京都府健康福祉部、(社福)京都府社会福祉協議会、長岡京市健康福祉部、市民協働部
誰もが安心して過ごせる避難所と要配慮者に対応できる地域づくり~避難所のユニバーサルデザイン化と人材養成~
掲載日:2018年4月26日
ブックレット番号:7 事例番号:69
京都府/平成30年3月現在

 

要配慮者が参加する訓練で地域の意識を高める

長岡京市では、市内10の小学校区域ごとにコミュニティ組織(すべての住民を対象にしたネットワーク組織)ができるようすすめており、全小学校区で住民主体の避難所運営などの訓練を毎年1回実施することをめざしています。主に自治会、自主防災会が主体となり、地域住民、民生児童委員、社協などが参加します。各校区で組織としての班活動、要配慮者支援係の動き、福祉避難コーナーでの目配り、地域の方の見守りなど、具体的な動きを書き込み、独自の避難所運営マニュアルづくりをすすめています。

 

このような実践を意識した訓練は、地域の顔の見える関係づくりをさらにすすめます。

また、日頃からの取組みとして、市民協働部防災・安全推進室長の河北昌和さんは、「常設の災害ボランティアセンターの専従職員が、緑のベストを着て地域に入っていっている。普段からの関係づくりが信頼関係につながり、避難所生活が必要になったときも困りごとやニーズを聞き取りやすくなるだろう」と言います。その他にも長岡京市では、市災害ボランティアセンターと市職員で一緒に出前講座に参加する機会や、福祉事業所に集まってもらい、意見交換会を開催するなど、市民や市内福祉関係者等との平時からのつながりづくりを大切にしています。

平成28年10月、市内特別支援学校で大規模災害に備え、人工呼吸器などの医療機器を使用している在宅医療児の避難や福祉避難所での支援の訓練が行われました。向日市、長岡京市、大山崎町からなる乙訓地域を管轄する保健所と市、学校が主催し、地元自治会や社協、乙訓医師会などが協力し、市内の在宅医療児を搬送し、避難場所での療養や電源確保の方法を学ぶ機会となりました。

 

河北さんは、「訓練をしようとしたときに、要配慮者本人が出て来れずに、健常者の方の模擬体験で終わってしまいがち。個別計画を作成するにあたっても災害時に在宅医療児がどうなってしまうのか知るために訓練が必要だった。当日は、『なるべく通い慣れている支援学校に安心して避難したい』という保護者のニーズや、在宅医療児がどのようなニーズを持っているのかを汲み取れるよい機会になった」とふり返ります。

また、平成29年6月、南浦地区の防災訓練にはじめて要配慮者の方が参加しました。自治会からぜひとお願いして参加してくれた方です。参加した地域住民は、災害ボランティアセンターの職員から車いすの操作方法を学び、斜面のきつい坂を介助して避難所である学校へ避難をしてみました。河北さんは、「住民からは、『坂道での車いすの使い方が分かった』と声があがった一方で、やはり支援することへの責任感の重さやハードルの高さが指摘された。訓練を積み重ねながら、何かひとつでもいい、声かけだけでもいいと支援のハードルを下げられるような呼びかけをしていきたい」と話します。

 

他にも、平成27年には病院が参加した訓練も実施されました。トリアージの後、二次避難所である老人保健施設とやり取りし、移送するという訓練です。また、同年、聴覚障害のある方が実際に参加し、手話通訳者がアナウンスを筆記や手話で情報を伝える訓練を行いました。

京都府から示されている「福祉避難コーナー」の設置も試みることにしました。その時の訓練について、板垣さんは、「『コーナー』という言葉から、素直に避難所の隅に災害時要配慮者の方が過ごすスペースをつくってしまった。そして、参加していただいた災害時要配慮者方だけを、受付で福祉避難コーナーに行くように振り分けた。その方が避難所の隅でポツンと椅子に座っているところを見て、

『失敗した!』と感じた。確かに手話による情報支援は対象者をまとめることが必要だが、災害時要配慮者もできるだけ一般の方と同じシートで過ごしてもらう方がよかった。要配慮者支援は、その方を取り出して特別扱いすることではないと実感するとともに、一般の方と、少しの配慮があれば地域の方と一緒に過ごせる要配慮者が避難所で一緒に過ごすことは、地域の方の配慮の気持ちを育てることにつながると思った」とふり返ります。

モデル事業の実践や、さまざまな訓練を実際にやってみることで、見えてくる気づきがありました。長岡京市では、まず被災後3日間は市民の命を守ることに専念し、その後徐々に要配慮者相談窓口などを活用して避難者の心のケアや、専門的な相談などを受けられるようにする流れを想定し、日頃からの関係づくりや住民への周知を丁寧に、着実に積み重ねながら取組みをすすめています。

 

 

左から、

長岡京市健康福祉部社会福祉課 課長補佐兼地域福祉・労政係係長 板垣美紀さん、

市民協働部防災・安全推進室 防災・危機管理担当総括主査 井手竜太さん、

健康福祉部社会福祉課 地域福祉・労政係総括主査 宮本公平さん、

健康福祉部社会福祉課 地域福祉・労政係主査 藤原泰葉さん)

 

取材先
名称
京都府健康福祉部、(社福)京都府社会福祉協議会、長岡京市健康福祉部、市民協働部
概要
京都府
http://www.pref.kyoto.jp/index.html
(社福)京都府社会福祉協議会
http://www.kyoshakyo.or.jp/
長岡京市
http://www.city.nagaokakyo.lg.jp/
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