あらまし
- 昼はみんなの居場所「ゆずり葉」の理事長として、夜は居酒屋「笑い処」のオーナーとして地域の人をつないでいる齊藤敦子さんにお話を伺いました。
◆原点は街の電器屋さん
21歳の時から32年間、両親が営む電器店の高島平支店で働いていました。家族経営だったから朝から晩まで忙しくしていたのですが、お客様からは「スーパーで何か買ってくるよ」など何かと声をかけてもらっていました。
お店ではオーブンレンジやIHなど新しい電化製品の使い方を教えるために、月に2回先生を呼んで料理教室を開いていました。一緒に料理をつくってみんなで食べるとお客様の笑顔が出て元気になるんです。年を取って独り身になると孤食になり、それが粗食にもつながって気分も落ち込むのだと思います。だから自分が居場所をつくるとしたら台所は欠かせないと思いました。
◆高齢者が楽しく過ごせる居場所を
気になっていたことは他にもあります。病気で入院したお年寄りの方は、退院すると地域に戻ってくると思いますよね? でも実際には親戚のお世話になったりして、戻ってこないこともあるんです。さらに、誰にも言わずにそっと去っていく。なぜなら、移転先を周囲に知らせて電話などをもらうと、面倒を見てくれている人の負担になってしまうと考えるからです。そこまで気を遣っているお年寄りの方が、最後に楽しく過ごせる場所があったらと思っていました。
そんな時に東日本大震災が発生し、死ぬ前に自分が本当にやりたいことって何だろうと考えるようになりました。それは、私が人生で経験していないことをたくさん教えてくれた地域の人たちに恩返しをすることだと思い至り、電器店をやめて2014年に「ゆずり葉」を立ち上げました。昼は居場所として開けていて、夜は居酒屋として経営しています。
◆関係機関や仲間に支えられて
立ち上げてはみたものの、勝手が分からないことも多く、特に認知症については、人生の先輩に対してどんな声かけをすればいいのか見当もつきませんでした。舟渡おとしより相談センターに電話してアドバイスをもらったり、職員に駆けつけてもらったりしたほか、板橋区の認知症施策推進係も親身になって支えてくれました。
サロン登録をしている板橋区社会福祉協議会も、対応に困った時などに勉強会を開いてくれています。私からは参加者に言いにくいことでも、そういった機会に伝えてくれたりしますし、もちろん私自身勉強になっています。
17年に法人化しましたが、居場所やお店に関わっている人が、それぞれの得意分野を活かしてサポートをしてくれています。
◆たくさん笑って帰ってほしい
男性を呼び込む工夫として、「箸遊び」などを取り入れています。ピーナッツを箸でつまんで右から左に移す時間を計り、昇級・昇段をめざすものです。途中で失敗してもみんなで笑い合ったりしています。黙っててもできるので、あまりしゃべらない男性にもいいんじゃないかって。私はあまりノーと言わないタイプで、やるためにはどうしたらいいか、もしだめだったらやめればいいという考えでいます。それが、これまでやってこられた理由かもしれません。
今は、認知症の方や家族をもっと支えていくために、厚労省がすすめる「チームオレンジ」の立ち上げに向けてみんなで頑張っています。この居場所に来た人に笑って帰ってもらえるように、これからも取り組んでいきます。
http://yuzuriha-takashimadaira.com/