(社福)いいたて福祉会
全村避難の中、事業継続の決断をした特養は~この場所にとどまることで利用者の命と笑顔を守りたい~
掲載日:2018年6月1日
ブックレット番号:7 事例番号:72
福島県/平成30年3月現在

原発事故による高齢者福祉施設の安全確保の実際は

いいたてホームの職員は「介護の質を・普段の生活を変えない」ことで団結し、介護、看護、厨房、その他職員もふくめて一丸となって利用者を支えてきました。避難解除後も、その気持ちに変わりはありません。そして「避難しない」という選択をしたことで、ホームの利用者は変わらない生活を送ることができました。

 

福島県では、2,000名を超える災害関連死があり、現在も増え続けています。この数字は直接死の1,604名を上回る数字です。そして、全国的に見ても福島県に集中しています。それは主に原発事故により長期の避難生活を強いられている住民が多く、避難先でうつ病になったり、病状が悪化するなどして亡くなっているケースが多いことが考えられます。

 

三瓶さんは、「ここに残る選択をしたからこそ、ホームの利用者の中に震災関連死をした方はいなかった。利用者の中で1名、家族と一緒に避難した方がいたが、避難生活の中で今までできていた車いすでの自走ができなくなるなど、状態が悪化してまたホームに戻ってきている。過酷な避難生活が高齢者にとってどれほど影響があることか、きちんと考えていかなければいけない」と指摘します。

 

とどまることを決意したいいたてホームがある一方で、県内の高齢者福祉施設等で避難指示を受けた施設では、利用者や職員が非常につらい状況に置かれていました。

例えば、介護設備のないバスでの避難を余儀なくされ、普段寝たきりの利用者をバスの座席にくくりつけて避難させなければならなかったり、道路で大渋滞が発生し、長時間の移動により利用者の体に過度の負担がかかりました。また、やっと移動しても、特養の利用者が安心して避難できるような避難先はありませんでした。

 

三瓶さんは、「避難所で提供される食事は、ふやかして柔らかくしなければ食べられない人もいる。また、環境の変化で落ち着きを失ってしまった利用者が他の避難者からクレームを受けるなど、一つの避難所に長くいられなかった。そしてまた過酷な移動を繰り返すことになり、悪循環が発生していた」と話します。

 

これについて三瓶さんは、内閣府が定めた「福祉避難所の対象者」に特養や老人短期入所施設等の入所対象者は含まないことになっていたからだと指摘します。当時の状況をふまえて、平成27年からはじまり三瓶さんも委員を務める内閣府の「福祉避難所ワーキンググループ」では、1年がかりでガイドラインの改正を行いました。

 

  ※赤の囲み部分が追加された

「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」平成28年4月 内閣府(防災担当)

 

 

 

取材先
名称
(社福)いいたて福祉会
概要
(社福)いいたて福祉会
http://www.iitate-home.jp/
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