学生団体C-plant、日野市立カワセミハウス、中央大学ボランティアセンター
大学生のボランティア活動と地域のつながり ~コロナ禍を経ての現在地
掲載日:2023年6月12日
2023年6月号 NOW

 

 

あらまし

  • コロナ禍による活動の縮小や休止は、多くのボランティアや団体にとって、活動の意義を改めて確認する機会にもなったといいます。今回は地域に根ざした活動を行う大学生のボランティア活動に着目し、活動を支援するボランティアコーディネーターや地域の方の視点も交えて、コロナ禍を経ての地域での活動について伺います。

 

コロナ禍で悩みながらの活動

2016年に発足した学生団体C‐plantは、日野市内を拠点に子どもの居場所づくりに取り組む学生有志のボランティアサークルです。空き家を活用した子ども食堂の活動を経て、19年からは市の施設「カワセミハウス(※)」で月に1回、小中学生と大学生が交流する居場所「まるっと」を開催しています。基本的なプログラムは、子どもたちの勉強を見守り、途中でおやつをつくって食べ、最後に外で遊ぶこと。これらを通して、子どもたちと楽しく笑い合える時間をつくっていましたが、新型コロナの感染拡大により、20年2月以降は活動の休止や縮小を余儀なくされました。

 

第6期共同代表を務めた中央大学4年の手塚咲来さんは、「20年はほとんど活動できず、21年からは2か月に1回くらい開催できたらいいよねという感じで、緊急事態宣言の様子を見ていた」と振り返ります。コロナ禍の先が見えない状況で、中央大学では全ての学生に対して活動の自粛を要請していました。中央大学ボランティアセンター(VC)では、その大学方針に基づき、公認団体に対して対面の課外活動を控えるよう伝えていました。しかし、C‐plantは大学の方針をふまえた上で自己責任で活動していたといいます。手塚さんは「21年は特に悩んだ。感染している学生も多く、宣言の状況にかかわらず、何を基準にして開催の判断をするかが難しかった」と話します。

 

それでも「まるっと」の再開に向けて、感染予防対策用品や学習テキスト、市販のおやつの購入費用を調達するためにクラウドファンディングに挑戦するなど、活動は継続していました。「資金調達だけでなく、もっと居場所の活動を知ってほしいという思いで2回実施し、どちらも目標額を達成できた。匿名なので想像になるが、『いつもお世話になっています』といったコメントをいただいたので、お子さんの親御さんが寄附してくれたのかも」と感謝しています。

 

地域住民の声に応えて「まるっと」を再開

休止していた「まるっと」を再開したのは20年9月。きっかけは地域住民から「やらないの?」と声をかけてもらったことでした。カワセミハウス協議会副会長の中村康子さんは「C‐plantの活動は毎月の行事として定着していて、子どもたちも学生と遊ぶことをとても楽しみにしていた」と当時の状況を話します。

 

そもそもC‐plantがカワセミハウスで活動するようになったのは、中村さんとの出会いがきっかけでした。発足当時の活動場所が使用できなくなった時期に、日野市地域協働課を介して顔がつながり、施設利用に至りました。その後、中村さんの声かけで協議会に参加するようになり、現在は団体として副会長を務めています。協議会は3か月に1度開催されるため、コロナ禍でもつながりが途切れることはありませんでした。手塚さんは「活動できない期間も気にかけてくださり、またカワセミハウスに帰ってもいいんだと思えた」と話します。

 

再開時には保護者から感謝の気持ちを伝えられたり、再開を待ち望んでいた子どもたちからは「次はいつやるの?」と聞かれたりしたことで、この交流が地域に求められていたことを実感したそうです。手塚さんは「子どもたちも笑顔だったし、何より大学生が楽しんでいて、自分たちが元気をもらえる場だと思った。月イチでも続けることに意義がある活動だと感じた」と言います。新型コロナ以降、長期間にわたってオンライン授業を強いられていた大学生たちにとって、「まるっと」は貴重な「リアル交流」の機会となりました。

