左から
(社福)杉並区社会福祉協議会 経営管理課連携推進係 長峰由美さん
(社福)杉樹会 法人本部長常務理事 中田あかねさん
(社福)杉並区社会福祉協議会 経営管理課長 疋田恵子さん
あらまし
- 杉並区社会福祉法人地域公益活動連絡会(すぎなみ社福連)は、区内の社会福祉法人同士が連携・協働し、地域公益活動に取り組んでいます。コロナ禍での活動の様子や、会員法人同士のつながりを丁寧にすすめていくことの大切さについてお話いただきました。
コロナ禍でも活動を続けることを意識して
すぎなみ社福連は、2015年の発足後、杉並区を3つに分け、そのブロックごとに活動をしてきました。新型コロナが流行する直前の19年に、杉並区全体で、一つの連絡会として動くことになりました。各法人だけでは取り組めない、もしくはさらに広げていきたい地域公益活動を、横のつながりを使ってすすめていくことを大切にしています。
すぎなみ社福連の最初の取組みとして、「すぎなみ地域活動お役立ちガイド」を作成しました。会員施設の概要紹介と地域住民向けイベントの開催や施設・物品の貸し出しなどの情報が掲載されています。20年には、随時更新された情報に住民がアクセスしやすくなるように、ホームページをつくりました。
会員施設同士はメーリングリストでつながっており、コロナ禍でも、何かあった時にはお互い呼びかけあうことのできる体制がとれていました。「歩みを止めない」ことを意識し、幹事会だけでもオンラインなどで活動を続けていました。
22年6月に、施設職員だけでなく、広く地域住民にも防災の取組みなどを知ってもらえるよう、「保育・障害・介護に向き合いながら災害を乗り越えるために」と題したパネルディスカッションを行い、動画配信しました。3分野の施設の代表者が登壇し、各施設が日ごろから取り組んでいる災害対策を伝えるとともに、一人ひとりが自ら防災について考える内容です。いざという時には福祉施設も地域住民に助けてもらうことがあることや、地域全体で助け合うことの大切さにも触れています。さらに、災害を自分事として考えられる「私たちの防災アクションシート」というワークシートも作成し、公開しています。
同年11月には、杉並区や企業、さまざまな団体が協働して主催し、地域住民の交流やつながりづくりを目的にしたイベントに、杉並区社協と一緒に参加しました。複数の会員法人職員が案内チラシ配布と、寄附やボランティア活動に関するアンケート協力を呼びかけました。すぎなみ社福連の幹事長を務める中田あかねさんは、「コロナ禍を理由に何もしないわけにもいかない。機会を捉えて少しでも動くことを大切にしていた」と振り返ります。
災害パネルディスカッション~保育・障害・介護に向き合いながら災害を乗り越えるために~
顔の見える横のつながりを大切にする
23年5月には、会員施設職員が集まり、「広報活動」をテーマにした勉強会とグループワークを行いました。参加者からは「勉強会の内容も参考になったが、交流する機会があって良かった」と好評でした。同年8月に行った活動報告を兼ねた全体会でも、グループワークの時間をとりました。お互いの状況を伝え合ったり、会話をしながら活動のアイディアを出し合ったりと、つながりが生まれる機会になっています。
中田さんは「顔を合わせて情報交換をすることで、自分が知らなかった地域の困りごとに気づくことができ、分野にとらわれずに地域に関わる意識が芽生えていくと思う」と話します。杉並区社協の長峰由美さんも「対面での活動も増えている中で、各法人の悩みやノウハウが共有できていて、つながりの大切さを改めて実感している」と言います。
地域の中に〝当たり前に〟存在する社会福祉法人
ホームページなどでの情報発信は継続して行い、地域住民に活動を知ってもらうことも大事にしています。杉並区社協の疋田恵子さんは「ホームページを見た地域の方からの問い合わせも増えている。つくり上げたものを活かし、継続することで、私たちの活動が地域に浸透していくと考えている」と言います。
また、イベントで配布したアンケート回答や日々の情報共有の中で、「使わなくなった子どものランドセルを寄附したいが、どうしたら良いのか分からない」などの具体的なニーズもあがっています。こうした声に、すぎなみ社福連としてどのように取り組んでいくか検討を重ねながら、「杉並らしい」地域公益活動の展開もめざしていきます。
地域住民にすぎなみ社福連の存在や社会福祉法人を知ってもらうことで、同じ地域の中で助け・助けられる関係性が成り立ち、それが一種の地域公益活動になると中田さんは考えています。「社会福祉法人が地域の中に当たり前にあり、必要な時に相談に来てもらったり、頼っていただけるようになって初めて、地域公益活動が〝ふつうに〟できる。社会福祉法人が地域の中の一住民であると思っていただけるよう、私たちも意識しないといけない」と強調します。
事務局は、会員法人が参加できる機会をつくり、一緒に作業をすることを大切にしています。疋田さんは「イベントで配布したアンケートの集計作業に協力してくれる施設や、寄附してくださった方にお礼として渡せるノベルティを持っている施設があるかなど、メーリングリストで声をかけるようにしていて、皆さんすぐに反応してくださる。歩みは遅くなってしまうかもしれないが、このような過程を惜しまず、情報共有をしながら〝みんな〟ですすめていきたい」と言います。
社会福祉法人けいわ会の理事長で、すぎなみ社福連の会長を務める澤津弘さんは「地域公益活動を行うにあたって、杉並区社協のサポートにより、つながる機会をつくっていただいた。富士登山に例えるならまだ1合目を超えたところかもしれないが、現状維持にとどまることなく、今後も地域の方々に喜ばれる『すぎなみ社福連』になれれば」と、思いを話します。ネットワークでつながり、社会福祉法人がさらに地域に根ざしていけるよう、すぎなみ社福連は今後も活動を続けていきます。
23年5月号よりお届けしてきた本テーマの連載は今号で終了します。今後も、地域公益推進協のサイトなどで、地域課題の解決をめざした各地域のさまざまな取組みを発信していきます。
https://sugifukuren.com/
「災害パネルディスカッション~保育・障害・介護に向き合いながら災害を乗り越えるために~」動画
https://sugifukuren.com/movie/