特別養護老人ホーム 第2ハトホーム 生活相談員 鈴木 野生さん
※肩書は取材当時のもの。2024年4月1日より副施設長
あらまし
- この連載では、福祉施設がさまざまな工夫や試行錯誤をしながら取り組んでいる広報活動を取材します。今号では、法人全体の広報について検討する広報委員会を立ち上げた村山苑の取組みをお伝えします。2023年度から若手メンバーが中心となって法人の魅力を改めて振り返りながら、発信に向けた準備をすすめています。
若手メンバーによる広報委員会を設置
村山苑は、東村山市を中心に、生活保護・生活困窮、高齢、保育、障害などの各種事業を行っている法人です。広報活動については事業所ごとに広報紙やウェブサイトによる情報発信を行ってきましたが、今回はそれらとは別に、法人内の部門を超えた広報委員会を設置しました。
集まったのは、前述の4部門と法人本部の一般職員たちと担当施設長を加えた6名。おおよそ在職10年未満で30代の職員を中心に兼務しています。2023年5月の第1回委員会では、村山苑および社会福祉法人の魅力を発信しブランド力をつけ、働く人や利用者の確保のほか地域貢献につなげていくこと、そして福祉や村山苑の当たり前にとらわれないで、新しい発想で取り組むことという法人の方針が示されました。そのため、担当施設長はサポートに徹し、委員が主体となって進めていくこととを確認するとともに、当面のテーマを人材確保にすることを決めました。
特別養護老人ホーム第2ハトホームの生活相談員で委員長の鈴木野生(やお)さんは「現場でも人手不足を感じる中、新卒も中途もなかなか採用できないので広報の必要性を感じていました。自分が広報委員となってアクションを起こすことで、職員を増やすお手伝いができたらと手を挙げました」と振り返ります。「せっかく機会をもらったので、これまでと同じやり方ではなく、新しいメンバーが違った視点から考えて、自分たちにできることをやっていこうと話し合いました」と言います。
人材確保をテーマに検討を開始
取組み方策として、広報紙やウェブサイトのリニューアル、イベント等外部へのアウトリーチなどが挙がりましたが、学生や求職者への訴求力を考慮してコンサルタントを入れたSNS動画の強化に取り組むこととしました。
2023年9月には内部向け広報としてメンバーの自己紹介を兼ねた「広報委員会だより」を発行。在職中の職員が村山苑に就職しようと思った決め手を探るため、QRコードから簡単に回答できるアンケートを掲載し、法人を知ったきっかけや、村山苑にしかない魅力、強みや弱みのほか、動画作成協力の可否についても聞きました。
アンケート結果について鈴木さんは、「『入る前には分からなかったけれど、実際に働いてみると結構良いよね』といった回答が印象的でした。フォローし合える職場の雰囲気や福利厚生、休暇の取りやすさなどの『働きやすさ』や、長く働ける職場であることをいかに学生や求職者に伝えていくかが重要だと感じています」と話します。
11月から2024年2月にかけては、委員会をそれまでの月1回から月2回の開催に増やしました。コンサルタントの助言を得ながら、法人の魅力を改めて言語化したり、分野ごとのターゲットの明確化(ペルソナの設定)をしたり、SNS動画の企画づくりを進めたりしています。SNS動画の企画案では、職員一人ひとりを「ムラヤマン」と呼んで、利用者との日常的なやりとりやケアの工夫などを発信していくことを予定しています。
鈴木さんは「どんなことが発信のネタになるのか分からないこともありますが、コンサルタントやメンバーと話す中で、『お、それいいじゃん!』と気づくことがあります。『ムラヤマン、がんばってるね!』といった感じで、楽しく発信していきたいです」と話します。
組織全体の取組みへ
課題は、いかに組織的に進めていけるか。1月、鈴木さんは広報委員会の取組みについて「今これをやらなければ村山苑は人材を確保できない」と題する文章を、法人全体の広報紙に寄せました。法人内には広報委員会を応援する温かい声がある一方、まだ十分に存在が認知されていない状況もあります。「委員会だけではなし得ない、法人全体の取組みなので、応援するだけではなくて、みんなで一緒に進めていくことを伝えようと思いました」とねらいを話します。
鈴木さんは、「採用者増という結果がいつ出るかはわかりませんが、それでも今、スピード感をもって広報活動を進めることが大切。2023年度は花を開かせるための準備期間に充てたので、これから本格的に発信していきたいです。今踏ん張って、次の世代につなげていかないと」と意気込んでいます。
https://www.murayamaen.or.jp/