NPO法人クリエイティブライフデザイン
アートワークショップをコミュニティづくりのきっかけに
掲載日:2023年8月31日
2023年8月号 くらし今ひと

NPO法人クリエイティブライフデザイン

代表 林 賢さん

 

あらまし

  • 三鷹・武蔵野地域をベースに、目の不自由な方と楽しむ対話型絵画鑑賞などに取り組んでいるNPO法人クリエイティブライフデザイン代表の林賢さんにお話を伺いました。

 

◆「対話型絵画鑑賞」との出会い

ファーストキャリアではオフィス総合提案企業でオフィス・インテリアデザインやコンサルティングの仕事をしていました。定年後のセカンドキャリアではデザインやアートを生かした活動をやってみたいと思っていて、市民活動の勉強会などに参加していました。

 

ちょうどその頃、2017年のことですが「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を行っていた、全盲の難波創太さんのことを偶然ラジオで知りました。「ぜひ話を聞かせてください」と思い切って連絡をしてみたら、「とりあえず美術館に行きましょう」と。それで何回か一緒に行ってみたら、私は目が見えているのにアートがみえておらず、彼と対話をしながらだと作品がみえてきたという面白い体験があって、「人が喜ぶ活動をやりたい」と価値観を変えてもらうきっかけになりました。そして心が定まり、活動を始めました。

 

対話型絵画鑑賞は、1980年代にニューヨーク現代美術館で始まった教育プログラムで、グループで同じ作品を見ながら感じたことを話し合うものです。私たちは目の不自由な方と見る対話型鑑賞スタイルをソーシャルアートビュー(SAV)と呼んでいます。

 

◆アートワークショップを地域に

SAVでは、目の不自由な方と晴眼者が対話することにより絵画鑑賞をします。またアイマスクをつけて目の不自由な方の感覚を疑似体験しながら作品を見るというアートワークショップもやっています。難波さんにはよくアドバイスをいただいています。実際にやってみると面白いもので、絵を説明するにもうまく言語化できないもどかしさがあったり、説明を聞いてイメージしていた絵と実物のギャップに驚いたり、色々な気づきがあります。

 

こういったワークショップを地域の皆さんがゆるくつながるためのツールにしたいと思っています。今やりたいことは2つあって、1つは三鷹や武蔵野の地域の文化芸術資源や観光資源をアートカードにして、それをベースにしたワークショップをつくること。もう1つは、これらの地域でワークショップの企画ができる人材を養成することです。

 

地域まるごとミュージアムのようなコンセプトで、地域でボランティアの方々と一緒にモノを見て、対話して、ランチでもして帰ろうかとなったら、地域経済の活性化につながるし、やっている人も楽しいかなと思います。取組みを広げていくために、教育関係者や福祉関係者にもアプローチしています。

 

◆企画を考える過程も楽しい

定年後は改めて絵を描きたいと思っていたのですが、「人はなぜアートを創るのか?」「イメージはどのように脳内で創られるのか?」という問いがSAVの裏テーマにもなっていますね。

 

市民活動の勉強会では「できること、好きなこと、やりたいこと(ちょっと良いこと)」が活動の原理原則だと学びました。今の活動にはすべての要素が入っているので充実しています。

 

最近、2歳半の孫と一緒に美術館に行き始めたのですが、子どもでもしっかり作品を見ています。それもきっかけになり、SAVを一つの型として、子どもや軽度の認知症の方など対象者別のワークショップデザインにも興味が出てきました。「その人たちが喜んでくれるのはどんな絵だろうね」と、宝探しをするように仲間と話し合う時間がとても楽しいです。

 

アイマスクをつけて作品を見るワークショップの様子。目の不自由な方と晴眼者が対話することで、お互いの視点を知ることができる

取材先
名称
NPO法人クリエイティブライフデザイン
概要
NPO法人クリエイティブライフデザイン
https://www.npocld.com/
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