立川市社会福祉法人地域貢献活動推進ネットワーク
検討と試行錯誤を積み重ねながらすすめる参加支援の取組み
掲載日:2023年8月22日
2023年8月号 連載

左から
(社福)立川市社会福祉協議会 地域活動推進課 地域づくり係
主任 田口美幸さん
係長 小山泰明さん
主事 池谷宥さん

あらまし

  • 立川市社会福祉法人地域貢献活動推進ネットワーク(以下、ふくしネットたちかわ)は、2015年の発足以降、「災害時の地域活動への支援」をはじめ、地域課題の解決に向けた取組みを推進しています。今回は、20年から検討を行っている「参加支援」の取組みについて、事務局を担う立川市社会福祉協議会にお話を伺いました。

 

立川市社協では、市内6つの生活圏域ごとに2名の地域福祉コーディネーターを配置しています。ふくしネットたちかわでも、その6圏域を活かし、近隣の社会福祉法人が集まり、地域課題の解決に向けたアイディア出しや情報共有を行う「地域懇談会」を開催しています。これまで、この地域懇談会を通して、清掃活動やフードドライブなどの活動も生まれてきました。

 

新型コロナの感染拡大以降、幹事会や全体会などはオンラインにて可能な範囲で続けていましたが、地域懇談会は多くのエリアで中止となりました。コロナ禍の各法人の状況を知ることが難しくなり、地域福祉コーディネーターが担当地区ごとに各法人を訪問し、状況を把握するとともに、改めてふくしネットたちかわの目的や役割などを伝えていました。

 

 

◆検討を積み重ねた参加支援の取組み

参加支援の取組みのきっかけは、19年に、参画法人から寄せられた意見でした。障害者の就労体験から雇用につながった例があり、「社会福祉法人として就労支援の場の提供ができるのではないか」という内容でした。

20年からは、関連するテーマの学習会を開催したり、取組みに関するアイディアをアンケートで募るなど、丁寧に検討をすすめました。重層的支援体制整備事業の動きもあり、参加の対象を、障害のある人から「制度の狭間にある人」としました。21年には、さまざまな分野の法人から選出された4名でワーキンググループをつくり、22年度からの実施に向け、基本的な考え方などを整理しました。幹事会や全体会を通して、取組みへの共通認識を持つことを意識し、参加支援の全体の流れ(図)も共有してきました。

 

参加者は、制度の狭間にいて何らかの支援や参加の場を必要とする人を想定しています。支援者とは、地域福祉コーディネーターや相談支援包括化推進員(※)等の相談業務を担う人などを指します。支援者が活動メニューを紹介し、本人の意向と合えば、施設側との調整を行い、受入れが始まるしくみです。メニューは、施設内での清掃や消毒作業などで、施設が随時、変更や更新ができるようになっています。現在は、6施設から9つの活動メニューが寄せられています。

 

参画法人の一つで、幹事会メンバーの至誠学舎立川法人本部相談役の橋本正明さんは、参加支援の取組みについて「働く場の提供が地域への貢献の大きな柱。対象はさまざまでも、就労体験から一般就労につながっていくと良い」と言います。

 

図:参加支援の流れ(立川市社協の資料をもとに作成)

 

◆検討を続けながらより良いしくみに

活動メニューをもとに実際に参加支援につながったケースはまだありませんが、検討を続ける中で、新たな気づきや発見があります。例えば、相談を受けた相談支援包括化推進員が、活動メニューを紹介しようとしたところ、「気軽に参加できる地域のボランティア活動から始めたい」といった反応をもらったことがあり、段階的な支援や対象者に合わせてカスタマイズすることの必要性が見えてきました。

 

地域福祉コーディネーターの池谷宥さんは「受入れにつなげていくことの難しさはある。しかし、参加者本人の思いを一番に考え、寄り添いながら支援することがやはり大切で、そこへの理解については、幹事会や全体会で各法人の皆さんに丁寧に伝えていきたい」と話します。

 

ほかにも、立川市内の通信制高校では、進路先や就労先が決まらないまま卒業してしまう生徒が一定数いる現状を知り、この参加支援の取組みのニーズがあることも分かりました。現在は、学校の先生にもこの活動があることを知ってもらうために周知を行っています。

 

地域づくり係係長の小山泰明さんは「参加者が安心して活動できるような伴走支援をしていきたい。他団体ともニーズや支援のノウハウを共有し、つなぎ手となる支援者のネットワークづくりも必要」と言います。23年度も引き続き、受入れ先と支援者両方への周知と共通理解の醸成を丁寧にすすめていきます。

 

◆ふくしネットたちかわへの思い

参加支援の取組みの検討と周知をすすめながら、コロナ禍で開催が難しくなっていた地域懇談会も徐々に再開していく予定です。

 

地域づくり係主任で地域福祉コーディネーターの田口美幸さんは「同じ市内でも6圏域の地域の状況はそれぞれ。ネットワーク全体として取り組む参加支援に加えて、地域の特性や状況にあわせた取組みを展開していくためにも、地域懇談会は大事にしたい」と言います。続けて「当初からの理念として法人全体で取り組むことを大切にしているが、それぞれの忙しさもある中で、このネットワークが現場から離れた活動になってしまうことは気を付けたいと思っている。研修会などにも法人内のさまざまな職員に参加いただけるよう工夫していきたい」と、今後への思いを話します。

 

池谷さんは「コロナ禍を経て、つながりを継続することの大切さを強く感じた。法人間でつながり続けられる運営を意識し、何かあった時に相談し合える関係性を構築していければ」と言います。

 

小山さんは「市内の社会福祉法人同士が出会うきっかけになったふくしネットたちかわのつながりを、これからも大切にしていきたい。施設数や職員数などさまざまな規模の社会福祉法人が集まっている。どんな法人でもネットワークに参加できるしくみを考え続けることも必要。社協が事務局を担う意味だと思っている」と話します。

 

分野の異なる市内の社会福祉法人が連携・協働することの意義について、橋本さんは「法人それぞれに歴史がある。しかし、制度で定められた事業の運営だけにとどまらず、福祉実践主体である社会福祉法人としての誇りを持っていきたい」と思いを語ります。

 

希望・家族や仲間・情報・アイディア・資源を表したロゴマーク

取材先
名称
立川市社会福祉法人地域貢献活動推進ネットワーク
概要
立川市社会福祉法人地域貢献活動推進ネットワーク(立川市社会福祉協議会のウェブサイト内)
https://www.tachikawa-shakyo.or.jp/activity_promotion_network/
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