(社福)宮城県社会福祉協議会 地域福祉部/(社福)福島県社会福祉協議会 地域福祉課
利用者の不安に寄り添って ~日常生活自立支援事業で支える~
掲載日:2017年12月12日
ブックレット番号:1 事例番号:7
宮城県仙台市、福島県福島市/平成24年3月現在

 

震災に関連する新規の契約・解約の状況

このような状況の中で、5月まで、気仙沼・南三陸と石巻の2つの地域福祉サポートセンターでは、新規相談を停止せざるを得ませんでした。実際に、関係機関も日常生活自立支援事業の相談をできるような状況ではなかったようです。6月以降は、県内の全ての地域で通常の相談受付を始めました。

日常生活自立支援事業の利用者数は441件、その内、平成23年度新規契約件数が55件、直接震災と関連する理由による契約は8件です(平成24年2月末現在)。金銭管理をしていた親族が被災して支援できなくなったという理由や、親族が義援金を搾取しているとケアマネジャーから相談が入り契約に至った方もいます。「契約件数が、急激に増加したということはないが、仮設住宅への入居で今後に向けての生活が始っている中で、現在、仮設住宅等を訪問し、巡回相談をしている生活支援相談員等から相談が寄せられてくることが予想される」また、「みなし仮設住宅として一般の住宅に散らばって入居している方には、情報や支援が届いていない。このような方々をどう支援していくかが課題」と、宮城県社協の担当者は話します。

また、平成23年度の解約件数は71件で、震災津波にともなう死亡解約が11件、その他震災関連の理由による解約は11件です(平成24年2月末現在)。震災関連の理由により解約した方は、県外の親族のところへ避難・転居した方や避難所での生活が難しく精神病院に入院した方、施設等へ入所した方等です。

日常生活自立支援事業の利用者の中には、義援金や見舞金などで急に高額のお金が入ったものの、生活の建て直しに向けて計画的に使うことが難しく、すぐにお金を使ってしまう方もいます。また、家の建替え費用の貸付けを、建替えや返済のめどが立たない状況で受けてしまった方、関係者が知らないまま、県外の仮設住宅に移られた方もいます。

このような中で、権利擁護の観点から、これまで以上にきめ細かく関連機関と連携して地域の生活を支えていくことが必要とされています。

 

福島県内の相談支援の状況

福島県の日常生活自立支援事業は、「あんしんサポート」の名称で、県内全59市町村社協に委託しながら実施しています。平成23年度の新規契約件数は81件(平成24年2月末現在)となっており、今までで最も多くなっています。福島県社協地域福祉課の安達弘和さんは、契約件数の増加理由を「混乱の中だったが、平成20年から準備していた全市町村社協による、日常生活自立支援事業の実施を行ったことと、東日本大震災や原子力発電所の事故の影響から、日々の生活に不安を抱える方が多くなり、それに伴い、あんしんサポートや成年後見制度が関わるケースが多くなったことによる」と話します。

福島県社協では震災後、次のような課題を予測し、平成23年11月に県内の市区町村社協に注意を呼びかけました。

①広域避難により家族が離れ離れになるなど、生活環境の変化による判断能力の低下

②義援金や損害賠償金のように、計画的に使わなければいけないお金を受け取ったとき、判断能力が十分でない方の金銭管理や搾取の恐れ

③原発事故で行政機能が移転したり全国各地に避難している状況から、情報が伝わりにくかったり、難解な事務手続きに手助けが必要

実際に、福島県では、仮設住宅を同じ市町村内に作れずコミュニティごと仮設住宅に入居するのが難しかったことから、今まで本人を支援していた家族が離れ離れになったり、家族が避難の疲れから入院する等により、あんしんサポートの契約につながった方がいます。また、他県に避難したことにより解約した件数が多いのも特徴で、平成23年度の解約件数は47件(平成24年2月現在)となっています。

震災後、仮設住宅や借上住宅の見守りやサロン活動を支援する「生活支援相談員」(福島県内の市町村社協に171名配置)と「相談支援専門職チーム」(介護支援専門員協会、社会福祉士会、医療ソーシャルワーカー協会、精神保健福祉士会、理学療法士会、作業療法士会の福島県内6つの職能団体)が連携を図りながら避難者支援をしています。

相談支援専門職チームは、避難所で元気だった高齢者が、誤嚥や低栄養などが起因となり、短時間で要介護状態になってしまう状況を見た福祉専門職が「避難生活においても介護予防の観点は欠かせない」と、各専門職が協力し合ってケアマネジメントや相談支援の体制を図ろうとした取組みで、福島県から委託されています。

また、避難してきた市町村社協の生活支援相談員は、避難先の社会資源を知っていても、具体的に顔の見える関係性でないために、連絡に時間を要する場合もあり、避難先の福祉・医療サービスを熟知した相談支援専門職チームとの連携が不可欠になっています。しかしながら、相談支援専門職チームの人たちは、普段自分の仕事をしているので、毎日の訪問はできません。そこで、仮設住宅等を戸別訪問し、日々の変化をキャッチしやすい生活支援相談員がニーズを発見し、相談支援専門職チームにつなぐといった取組みをしている市町村もあります。ある避難中の社協は、毎週木曜日に活動する相談支援専門職チームと生活支援相談員がデスクを並べて一緒に活動しています。

今後、生活支援相談員が相談支援専門職チームと連携して、仮設住宅や借上住宅で生活する認知症や知的・精神障がい者等のニーズキャッチの視点を持って、あんしんサポートや成年後見制度につないでもらうことで、侵害されやすい避難者の権利を共に譲っていくことが必要とされています。

※日常生活自立支援事業

事業の実施主体は、各都道府県・指定都市社協で、実施にあたっては、市区町村社協等に委託できるとされている。福祉サービス利用援助、日常金銭管理、書類預かりのサービスを基本に支援。コーディネーターの役割を担う専門員と日々の支援を行う生活支援員が連携・協力して支援を行う。

 

 

 

 

取材先
名称
(社福)宮城県社会福祉協議会 地域福祉部/(社福)福島県社会福祉協議会 地域福祉課
概要
(社福)宮城県社会福祉協議会 震災復興・地域福祉部
http://www.miyagi-sfk.net

(社福)福島県社会福祉協議会 地域福祉課
http://www.fukushimakenshakyo.or.jp
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