あらまし
- 障害者の兄弟姉妹を、ひらがなで「きょうだい(児)」と呼ぶことがあります。ご自身もきょうだいであり、きょうだい会ファーストペンギン代表の菅井亜希子さんにお話を伺いました。
◆自分の感覚を大切に生きてきた
学生の頃からとにかくやりたいことが多く、興味を持ったことを自由に追いかけていました。現在は、音楽業界でライブハウスの裏方をする傍ら、イベント制作やオンライン秘書、法律事務も行っています。ここまで仕事が多岐に渡っているのは、大学時代の東日本大震災の経験が影響しています。「いつ何が起きても後悔しないよう生きる」と決め、自分の好きなことや感覚を大切にしてきました。
◆大人になって自分の生きづらさを知った
7つ下の弟が自閉症で、私は「きょうだい」にあたります。弟は高校生まで普通学級で過ごしていて、いわゆるグレーな状態でした。そのせいか、弟の発達に対して私の認識は「何かあるんだろうな」という程度でした。
しかし、私が社会人になり、「弟が障害者手帳を取得した」と母から聞いた時は、家族が障害者であるという現実に、なんともいえないショックを受けたのを覚えています。同時に、手帳を持つことで弟が生きやすくなるなら、と前向きに捉えようとする自分もいて、複雑な心情でした。
それから数年経ち、私がきょうだいについて意識したきっかけは、父が病気で倒れたことでした。ひとり親になるかもしれない状況で、母も歳を重ねていくなか、まず浮かんだのは「弟どうしよう」ということでした。自分が「弟の面倒を見なくてはいけないかもしれない」という見えないプレッシャーを実感したのです。さらにその頃の私は、自分の他責思考で悩み、生きづらさを感じていました。その生きづらさの原因を調べていくと、「機能不全家族(※)」というワードに行き着きました。「機能不全家族」にもさまざまな要素がありますが、自分の場合は、弟の障害が関係しているのではと考えました。そこで私は、自分の家族の現状と生きづらさに向き合おうと、「きょうだい会ファーストペンギン」の交流会に足を運んだのです。
◆きょうだい支援に携わって感じたこと
ファーストペンギンは20~30代のきょうだいを対象にした団体で、主な活動は対面での交流です。最初は交流会に参加するだけでしたが、気付けば会を企画する側にまわっていました。
交流会では、きょうだいだからこそ共感できる〝あるある〟が話題にあがることがあります。たとえば「兄弟はいますか」というよくある質問も「うっ」と感じるきょうだいは多くいます。家族に障害者がいると話すと、暗い雰囲気にしてしまうのではと思い、兄弟姉妹について隠したり、偽ってしまう。きょうだいならではの悩みは皆持っていて、その辛さの度合いは、兄弟姉妹の障害の重軽度などで決まるものではありません。「あの人の方が大変そうなのに」と自分を責めることなく、周りと比べないことが大切だと思います。
障害者の家族支援をされている方や福祉従事者の方にお伝えしたいのは、「きょうだいを一人の人間として見てほしい」ということです。私自身、市の福祉課職員の方からの「頑張りすぎないで」という一言で、肩の荷が下りた経験があります。自由に生きることに後ろめたさを感じてしまうきょうだいには、兄弟姉妹を通して接するのではなく「その人自身を気にかけている」と伝えることが支援につながるのではないでしょうか。
私も、まだまだやりたいことがたくさんあります。これからも自分の感覚に正直に、後悔のない人生を歩んでいきたいです。
(※)家庭内の対立や虐待などによって正常に機能していない家族のこと
https://firstpenguin-sibling.com/
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