福島県福島市/ 平成30年3月現在
福島県では、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故から6年半にわたる歳月を経て、長きにわたる避難指示の解除を迎える区域が少しずつ増えてきています。避難を強いられた原発から20km圏内には、震災前には6つの特別養護老人ホーム(以下、「特養」)がありました。現在、元の所在地で再開した施設もあれば、再開を果たせない施設もあります。避難からの長い日々をそれぞれの特養は、まずは利用者とともに過酷な避難を経験するとともに、利用者を他の施設へ託すことをはじめ、避難先では、仮設住宅のサポートセンターを運営するなどの役割を果たしてきました。また、再開をめざすにも再開に必要となる職員をつなぎとめなければならないという困難にも直面しました。そして、元の所在地に帰らず、新しい土地での再開をめざした施設もありました。
さらに、県内では介護人材確保が極めて厳しい現状も続いています。こうした中、福島県社協の老人福祉施設協議会は、個々の施設だけでは立ち行かない、事業所再開や人材確保などの課題をそれぞれの施設と一緒に考える「経営支援」に取組んできました。
所在地を離れ、利用者を手離した特養は今…
東日本大震災では、福島県内では南相馬市の「ヨッシーランド」、いわき市の「シーサイドパインビレッジ」の2つの老人保健施設が津波によって激しく損壊する被害を受けましたが、県内の特養では、その被害はありませんでした。しかしながら、原発事故直後に避難指示が出された原発から20㎞圏内にあった6つの特養は、施設ごと避難せざるを得ませんでした。6つの特養の震災前の利用者定員は、合わせると492名となっています。
6年半の月日を経てその半数の3つの特養が「事業再開」を果たしましたが、元の所在地で再開したのが楢葉町の「リリー園」、避難先に新たな仮設特養を建設して再開したのが浪江町の「オンフール双葉」と双葉町の「せんだん」です。一方、未だ所在していた地の避難指示が解除されていない大熊町の「サンライト大熊」、富岡町の「舘山荘」は、避難先でも再開できておらず、南相馬市の「梅の香」は避難指示が解除されたにもかかわらず、再開できていません(平成30年4月1日再開予定)。それぞれの現状は、次の表のようになっています。所在地を離れ、命を守るために利用者を他の施設へと引き継ぎ、職員も全員が避難者であった特養の厳しい現状がそこにうかがえます。
表 避難を経験した特養(20㎞圏内)の現状(平成29年12月現在)
上記に加え、避難指示解除地域では、老施協の会員施設であるデイサービスもありました。南相馬市内は通常の運営となっています。浪江町では、避難指示解除となった地域でサポートセンターをNPO法人Jinが運営しています。双葉町では、社協のデイーサービスが休止しています。大熊町では、避難先の会津若松市で仮設住宅内のサポートセンターとして運営され、富岡町でも、大玉村と三春町でサポートセンターが運営されています。楢葉町では、避難指示が解除された地域のサポートセンターを社協が運営。川内村では、社協のデイサービスが再開、葛尾村では社協がサポートセンターを運営しています。飯舘村では、特養「いいたてホーム」が計画的避難指示区域となった後も村内にとどまりましたが、避難指示解除を迎えた今、デイサービスは再開できていません。
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