社会福祉法人 恩賜財団 東京都同胞援護会
いこいの家 支援員 樽谷 志穂さん
あらまし
- 婦人保護施設いこいの家で、支援員として働いて4年目になる樽谷志穂さんに、働く上で大切にしていることや福祉従事者に向けて伝えたいことを伺いました。
保育園の先生の影響で福祉の道に
社会人になってすぐは、IT企業など、福祉と関係のない業界で働いていました。福祉に興味を持ったのは、結婚後、子どもが通っていた保育園の先生方がとても親切にしてくれたのがきっかけでした。箸の持ち方からトイレトレーニングまで、全力で子育てをサポートしてくれる姿を見て、自分も保育の勉強をしようと決意しました。職業訓練校に2年通い、保育士資格を取得した後、職業訓練校の先生と、今勤めている法人の母子生活支援施設の施設長(現いこいの家施設長)が知り合いだった縁で、入職することになりました。それから10年経ち、いこいの家に異動して4年目になります。
一人ひとりに合わせ、利用者の〝自立〟を支える
いこいの家では、24時間体制で、生活に困難な問題を抱える女性の支援をしています。就労や金銭管理をサポートしたり、人間関係などで悩んでいる方の相談を受けたりすることもあります。健康・食事についての支援では、看護師・栄養士と連携しています。
利用者と接する中でまず悩むのは、初対面からの距離の縮め方です。どうしたら心を開いてもらえるかは一人ひとり全く違うので、新しく入所された方を担当するたびに試行錯誤を重ねています。
日々感じるのは、〝自立〟のハードルの高さです。利用者にとって、1人で暮らしていくことはさまざまな困難があると思います。〝自立〟と言うと、誰にも頼らずに何でもできるイメージがありますが、そうではなく、地域の資源を使い、さまざまな人とつながり、生活していて困ることがなるべく少なくなれば良いなと思いながら支援にあたっています。
福祉の仕事に就いて変わったこと
1人でできる仕事ではないので、他の職員との関わりも大切です。利用者と接する際もそうですが、何かを伝える時は、まず自分が根拠をしっかり理解し、相手に合わせた伝え方をシミュレーションしてから話すようにしています。私は何事も、すぐ「なんで?」と聞いてしまうのですが、逆に質問することが苦手な人もいると思います。相手が聞きやすい空気をつくるのも大切ですが、質問が必要ないくらいしっかり話が伝わるよう、工夫して話すようになりました。これは、福祉の仕事に就いてさまざまな利用者や職員と出会い、「自分が発した言葉を、どう受け取るかは人によって変わる」ということを実感したからだと思います。
福祉施設で人と関わる中で、自分が変わったことは他にもあります。私は支援において「○○をして良かった」と思うことがあまりなく、「もっとこうしなきゃ」と常に考える性格で、自分ではそれがネガティブ思考で短所だと思っていました。しかし、先輩職員は向上心があると受け取ってくれて、私の長所だと言ってくれました。それ以来、私自身も現状に満足しないことをプラスに捉えるようになりました。自分の向上心も大事にしつつ、「これじゃだめだ」と思った時は、その時のベターを選ぶようにしています。
経験を積むほど見える景色は変わる
福祉の仕事をされている、特に若手職員の方に伝えたいのは、「1~2年目で判断しないでほしい」ということです。仕事の面白さや向き不向きは、経験を積むほど見え方が変わっていきます。他の業界に比べ、こんなに経験年数の違いで見える景色が変わるのは、福祉ならではだと感じています。後輩職員には、よく、今経験していることや学んでいることをカードに例えて「〝ポケット〟にどんどん入れていってほしい」と伝えています。私も、自分の経験が役に立ち、持っているカードが出せた時、点と点がつながるようで嬉しく感じます。すぐには分からなくても、いつかそのカードを〝ポケット〟から出して、支援に活かせる日が来ることを知ってほしいと思っています。
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