社会福祉法人東京都共同募金会 理事 加納高仁さん
時代の変化を敏感に察知し、社会のニーズに応えていく
掲載日:2024年1月18日
2024年1月号 福祉職が語る

 

社会福祉法人東京都共同募金会 理事 加納高仁(Takahito Kanou)

大正大学文学部社会学科を卒業後、社会福祉施設職員等を経て、1978年に社会福祉法人東京都共同募金会に入職。1995年~2005年まで、都内の複数の専門学校・大学で非常勤講師として「地域福祉論」等を担当。2007年に事務局長、2016年から2023年6月まで常務理事・事務局長を兼任。現在、東京都共同募金会理事、同配分委員のほか、社会福祉法人シルバーウィング理事を務める。

 

◆寄付者の意志を社会につなげる

「共同募金」は、一般市民である寄付者と福祉実践者として資金を活用する者(受配者)の橋渡しを目的とする事業です。寄付を募る方法や配る範囲等は社会福祉法で定められています。

 

一般的な福祉の仕事で対象にするのは福祉的な支援を必要としている方ですが、共同募金の「寄付を集める」という仕事においては、一義的に対象にするのは一般市民です。ここが他の福祉の仕事と最も違う点です。

 

寄付の呼びかけをしていると、共同募金の意義を理解してくださる市民もいれば、集め方等を理由に拒否される方、あるいは社会福祉なんて対岸の火事だという感じでまったく興味を示されない方もいます。このような状況で私が最も大切にしてきたのは、寄付者の意志と、寄付を受ける側である社会福祉団体にとっての有効性が一致する配分を行うことです。千円の寄付がその金額以上の価値となって活かされること、それは双方にとって最も重要な視点だろうと思います。

 

◆アカウンタビリティと情報リテラシーの重要性

昔、こんなことがありました。日雇いのアルバイトをしている青年が事務所に現れ、「たいした額ではないけれど、路上生活をしている人に定期的に寄付をしたい」と熱っぽく語り、なにがしかのお金を置いていかれました。その後も不定期ではありましたが、1年ほど振込が続いたのです。

 

ある程度金額が貯まった段階で、路上生活者支援を行ういくつかの団体の中から本人に配分先を選んでもらいました。いわゆる「目に見える配分」です。寄付者ご本人の意志に沿った配分はとても喜んでもらえました。

 

共同募金にはアカウンタビリティ(説明責任)が強く求められています。このエピソードに表れているようなお気持ちを大切にする責任が共同募金にはあります。すべての寄付に対して、直接的に目に見える形で対応できるわけではありませんが、思いを形にして役立てるしかけができると良いと思います。

 

もちろん、寄付がどのように活かされたかだけでなく、私たちはこういう福祉社会をつくりたいんだということを世間にしっかり伝えることも重要です。

 

また、情報リテラシーも大切です。社会の変化によって社会福祉が対象とする方々の課題が変化すれば、当然それに対応する社会福祉活動も変化するので、時代の変遷には敏感でなくてはなりません。寄付者の意志も時代の風潮や思潮に左右されるものです。こうした受配者の状況と寄付者の声を十分に聞きながら、福祉社会の実現にとって何が本当に有効な助成になるのか。これらを判断できるバランス感覚も意識してきました。

 

アカウンタビリティや情報リテラシーの重要性。これが、長い間、共同募金に携わってきて気づいた大きな点です。

 

◆社会の声に耳を傾け、ニーズに応えていく

私は大学では社会福祉ではなく社会学を専攻し、ライト・ミルズ等のアメリカの社会学者の著作に大きな影響を受けました。大学での学びから得た知識が、特に東京の共同募金を実施するにあたって、社会や時代の声を理解することの基礎になりました。また、福祉業界特有の考え方から物事を判断していないか、一般市民の視点や判断こそ大事なのではないかと感じて、そのようなスタンスで仕事に携わってきました。

 

私が福祉職として関わりを持ち始めた約半世紀前と比べて、現在の日本は社会経済の情勢も福祉関係法令の整備も格段に豊かになりました。同時に、時代が要求する福祉課題はますます多岐にわたり、複雑化し、増大化していると感じます。

 

人が暮らしていく限り、社会がどのように変わっていっても、福祉関係者の存在は社会にとって欠かせないものです。次世代を担う皆様には、時代のニーズを敏感に察知して、活動されていくことを期待しています。

 

取材先
名称
社会福祉法人東京都共同募金会 理事 加納高仁さん
概要
社会福祉法人東京都共同募金会
https://www.tokyo-akaihane.or.jp/
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