立川市ひとり親家庭福祉会「立川みらい」
会長 篠原輝美さん
あらまし
- ひとり頑張るお父さん、お母さんたちが親子で実りのある人生を送るために、さまざまな活動を続ける立川市ひとり親家庭福祉会「立川みらい」会長の篠原輝美さんにお話を伺いました。
◆縁もゆかりもない場所での新たな出会いが、今の私につながる
子どもが小学校に上がる前の一月に夫の激しい暴力で生死の危機にさらされ、保護され縁もゆかりもない立川市に移り住みました。二か月しか通わなかった保育園の卒園式で偶然二人のシングルマザーと知り合い、何かと助けてもらいながら子育てをしました。二人がいなければ、今の私たちはどうなっていたのかと思います。
急な残業で22時まで、一年生の子どもを一人で留守番させ、お腹を空かせて机の下で眠るのを目にする日々。27年前の話です。友人たちがコンビニ弁当を届けてくれたり、遊びに連れて行ってくれたり、孤独で不安で押しつぶされそうな時を支えてくれました。そんな中、立川市の母子会「立川みらい」の前身である立川マザーズに、知人に誘われて入会したのが今に至るきっかけです。
◆一人で悩みを抱えるひとり親の助けになりたい
当初は何となく同じ立場で子どもを連れて楽しく過ごせると良いなぁというくらいの気持ちで会に参加していました。その頃は自分の生活に追われ、他者を構う余裕などなかったのです。途中で退会したこともありました。再度知人に誘われ出戻り、いろんなお母さんたちとの交流や、母子会存続の問題にも関わることで、会への意識も変わってきました。そうして運営にも携わるようになり、副会長となった時期に立川市で母子の孤独死事件があり、マスコミでも大きく報じられました。立場は違えど私も、DVで逃げ隠れして誰も手を差し伸べてくれなかったら、孤独死の親子は自分だったかもしれないと強く衝撃をうけたのです。
同じ悩みを持つ親子はいる。きっとつながりたい親子はいる。一度は会員がいなくなり潰れかけた会ですが、「絶対に必要な居場所」だと思い、先代の会長に色々と教えてもらいながら、ひとり親に認知してもらうことをめざしてきました。会長になった際は、自分に務まるだろうかと不安でしたが「ひとり親のお父さん、お母さんが幸せにならないと子どもは幸せにならない。みんなが笑顔になれる団体にしたい」、その思いで会長を引き継ぎ、務めてきました。
助成金や寄附金を利用して、ディズニーランドへのバスツアーを企画したり定期的にイベントを行うようになると、会の活動は口コミでも広がり、現在は母子家庭122世帯、父子家庭8世帯の130世帯が会員に登録してくれています。電話やLINEを通じたひとり親のメンタルケアや、会員同士の交流の場づくりなど幅広く活動を展開しています。また、現在、約70世帯に向けた月2回の食品配布や無料学習塾「立川みらい塾」の開催、ひとり親の情報交換の場である「おしゃべりカフェ」の開催など幅広く行っています。
立川みらい塾にてプログラミング指導の様子
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食品配布の一コマ |
現在、子どもたちに普段接しない体験をしてもらい、豊かな心を持った人に育ってほしいと願い、昨年の春頃から始めた「子どもの五感を育むプログラム」に力を入れています。これまでに、観劇やフラワーアレンジメント、クリスマス会の縁日体験などのイベントを行いました。このような機会があると、子どもたちは年の差関係なく互いに助け合いながら遊びます。その光景を目にすると、子どもたちの成長を感じる事ができて、大人たちは心が温かくなります。
クリスマス会 |
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お楽しみ福引とリサイクルの会 |
◆活動をするうえで心がけていること
私はカラオケや映画鑑賞、観劇が好きなのですが、土日は団体の活動を行うことが多く、なかなか時間が取れないので、子どもたちにすすめてもらったゲームやマンガを読んだりして、隙間時間に何も考えない時間を作り、小さなリフレッシュをしたりしています。
現在「立川みらい」の活動の他に、仕事として他市の男女平等参画課で相談業務の仕事を6年間続けています。生活に困っている人や生きづらさを抱えている方々のお話を伺っていると、「孤独と孤立を防ぐ」ことの大切さをひしひしと感じます。
ひとり親に対する「家庭に問題があるのでは?」や「子どもがかわいそう」といった偏見や思い込みは未だに存在しています。どんなに頑張っていても何気ない言葉に傷ついてしまう事もあります。何に困っているのか?どうしたらよいのかを理解し、応援することが大切ではないかと思います。
◆お互い様、おかげ様の気持ちで支え合う
当団体には、自立しキャリアを伸ばしていく人、子どもの発達や自身の発達に悩みを抱えている人、外国のルーツを持つ人、さまざまな方たちが会員になっています。仲間として互いの違いを理解し合い、お互い様だからとみんなが手伝ってくれる様子を見ていると、この活動に未来を感じます。子どもたちが大きくなり、親子が団体から離れてしまっても、思い出の中で「ふるさと」のような温かい場所であればいいな、と思っています。「『立川みらい』で過ごした時間は楽しかった」とか「辛いことも多かったけど、『立川みらい』で救われたな」と思ってもらえるようにすすんでいきたいです。
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