いました。

 

当事者の不安や悩みは幅広い

みらいbabyは、低出生体重児の母親である羽布津さんの経験がきっかけとなって、2021年5月に立ち上げられました。ダウン症や心臓病の子どもの家族会などはある一方で、「小さく生まれた」子どもの家族同士が話せる機会は少なく、居場所がないと感じていたからです。

 

櫻田さんはSNSで羽布津さんの活動参加の呼びかけを知り、参加を決めました。櫻田さんも子どもを2,500g未満で出産しました。「NICU(新生児集中治療室)では生死に関わる状況のお子さんもいるため、気軽に声をかけにくい。心のうちを話せる居場所がない」と話します。

 

小さく生まれた子どもを持つ家族が抱える悩みや不安は、幅広くあります。例えば、未熟性の高い子どもの多くはNICUに入院しますが、入院中、家族は面会に通わなければなりません。現在はコロナ禍でもあり、その時間は制限されています。また、早産で産まれた赤ちゃんのためには母乳が必要ですが、搾乳機で母乳を絞り冷凍して毎日のように病院へ運ぶことは、心身共に回復していない産後の体では大変な苦労があります。そのような状況が続くと「私は何をやっているんだろう。本当に子どもを生んだんだっけ?」と感じる人もいると言います。

 

「小さく生んでしまったことで自分を責めるママも多い。その気持ちから回復したい、自分の子どもを自分でお世話したいのにできないと話す人もいる」と羽布津さんは言います。標準的な体重・週数で生まれた子どもの子育てには当てはまらないこともあり、情報が集めにくいことも大きな課題です。

 

情報交換できる場としての交流会

みらいbabyでは月2回程、オンラインと対面にて交流会を行っています。子どもが入院中の方から2歳の子を育てる方を中心に、子どもが小学生になる方や自身が小さく生まれた方など、都内外から幅広く参加があります。羽布津さんは「例えば出産したばかりで今は誰とも話したくない方でも、そのうち話せる場があると思えるだけでも気持ちが楽になると思っている」と、定期的にこの交流会を開催することを心掛けています。

 

交流会では、例えば在宅酸素を載せるベビーカーはどれが良いか等、当事者ならではの具体的な質問が出ます。開催後のアンケートでは「同じような境遇の人に初めて会った」「当事者の方と会って話せたことが嬉しかった」という声が多く聞かれます。

 

医療、行政と手を取り合って一緒に地域で育てていきたい

櫻田さんは「赤ちゃんが退院してからでないと産後ケアを受けられなかったり、障害児枠で保育園に入園できるかどうか地域によって対応の差が大きかったりする課題もある」と言います。そうした状況では、特に母親の仕事復帰が難しかったり、本当は2人目が欲しいのに諦めてしまうことにつながってしまいます。「子どもが小さく生まれても仕事を継続したいママや、『私が小さく生んでしまったから自分が一生面倒見なければいけないし、仕事なんてしてはいけないんだ』と思うママもいる。こういう気持ちをまずは知ってほしい」と羽布津さんは言います。

 

櫻田さんは「医療、行政と当事者が一緒になって、その地域でその子を育てるものだと思うので、同じ方向を向けたら有難い」と話します。
羽布津さんも「家族会があればすべてOKではなく、私たちも限界がある。同じように医療にも行政にも限界があると思うので、地域で子どもたちが楽しく生きていけるように一緒に手をつなぎませんか?」と語りかけます。

 

医療・福祉関係者には、家族の気持ちに配慮した対応や、小さく生まれた子どもも含めて色々な子どもがいることを視野に入れることが大切です。

 

リトルベビーハンドブックというサポートブックが発行されている自治体もあります。今後、羽布津さんは当事者のニーズ調査から始め、リトルベビーハンドブックの形を含めた支援ツールの作成を検討しています。

 

 

取材先
名称
みらいbaby
概要
みらいbaby
https://ameblo.jp/miraibaby1117
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