 

学生が地域で活動する意義

大学VCや地域住民は大学生による地域活動の意義をどのように捉えているのでしょうか。

 

中央大学VCでボランティアコーディネーターを務める開澤裕美さんは、①多様な価値観にふれることができる、②座学と体験がつながり学びが深まる、③この時期にしかできない経験が次につながる、の3点を挙げています。

 

「大学では年代や学力、生きてきた過程などが似通った人たちが集まってくる。地域の中で年代や背景、考え方などが異なる方と交わる機会があることは、これから社会に出ていく学生にとって大きな刺激になる」と説明します。「地域は自分の学びを体現できる場。大学で学んでいることが『授業で習ったのはこれか!』とリンクして、良い循環が生まれる」と言います。そして「学生時代に地域の方と関わった経験があれば、また地域で活動しようという人も出てくるのでは」と、その後の生き方にも影響する可能性にもふれます。

 

中村さんは、「自治会も地域団体も高齢化しているが、若者の意見には聞く耳を持っている印象。柔軟な発想にも『こういう考えをしているのか』と新鮮さを持って受け止めており、良い刺激を受けている。若者の力は明るい日差しのようなもので、自分たちの活動も活性化されるのではと思っているように感じる」と、学生が地域で活動することを歓迎しています。

 

(左から)開澤裕美さん、手塚咲来さん、中村康子さん

 

学生と地域をつなぐ際に必要なサポート

中村さんのような地域のキーパーソンとなる方がいる場合には、学生と地域をスムーズにつなぐことができますが、そうでない場合はさまざまな調整が必要になるといいます。

 

開澤さんは「例えば地域のイベントなどで活動時間が朝6時から夜8時までといった話が来ても、地域の方と違って学生は近所に住んでいるとは限らないので、やりたい気持ちがあってもできないことがある」と言います。「そういう時は、学生の参加時間を8時からにしてもらったり、時間帯を3つに分けたりする工夫が必要。基本的にはお互いがうまくいくように見守り、必要な時には間に入るというスタンスで、意見のすり合わせや情報の整理などをできる範囲でサポートしている」とコーディネートの姿勢を説明します。

 

中村さんは「地域で活動する際には、住民や関係機関とつながりがあり、情報をたくさん持っている地元のVCの力が必要になってくる」と話します。開澤さんも「地域での受入れ状況などは詳しく分からないので、地域の方からの情報があるとありがたい」と期待を寄せます。

 

手塚さんは「これまで大学VCと地域の方からたくさんの情報をいただき、大学生の経験値だけでは補えない点や、地元在住者以外には分からない点をサポートしてもらった。そういったつながりがあったからこそ、コロナ禍があってもこの活動を続けられている」と話します。

 

現在「まるっと」では、カワセミハウスの開設当初に来ていた小学生のうち2人が高校生となり、勉強を教える側として活躍してくれているといいます。手塚さんは「こうした居場所における循環を、C‐plantを起点につくっていけたら」と今後の活動を展望しています。

 

(※)日野市立カワセミハウス
2017年、JR中央線豊田駅近くにオープンした市立施設。集会室やオープンキッチン、芝生広場などを併設し、誰もが気軽に立ち寄れる居場所をめざす。地域住民や事業者、利用団体等で構成する協議会を設置し、事業を推進している。

勉強とおやつの後は屋外で思いきり遊ぶ

 

 

子どもたちの勉強や宿題などを見守る

取材先
名称
学生団体C-plant、日野市立カワセミハウス、中央大学ボランティアセンター
概要
学生団体C-plant
https://linktr.ee/cplant0930
日野市立カワセミハウス
https://www.city.hino.lg.jp/kawasemihouse/index.html
中央大学ボランティアセンター
https://www.chuo-u.ac.jp/usr/volunteer/overview/
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