今保 祐子さん
相手を思いやり きめ細かな支援をずっと続けていきたい
掲載日:2024年4月24日
2024年4月号 くらし今ひと

今保 祐子さん

 

あらまし

  • 有償家事援助サービスの協力会員として、約24年間、地域住民の暮らしをサポートしてきた今保 祐子さんにお話をお伺いしました。

 

子育て中も心に秘めていた「社会とつながっていたい」という想い

栃木県で生まれ、就職を機に上京しました。結婚、第1子の出産を経て、瑞穂町へ引っ越してきました。子育てをしていた時期はとても忙しく、特に第3子を出産した後は夫の親の介護も重なり、心身ともに疲弊していました。また、専業主婦としての立場にも引け目を感じ、「社会とつながっていたい」という気持ちを持ち続けながら、子育てに没頭する日々が続きました。子育てが落ち着いてきた頃、趣味だった洋裁を本格的に学ぼうと思い、立川市にある洋裁学校へ入学しました。子育ての傍ら週3日の通学や課題をこなすのが大変でしたが、4年通って無事卒業しました。

 

洋裁学校で、ボランティアとして高齢者福祉施設に行きバザーのお手伝いをしたことがあったのですが、その施設でホームヘルパー2級(現 介護職員初任者研修)講座を開催することを教えてもらい、受講してみることにしました。それから瑞穂町の社会福祉協議会で2000年に有償家事援助サービス「ふれあいサービス」ができたことを知り、「自分にも何かできることはないか」という想いで協力会員になりました。

 

相手をよく知り、よく話を聞く大切さに気づかされる

協力会員になってから約24年間、子育て世代から高齢者まで、家の掃除や買い物、料理など、家事援助を中心にお手伝いをしてきました。地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)の生活支援員としても10年ほど関わらせていただいています。

 

忘れられないエピソードがあります。当時、協力会員としてスタートしたばかりの頃、一人暮らしの高齢男性の暮らしのサポートをさせていただくことになりました。その方に「マグロの刺身を買ってきてほしい」と頼まれ、何も考えずスーパーへ買い物に出かけたのですが、いざ刺身売り場に行くと、切り身や柵、マグロの種類や部位がたくさんあり、金額もさまざまで、どの刺身を買ってきたらいいのか手が止まってしまったのです。そこで、買い物ひとつとっても利用者さんがどんなものを望んでいるのか、細かいことを聞いてから行動するべきなのだと気づきました。そして、もう一度利用者さん宅へ戻り、希望のものをしっかり聞いてから再度スーパーで買い物したことがありました。

 

思い返すと、第3子を出産後にヘルパーさんに来てもらったことがありました。その方に、「アサリを買ってきてほしい」と買い物を頼んだのですが、「アサリが売り切れていたので買ってきませんでした」と言われたのです。その時は「シジミでもよかったのに……。気が利かないわ」と残念に思ったのですが、今考えるとそのヘルパーさんがシジミを買ってこなかった理由がよく分かります。「協力会員になりたてのあの頃の私と一緒だ」と合点がいったのです。

 

この経験から、サポートに入る前には予算や好み、状態など、利用者さんの要望をとことん聞くようにしています。特に予算や価格帯は、利用者さんの暮らしぶりがそれぞれ違うので、注意深く尋ねています。細かいことですが、トイレ掃除でも何回流せばいいかということまで聞いています。

 

相手を思いやる心を忘れず理解しようとする気持ちが大切

これまでいろいろな方のお手伝いをさせていただきましたが、一人ひとり状況が異なるので、相手の立場に立ちながら、時には先回りをして希望や困っていることをよく聞くようにしています。また、時間をしっかり守ること、体調を事細かに尋ねることも大切にしています。協力会員になって感じるのは、「相手を思いやること」の大切さです。いろいろな価値観や生き方があるので、相手の話をよく聞き、理解しようとする気持ちを持つことが大切だなと思います。今の社会にも必要な要素なのではないでしょうか。差別がなく、自分らしく生きられる、そんな社会になったらいいですね。

 

これからも私の力が及ぶ限り、協力会員としてサポートを続けていきたいです。今は利用数も少し落ち着いてきたので、空いた時間に傾聴のボランティアやゲートキーパー研修などを受ける予定です。趣味の洋裁や合唱、水泳はこれからも楽しんでいきたいです。特に洋裁は長く続けている趣味のひとつで、実は今日着てきたジャケットとパンツは自分で仕立てたんですよ。

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