石神井・小さなおうち
(左から) 共同代表 長谷部暢子さん、吉岡未歩さん
石神井・小さなおうちの主な活動
- 東京都練馬区石神井台2-26-26
- 学校へ行かない選択をしている子どもたちの居場所
- 学校のある平日 8時30分~13時30分 週2~週5日
- *このほかの活動や詳細はホームページやInstagramをご覧ください
石神井・小さなおうちは、2023年5月、不登校児のための居場所や老若男女、誰でも来られるみんなの居場所、そして地域交流の場としてオープンしました。練馬区の石神井公園のすぐそばにある元民家の木造一軒家で、家の中は、システムキッチンが備えられた明るい洋室、奥には本棚や押入れのある和室が続きます。ラグが置いてある秘密基地のような浴室も備えられています。
さまざまな事情から学校へ行かない選択をしている子どもたちの登録者数は、現在32人。練馬区のほか、杉並区や板橋区からも登録があり、毎日6~8人が参加し、半数以上が一定の頻度で通っています。子どもたちは、それぞれの部屋で思い思いに過ごすほか、昼食時はボランティアの人の調理の手伝いや、天気の良い日には、庭で思い切り体を動かしたり、畑で農作物の収穫を体験したりしています。夏休みには不登校の子どもたちを中心に「お泊まり会」を実施し、流しそうめんや工作、夜の散歩を楽しみました。
ここで出会い顔見知りになり、次に会う約束をするなど、子どもたち同士のコミュニティが生まれ、閉まる時間になっても帰りたがらないことも多いといいます。定期的に来室している子どもの保護者からは「明日が来ることを嫌がっていた子どもが、翌日を楽しみに眠りにつくようになった」、「自分で考えて行動する機会が増えて、活き活きしている」などの声が聞かれます。
人と人との縁で描いていた夢が実現
小さなおうちの共同代表で、2004年から石神井公園で開催している冒険遊び場「石神井プレーパーク」の代表でもある長谷部暢子さんは「20年間プレーパークで活動をする中で、色々な子育て相談を受けるようになった。共働き世帯が増える中、子どもを自宅に残して出勤することへのためらいから、休みを取ったり仕事を辞めざるを得なかったりする親もいる。子どもが不登校になり悩みを抱えている保護者と、学校生活になじめず、ふさぎ込む子どもたちに『大丈夫だよ、ここにおいで』と、伝えられる場所をつくりたかった。自分たちを支援してくれる人たちと巡り合い、まとまったお金の寄附や、民家を譲り受けたことで、子どもたちの居場所を開設することができた」と言います。
小さなおうち レイアウト図(ホームページより引用)
子どもたちの孤立感を取り除きたい
共同代表の吉岡未歩さんの小学生の2人の子どもたちも小さなおうちに通っています。「長男が1年生になる頃、新型コロナが蔓延し休校になった。緊急事態宣言が明けた6月から登校予定だったが、ほとんど学校に行くことができなくなり、通える場所を探したがコロナ禍でどこも開いていなかった。不登校の子どもたちのための居場所を早くオープンしたいと思っていた」と話します。
1クラスに1人以上は不登校の児童がいるという調査結果(※1)はあるものの「自分だけ登校できていないのでは」と劣等感を抱え、孤立する子どももいます。長谷部さんは「小さなおうちの核にあるのは〝子どもの権利〟。子どもたちの希望を叶えるために、それぞれの意見を聞き、一緒に取り組むことを大事にしたい。子どもも大人も元気と笑顔を取り戻すことを大切にしている」と話します。
畑で芋掘りの仕方を教わる子どもたち
遊びの幅が広がる庭
他機関との連携であらゆる問題に対応
吉岡さんは、学校での不登校児童の教育体制について「子どもの人口が多い地域では、授業でちょっとつまずいてしまうとフォローが行き届かないこともある。教育支援センター(適応指導教室(※2))に通うことで学校への出席日数としてカウントできる場合もあるが、欠席数が不足していたり自宅から遠かったりすると、通えない場合もある」と話します。
小さなおうちは、練馬区社会福祉協議会の大泉ボランティアセンターの支援もあり、区内にある子どもの居場所や学習支援教室などのさまざまな団体と関わっています。情報交換や意見交換など相互に協力して活動をしており、子どもたちに適切な場所を紹介しています。
例えば、石神井公園近くで不登校の居場所として30年以上活動している姉妹団体「なゆたふらっと」とは、互いの運営状況に合わせて子どもたちが行き来できるよう連携しています。さまざまな場所に通うことで子どもたちの選択肢が広がり、学校での出会いにとどまらない友達を地域につくることができるといいます。
長谷部さんは「困った時の相談先となる地域の団体の情報をもっと保護者に周知したい。子どもを持つ保護者が、必要な時に必要な機関に問い合わせられるようになり、問題解決の糸口を見出すことにつながる」と話します。
小さなおうちは、DVなどの多様な相談が増えていて、連携をとっている団体では対応しきれないケースもあるといいます。長谷部さんは「あらゆるニーズに対応できるよう、支援のネットを拡大することで解決方法を模索したいと思っている。セーフティネットとしての機能も持ち合わせた居場所をめざし、子どもたちへ切れ目のないサポートができるように、活動を続けていきたい」と今後を語ります。
(※1)文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」2023年10月
(※2)区市町村教育委員会により設置された小・中学校における不登校児童・生徒の学校復帰等を支援するための学校外の施設
子どもたちは自由にやりたいことができる
https://chisana-ochi.jimdofree.com/