社会福祉法人とらいふ 特別養護老人ホームとらいふ武蔵野
バリアフリーガーデンで広がる地域の輪
掲載日:2023年12月14日
2023年12月号 TOPICS

          右から

                            (社福)とらいふ 理事 大脇秀一さん

                              特別養護老人ホームとらいふ武蔵野 運営企画推進室 河原優子さん

 

 

コロナ禍で多くの課題に直面

デイサービスやショートステイ、保育所を併設する特別養護老人ホームとらいふ武蔵野は、2017年5月に事業を開始しました。開設後は地域住民と積極的に交流を図ってきましたが、新型コロナの感染拡大により、地域との交流や面会を制限せざるを得なくなりました。外出や会話の機会が激減してしまったことで入居者の認知機能の低下やうつの症状が現れるなど、入居者の生活にも影響がありました。それとともに、現場で働く職員にとっても大きな負担が生じ、離職者が相次ぎました。また、家族からのアンケートでも「早く面会をできるようにしてほしい」という声が多く聞かれました。

 

 

きっかけは一つのプランターから

コロナ禍で家族に会えず悲観する入居者を元気づけようと、小さなプランターを購入し、花の栽培を始めました。理事の大脇秀一さんは「普段は笑顔を見せない入居者が花の成長を喜び、少しずつ笑顔を見せてくれるようになった。草花を育てることが良い影響を及ぼしていると実感した。また、特養では20年5月から見取りケアが始まっていて、屋外で家族水入らずの時間を過ごしてほしいという思いがあり、職員が街角で見かけた車椅子のまま利用できる大きなプランターから着想を得て、バリアフリーガーデンをつくることを職員の話し合いで決めた」と話します。

 

オープンの準備は、バリアフリーガーデン着想から相談をしていた「クリーンむさしのを推進する会」を中心にすすめてもらいました。さらに活動を知り、地域住民の人たちが応援に来てくれました。また、園芸用品や設備などに必要な費用は「武蔵野市クラウドファンディング活用促進事業」を活用し、目標の100万円を超える119万円の資金が集まりました。

 

バリアフリーガーデン入口の様子

 

 

保育園の子どもたちや入居者、近隣住民が集まりみんなで種まきを行った

 

世代や立場を超えたゆるやかな交流の場「とらいふぁーむ」

22年9月19日の敬老の日に、バリアフリーガーデン「とらいふぁーむ」は保育所とデイサービスの中間スペースにオープンしました。運営企画推進室の河原優子さんは「新型コロナによって途絶えてしまった交流の機会を再構築することによって、地域福祉に貢献したいという考えから『とらいふぁーむ』の構想が生まれた。加えて、地域で人生を終える段階の人たちの尊厳ある暮らしのために、終の棲家として特養の役割を果たしたかった」と話します。続けて「オープン後は、地域のイベントで『とらいふぁーむ通信』を配布したり、こまめにブログを更新したりすることで、活動を知ってもらえるよう発信し続けた」と言います。

 

ガーデンでは、職員やクリーンむさしのが協力して花や野菜の手入れを行っています。収穫した野菜は入居者をはじめ、職員や地域住民などとらいふぁーむに関わる人々みんなで楽しんでいます。そのほかにも、地域住民が保育園の子どもたちと特養入居者のためにマジックショーを行うなど、地域住民の交流の場になっています。

 

デイサービスの利用者は、花の写生や押し花のオリジナルうちわづくり、ハーブを乾燥させたポプリづくり、植物を見ながら俳句を詠むなど、ガーデンでの活動を楽しんでいます。

 

 

芋ほりイベントの様子。入居者全員が芋ほりを体験し、採れたての芋のおやつを味わった

 

片麻痺の入居者も上手に野菜を収穫

 

 

入居者の役割創出の機会につながったビールづくり

23年3月、ホップの栽培やビール醸造を行う株式会社スイベルアンドノットの協力の下、クラウドファンディングで得た資金で「とらいふビールを作ろうプロジェクト」を開始。職員と入居者が協力し、ホップの苗植えから水やり、実の収穫までを行い、半年後に300本のオリジナルビールが完成しました。

 

大脇さんは「特養の入居者は、目標を持ってこの活動に取り組み、それを実現することができた。達成感を味わうことで入居者の自律心を高めることにつながった。ビールづくりの活動に関心を持った地域住民がガーデンを訪れるきっかけになったほか、特養やデイサービスへの利用を考えている方の見学が増え、新規利用にもつながった」と話します。

 

ビールづくりに向けてホップの実を収穫

 

 

コンセプトを共有できる仲間を増やし活動を広めたい

とらいふぁーむ開始から1年が経ち、面会の場をガーデンにつくったことや、普段の居住空間を離れてリフレッシュできるようになったことで、入居者や家族、そして職員の満足度向上につながりました。

 

大脇さんは、とらいふぁーむで得られた効果として「野菜マルシェや芋ほり、交流イベントを行うことでとらいふぁーむの活動が浸透しつつある。園芸を通して職員と入居者の距離がより近くなり、さらに地域との垣根をなくしていく機会にもなっている。また、職員の満足度アップや離職防止、新しい職員の獲得、なによりも、利用者にとって生きがいや心身の活性化につながっている。今後『地域との関わり』というコンセプトが市内の他の特養にも広がり、共有できる仲間を増やすことで武蔵野市の介護を特徴づけられればと思っている」と話します。

 

河原さんは今後について「利用者の中には、とらいふビールのプロジェクトを『来年もやるぞー』と意気込んでいる方や、草花・野菜の成長を楽しむ方、ガーデニングの先生になってくれる方もいる。また、介護度が重い方も主体的に活動に参加しようとしてくれている。これからも、人とつながることや人の役に立つことを積極的に行い「社会性」を育むことを大切にした施設でありたい」と思いを語ります。

 

   とらいふビールと、クラウドファンディングの返礼品として

紙とトウモロコシを主原料としてつくったタンブラー

 

取材先
名称
社会福祉法人とらいふ 特別養護老人ホームとらいふ武蔵野
概要
社会福祉法人とらいふ 特別養護老人ホームとらいふ武蔵野
https://toraifu.com/musashino
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