(2)豊島区民社協の体制と各事業について
豊島区民社協は、令和5年度にそれまでの4課体制から「総務課」「地域福祉課」「共生社会課」の3課体制になりました。「共生社会課」では、コミュニティソーシャルワーク事業をはじめ、生活困窮者自立支援事業、生活支援体制整備事業、ボランティアセンター、住民参加の助け合い活動など、地域づくりにかかわる多くの事業を実施しています。これまで、コミュニティソーシャルワーク事業とは別の課であったボランティアセンターと住民参加の助け合い活動が同じ課になったことで連携がしやすくなり、コミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)の取組みへのアイデアも出るようになりました。また、生活支援体制整備事業をボランティアセンターと同じ共生社会推進担当に置いたことで、生活支援コーディネーターの取組みの幅が広がっていると感じています。
①コミュニティソーシャルワーク事業と区民ひろば
豊島区は、都内でも早くにCSWの配置が進んだ地域です。地域保健福祉計画にも明記されたことで、区もコミュニティソーシャルワーク事業に力を入れて取り組むことになり、豊島区民社協で平成21年度から2年間、高齢者総合相談センター(地域包括支援センター)8圏域のうちの1つの圏域で「コミュニティソーシャルワークモデル事業」を実施しました。平成23年度に本格実施となった後は、毎年CSWを増員し、平成27年度に全8圏域に配置されました。CSWがチームで動くことで、地域との関係性をCSWの役割として築けるように、モデル事業のときから1圏域に2名という複数体制でCSWを配置しています。CSWの複数配置は、職員育成の面からも大事な点だと感じています。現在CSWは16名体制で配置しています。
平成24年度から、CSWは各圏域の地域コミュニティの拠点である「区民ひろば」に常駐するようになりました。区民ひろばでは、世代間の交流や高齢者の健康活動支援、子育て支援、サークル支援、さまざまなイベント等を行っています。モデル事業実施時は社協の事務所から区民ひろばに出向いていく形を取っていましたが、なかなかCSWを認識してもらえず、相談会を開いてもわざわざ「相談会があるから」と足を運んで来る人はあまりいませんでした。困ってから相談に行くというのはハードルが高いですが、住民が自然に集まるところにCSWがいると、窓口に行かなくてもお茶を飲みながら話している内容が相談につながっていきます。CSWが区民ひろばに常駐していることには大きなメリットを感じると言います。当初は区民ひろばに直行直帰していましたが、情報共有に課題があり、毎朝全CSWが集まってミーティングをしてから、各区民ひろばに向かうスタイルとなりました。ミーティングには、CSWのほかに生活支援コーディネーター、ボランティアセンターの職員、自立相談支援担当の職員が参加します。また、日頃から同じ圏域の2名の間で担当圏域ピアスーパービジョンを行うようにしています。週1回は2圏域4名のCSWによるユニット会議を開き、ケースの進捗状況を共有するとともに、月1回は全ケースのチェックも行います。ユニットには必ずベテラン職員1名がリーダーとして入るようにしています。共生社会課全体の取組みとしては、月1回、事例検討会議やCSWで組んでいるプロジェクトの共有、意見交換等を行う運営会議を行います。年2回は、スーパーバイザー(大学の先生)による困難事例や事業課題等へのスーパーバイズを実施しています。
CSWの8圏域は地域包括支援センター圏域と同じですが、民生児童委員の圏域(6圏域)や町会(12圏域)とは一致していません。また、区民ひろばは全小学校区にあり、CSWの圏域ごとに数は違います。5か所の区民ひろばがある圏域もあれば、1か所しかない圏域もあります。CSWは拠点になっていない区民ひろばにも出向き、顔を見せ、「暮らしの何でも相談会」を開いたりしています。
②地区担当制と区民ミーティング
コミュニティソーシャルワーク事業の本格実施と並行して、豊島区民社協では、部署を問わない全正規職員による地区担当制も取るようになりました。社協職員は全員がCSWだという意識を持ってほしいと考えたからだと言います。1地区につき、CSW2名と地区担当職員3名程度の計5名程度の体制になっています。地区担当職員はできるだけ変えないようにしており、広報紙(トモニーつうしん)で担当職員の紹介もしています。区民ミーティングは地区担当が実施する事業で、コロナ前は8圏域4回ずつの計32回開催していました。地区担当職員は地域の行事にも参加するなどして、日頃から地域とのつながりをつくっています。
③生活支援体制整備事業
豊島区の生活支援体制整備事業は、平成27年度から第1層生活支援コーディネーターを社協に配置し、第2層生活支援コーディネーターの機能は社協のCSWが担う体制で実施してきました。その後、第2層生活支援コーディネーターを圏域ごとに配置することになり、令和3年度に8圏域のうち4圏域、令和5年度に全8圏域に配置されました。豊島区の方針として、第2層生活支援コーディネーターは地域包括支援センターではなく、福祉事業を実施しているさまざまな団体に配置することになり、2圏域については社協への配置となっています。社協内では2層圏域にすでにCSWが2名ずつ配置されていることや、第2層生活支援コーディネーターが社協内にいる圏域といない圏域があることなどから、第1層生活支援コーディネーターの動きやCSWとの関係性が複雑になり、今後の2層圏域のコーディネーターについては、何らかの整理をしていく必要があると感じています。但し、生活支援コーディネーターはCSWと別の担当に配置されているものの、同じ社協内であると連携はしやすく、また、ボランティアセンターと連携した取組みを進められることにはメリットもあると言います。
④生活困窮者自立相談支援事業(くらし・しごと相談支援センター)
豊島区民社協は生活困窮者自立相談支援事業を受託し、区役所内の「くらし・しごと相談支援センター」で、自立相談支援事業、住居確保給付金、家計相談支援事業、子どもの学習・生活支援事業を実施しています。モデル事業のときは、コミュニティソーシャルワーク事業担当と場所を同じくしていましたが、本格実施時に区役所の本庁舎に移りました。ちょうど区役所の新庁舎が完成したタイミングで、ワンフロアを福祉総合フロアにすることになり、「くらし・しごと相談支援センター」もその一画を構成することになりました。CSWが各圏域の区民ひろばに常駐していることから、以前よりそれぞれが離れていても連携できる体制をつくってきたため、コミュニティソーシャルワーク事業担当と場所が離れていることのやりにくさはないと言います。むしろ、生活困窮者支援の窓口に自ら相談に訪れる人は少ないので、区役所内に窓口があることで、庁内のほかの部署から相談がつながることが多いというメリットがあると感じています。
生活困窮者自立相談支援事業が始まった時点で、豊島区民社協ではすでにCSWの取組みが展開されており、本事業を社協が受託することで、窓口で受けた生活困窮の相談を地域につないでいくことができると考えました。CSWと自立相談支援担当職員は、同じことに取り組んでいるという意識で事業を実施しています。本来であれば、自立相談支援担当の職員自身がアウトリーチできるといいのですが、現実には体制的に難しいため、アウトリーチをしているCSWと連携して相談に対応しています。
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