日野市内社会福祉法人ネットワーク
歩みを止めず、地域課題と向き合い続ける
掲載日:2023年9月22日
2023年9月号 連載

日野市内社会福祉法人ネットワーク

左から

(社福)日野市社会福祉協議会 総務係 千野裕子さん

(社福)日野市社会福祉協議会 総務係 浜野智之さん

(社福)夢ふうせん      施設長 浅野大輔さん

  (社福)日野市社会福祉協議会 地域福祉係 山田明生さん

 

あらまし

  • 日野市内の社会福祉法人による「日野市内社会福祉法人ネットワーク」は2018年に設立されました。新型コロナ流行の最中も、各法人が感染対策に追われる中、フードパントリーや買い物お助けサービスなど、地域での活動を継続してきました。今回はコロナ禍での活動を中心に、ネットワーク代表の浅野大輔さんと事務局の日野市社会福祉協議会(以下、日野市社協)の皆さんにお話を伺いました。

 

日野市内社会福祉法人ネットワーク(以下、ネットワーク)は、「暮らしの支援」「福祉教育」「情報発信」を3つの柱にこれまで活動をすすめてきました。立ち上げ当初、ネットワークに対する各法人の期待や出発点はそれぞれで、何に取り組んでいくかを悩んだといいます。知的障害者・重度心身障害者施設を運営する「夢ふうせん」の施設長で代表の浅野大輔さんは「以前から分野ごとのつながりはあったが、地域の法人が分野を超えて連携する必要性を感じていた。既存の社協事業に参加することからスタートし、幹事会を中心にまずは走り始めてみた」と振り返ります。

 

日野市社協による「日野市民でつくる防災・減災シンポジウム」等に協力するほか、「職員同士が気軽に話せる場」として地区別情報交換会を19年に開催。同時に、日野市フードパントリー事業への協力(※1)や独自に買い物お助けサービスを始め、ネットワークとして地域課題に向き合ってきました。

 

 

◆1つの事業をきっかけに

「新型コロナの影響でさらに困る人が増えるのなら、私たちが地域に向けて個々にできることは続けなければならないと思った」と浅野さんが話すように、20年の新型コロナ流行時も、集合形式の活動は一部中止としながら、地域に向けた必要な取組みは工夫をしながら続けてきました。

 

フードパントリーもその一つであり、コロナ禍前の月20件程度の利用に対し、生活福祉資金の特例貸付と併せて案内したことで、20~21年度は月平均100件の利用に上りました。ニーズの増加を受けて運営体制を見直し、食材の箱詰めや運搬は日野市社協の役割になりましたが、社協だけでは人手が足りず、コロナ禍で活動が難しかった地域のボランティアや生活困窮者就労準備支援事業利用者等の協力を得ながら継続してきました。

 

こうした動きについて、日野市社協総務係の千野裕子さんは「フードパントリー事業によって生活に困窮している人のニーズに応えるだけでなく、図らずも地域の多様な人の参加につながった。こうした広がりは日野独自なのでは」と実感しています。色々な側面を持った本事業はネットワークにも影響し、同係の浜野智之さんは「幹事会で1つの地域課題を共有することで、どんな取組みが必要なのかを共に考えることができた」と話します。コロナ禍で事業に協力する法人も増え、施設の担当者を集めた情報交換会も開かれました。対応に関する悩みや気づきを共有するなど、地域課題に取り組みながら横のつながりが強くなっていきました。

 

◆動き続けることで、新たな可能性が見えてくる

コロナ禍前から取り組み続けている地域課題に、〝障害者の移動支援の担い手不足〟があります。制度はあるものの、その成り手がいないのでサービスが提供できない現状が市内の居宅介護支援事業所等からも聞かれていました。

 

そこで、ネットワークとして地域の移動支援の担い手、それから将来の日野市の福祉人材養成を視野に、近隣の明星大学にて「移動支援」に関する出張講義を19年から始めています。関係する法人が職員を派遣し、移動支援事業や日々の仕事などを学生に話すもので、コロナ禍による活動制限期間もオンラインで続けました。派遣された職員のスキルアップの場にもなるほか、本取組みから、日野市独自の「日野市移動支援従事者養成研修」が行われ、若者が移動支援サービスの成り手になっています。

 

そうした活動に加え、コロナ禍で新たな取組みも実施されました。日野市社協ではもともと、一般交通機関での移動や歩行が困難な方を対象に、福祉車両で外出時のサポートを行う登録制の移動サービスに取り組んできました(日野ハンディキャブ事業)。本事業をベースに、市からの委託として、身体的な事情からワクチン接種会場へ向かうことが難しい人を対象に、登録の有無を問わず移動サービスを行いました。日野市社協が対応できない土日は協力できる法人が送迎車両を出し、日野ハンディキャブ事業の運転協力者が付添者として協力してくれました。

 

日野市社協地域福祉係の山田明生さんは「日野は山坂が多く、公共交通機関も十分でなかったりする。今回、利用件数は多くなかったが、今後の移動サービスの取組みにつながっていけば」と話します。そのほか、災害時に向けたネットワークの取組みとして、幹事法人内での災害備蓄品の共有や活用のあり方を模索することも新たに始まっています。

 

◆ネットワークとして、地域と共に

コロナ禍でも歩みを止めず、地域にできる活動を続けてきたネットワークですが、幹事会を中心とした取組みにとどまっている現状があります。今年度は開催が難しかった地区別情報交換会の再開も検討しており、千野さんは「どんな法人も気軽に取り組めるようなしかけをしていきたい」と話します。続けて、山田さんは「ネットワークをどう成長させていくかも大切だが、地域課題に向き合うことは忘れずに取り組んでいきたい」と強調します。

 

今年で5年目となるネットワークは、地域と共にその活動を広げてきました。浜野さんは「法人それぞれ地域に対して取り組んでいるが、複数の法人で知恵を出し合うことで新たな取組みができる」と協働する意義をより強く感じています。立ち上げから関わってきた浅野さんは活動を振り返り、「幹事会で気軽に色々と聞き合うことができた。そのメリットをネットワークに共有していきたい。そして、メリットを活かしながら、顕在化してきた地域課題に、社会福祉法人だけでなく、福祉関係者全体として取り組んでいかなければならない」と考えています。

 

(※1)NPO法人フードバンクTAMAが主催。参加法人は地域の“中継地点”として、食料配布だけでなく利用者のニーズを把握し、必要な支援や機関につなげる。コロナ禍では窓口として対応した職員の気づきを機に、大学生向けのパントリーも始まった。

 

フードパントリーには地域の中学生たちも協力している

取材先
名称
日野市内社会福祉法人ネットワーク
概要
日野市内社会福祉法人ネットワーク
https://hinosuke.org/?page_id=384
ネットワークの立ち上げについてはポータルサイトよりお読みいただけます!
http://fukushi-portal.tokyo/archives/427/
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