大島社会福祉協議会
大島土石流災害から10年 ― 大島の地域福祉活動のいま
掲載日:2023年10月6日
2023年10月号 TOPICS

大島社会福祉協議会
事務局長 鈴木祐介さん(右)
主幹 藤田好造さん(左)

 

あらまし

  • 2013年10月16日、台風26号の影響による記録的な豪雨が引き起こした土石流災害は、東京都大島町に死者36名、行方不明者3名、家屋等の物的被害約400件という甚大な被害をもたらしました。発災直後から復興期に至るまで継続して被災者支援活動に取り組んできた大島社会福祉協議会に、当時の取組みや現在の地域福祉活動について伺いました。

 

地域の助け合いが機能した

大島社協が発災2日後に立ち上げた災害ボランティアセンターには、延べ8千人のボランティアが参加し、そのうち3分の1が島内の人でした。センター長を務めた藤田好造さんは「中学校も高校も協力的で、生徒を集めて参加してくれるなど、地域のまとまりがあった。進学して島外へ出た大学生たちもたくさん応援に来てくれた」と話します。事務局長の鈴木祐介さんは「地元の人が多く参加していることが大島の特徴ではないかと、他の地域の人に言われたことが印象に残っている。地域の助け合いがうまく機能していたということだと思う」と振り返ります。

 

当時はいくつかのボランティアグループが生まれ、住民自身による復興に向けた取組みが始まるなど、被災経験は島内でボランタリーな活動が芽生えるきっかけにもなりました。13年当時の経験や意識が定着したことも影響し、19年の台風災害で災害ボラセンを開設した際も、島内の人だけで無事に活動を終えることができました。

 

鈴木さんは、「『お年寄りのために何かやっている団体』と思われていた社協が、災害支援によって、『ネットワークを活かしていろんな活動をする団体』と広く認知されるようになった。地域課題を解決するといっても伝わりにくいが、活動を通じて目に見える形で住民に届けられたことが一つの大きな節目だった」と話します。

 

2013年の災害ボラセンには島内外から延べ8,000人が参加。

地域の力が発揮された

 

「大島食堂」で新たなつながりを

大島社協では、高齢者を対象にしたサロン活動を30年近く続けています。身近な地域で参加できるよう島内を13か所に分け、地域ごとに会食などをしてきましたが、新型コロナの感染拡大以降は中止せざるを得なくなりました。

 

22年11月に感染対策をして再開し、その後も感染状況を注視しながら、お弁当を持ち帰りにしたり、おしゃべりするだけにしたりと、試行錯誤を続けています。それでも参加者や担い手の皆さんはとても楽しそうにしているといいます。

 

また、22年度からは、認定NPО法人全国こども食堂支援センター・むすびえのバックアップにより、子どもから高齢者まで誰でも参加できる「大島食堂」を始めました。島内各地を巡回しながらこれまでに4回開催しており、回を重ねるごとに参加人数が増え、少しずつ認知度が高まっているそうです。鈴木さんは「開催場所近くの保育園や小学校、老人クラブに重点的に声掛けをしている。この間、人が集まることが少なかったので、みんなで楽しめる良い機会になっている」と手応えを語ります。

 

運営の担い手も広く一般に呼びかけており、20代から70代まで幅広い層から協力を得ているといいます。鈴木さんは「福祉活動の担い手の減少や高齢化に危機感があり、これまで社協と関わりがなかった方にアプローチできないかと思っていた。大島食堂も今は社協がプラットフォームになっているが、運営についてはボランティアの主体性を大事にしながら、より活発化していければ」と目標を話します。

 

島内各地を巡回している大島食堂は

子どもから高齢者まで地域の誰もが参加できる

 

大島食堂は会食だけでなく、ボードゲームで

一緒に遊ぶなど多世代交流の場になっている

 

10年が経過して

コロナ禍になる前は、島内の福祉施設と一緒に年に一度「福祉まつり」を開催していましたが、現在は中止しています。福祉施設では依然としてクラスターが発生することがあるほか、ここ数年は人材確保難がさらに深刻化していることもあり、交流を再開する状況にはなっていません。また、現在の島の人口は7千人余りで、この10年で約千人減少しました。社協以外の団体による催し物の参加者も減っており、コロナ禍と人口減が島の雰囲気に大きく影響しているといいます。

 

藤田さんは「高齢化がすすみ、町が主催する土石流災害の追悼式も参加者が減っている。ついこの間のことだと思っていても、被災された方の状況もどんどん変わっており、やっぱり10年経ったんだなと感じる」と、時の流れの速さを実感しています。鈴木さんは「災害時に地域の助け合いの力が発揮された時には、『こんなにできるんだ!』と感動を覚えた。他の課題に対しても関心を持ってもらえるように働きかけたい。いろいろな課題に大島一丸となって取り組んでいきたい」と、住民とともにすすめる地域福祉を見据えています。

 

取材先
名称
大島社会福祉協議会
概要
大島社会福祉協議会
https://www.oshima-shakyo.com/
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