東京都社会福祉協議会児童部会、一般社団法人子どもの声からはじめよう
子どもの権利条約から30年、子どもの権利擁護のいま
掲載日:2024年5月23日
2024年5月号 NOW

あらまし

  • 1994年に子どもの権利条約を日本が批准してから今年で30年。4月施行の改正児童福祉法では、社会的養護のもとにある子どもたちの権利擁護の環境整備が一層求められています。
    今回は、「東社協児童部会」と「一般社団法人 子どもの声からはじめよう」への取材を通して、子どもの権利擁護について考えていきます。

 

子どもの権利擁護を考え続けて

~東社協児童部会 子どもの権利擁護委員会

東京都内の児童養護施設や自立援助ホーム等を中心に構成される 東社協児童部会には、「子どもの権利擁護委員会」が設置されています。そのはじまりは1997年に遡り、子どもの権利に対する職員の意識調査や研修等が当時から行われていました。何より2004年には、児童部会として子どもの権利を尊重し、行動することを示した「倫理綱領」を委員会で策定し、その後はハンドブック等を通じた普及啓発に努めてきました。

 

本綱領は、全施設が揃う総会の冒頭で必ず全文読み上げられるほか、新任職員を対象とした研修の場で伝えられるなど、各施設、職員が立ち返るものになっているといいます。施設で暮らす子どもたちの権利侵害を防ぎ、子どもたちのより良い権利擁護環境をめざして、その時々に必要なことを委員会として提案してきました。近年では、社会的養護にかかわる子どもたちの意見表明等支援を明確化した「改正児童福祉法」の成立を受け、“アドボケイト”や“子どもの意見表明を支援する仕組み”をテーマに学習会の開催や意見交換を実施しています。

 

子どもの権利擁護を確かなものに

こうした権利擁護の取組みをすすめる中、施設現場における権利侵害事案が今なお生じています。東京都と一緒に、どうしたら権利侵害を防ぐことができるか。施設職員が集い、考える場が毎年設けられています。小グループに分かれてディスカッションする時間では、それぞれの悩みや取組みが共有され、そのことで改善されていくものもあるといいます。委員長を務める東京育成園園長の髙橋直之さんは「もちろん施設によって特色や違いはあるけれど、権利擁護については、それぞれの施設で標準化していかなければなりません。その役割を部会、そして委員会活動が担っていると思います」と話します。また、委員で朝陽学園の千田真介さんは、子どもの権利擁護において、職員間のチームワークが大切であるとし、「職員同士がぎくしゃくしていると、子どもたちの行動にも影響します。職員がチームとして意見を交わしたり、それぞれの価値観を尊重したりすることが確かである必要があります」と話します。

 

子どもたちと向き合い、みんなで考えていく

子どもの権利擁護に向けたしくみづくりがすすむ中、「権利」を気にするあまり、子どもと関わることにすくんでしまう職員もいるといいます。「権利侵害をしたくないから、何もしないことが権利擁護だと捉えてしまう職員もいるように思います。退所した子どもたちの声を聞く中で、何もしないのではなく、たとえぶつかって気まずい雰囲気になったとしてもお互いを尊重しながら、とにかく子どもたちと一緒に過ごす、向き合う時間を増やすことが大切だと実感します」と千田さんは繰り返します。

 

「子どもたちが成長していく中で、大人として専門職として私たちは必要なことを言わなければなりません。だからこそ、伝え方ややり方をみんなで考えていくことが求められています」と髙橋さんは続けます。

 

倫理綱領策定から今年で20年。引き続き、施設同士のつながりを生かしながら、児童部会として子どもの権利擁護に取り組み続けます。

 

 

子どもの「ため」ではなく、子どもと「ともに」
~一般社団法人 子どもの声からはじめよう

子どもアドボカシー。子どもが自身の意見や願いを自由に表現することができるようにサポートしたり、子どもの代わりに声を上げたりすることで、子どもの権利を擁護することを意味します。2020年に設立された一般社団法人「子どもの声からはじめよう」は、そうした子どもアドボカシーを担うアドボケイトの養成を行いながら、児童相談所の一時保護所を訪問するなど、子どもの声を始点とした権利擁護に取り組んでいます。

 

活動のきっかけは、代表理事である川瀬信一さんの問題意識。社会的養護経験者として自らの視点だけで思いや経験を語ることや、当時の社会的養護に関する政策検討のあり方に疑問を抱き、社会的養育の場における当事者参画をすすめる必要性を感じたといいます。「社会的養護経験者といっても自分は何万分の一人でしかなくて、一人ひとりの状況や背景は異なります。当時の政策検討プロセスへの当事者参画は限定的で、かつその当事者の声が消費されているような感覚を抱きました」と川瀬さんは振り返ります。

 

そんな意識から勉強会を2018年に始めていくのですが、川瀬さんが「アドボカシー」を意識したのは、子どもが声を上げていながらもその尊い命が奪われる事件が相次いだため。この状況を看過できないと考え、子どもの「ため」ではなく、子どもと「ともに」声を上げる、子どもアドボカシーの協働性を大切に感じ、今につながっていきます。

 

子どもが自らの気持ちに触れ、思いを伝えること

子どもアドボケイトの養成講座では、アドボカシーの理論や実践だけでなく、その前提として必要なチームビルディングや自己覚知など幅広い内容を学んでいきます。現在は講座を終えた40名を超えるアドボケイトが、チームとして互いを尊重しながら子どもアドボカシーに取り組んでいます。

 

2021年度からは都内特別区児童相談所の一時保護所への訪問を開始。週1回2~3時間程度の滞在で、遊びや運動を通じて子どもたちと関係性を築いていきます。アドボケイトの役割等を広くアナウンスし、子どもが話したい時に利用できるようにしています。一時保護所で過ごした若者へのヒアリングから作成したカードを用いたワークは、子どもが自らの気持ちに触れ、思いを明かすことにつながっているといいます。

 

自身もアドボケイトとして訪問する川瀬さん。「一時保護は『門』みたいなものだと思っています。施設や里親家庭へ行く意味でも門であるし、仮に家庭に戻ったとしても、その門を経たことで、厳しい状況でも自分の声を聴いてくれる人がいる、声を上げれば助けてくれる人がいる、そのことを経験的に理解する機会が得られる重要な場だと感じています」と思いを明かします。

 

 

一人ひとりの子どもの声が尊重される社会へ

こうした取組みは、子どもたちの声を聴きながら実践を考えるほか、社会的養護を経験した若者が参画するなど、子ども・若者とともにすすめられています。その一方で、活動には支援現場の関係者による理解が重要であり、対話と議論を重ねながら子どもの権利擁護をめざしているといいます。

 

2023年度からは、新たに里親家庭や元の家庭に戻った子どもたち等を対象とした、子どもアドボカシーが始められています。今後について、川瀬さんは「今の取組みを続けながら、学校教育の場で広くアプローチをしていくことが必要だと考えています。そして、さまざまな領域に広がり、最終的にはすべての子どもたちにアドボカシーが届くことをめざしています」と話します。

取材先
名称
東京都社会福祉協議会児童部会、一般社団法人子どもの声からはじめよう
概要
東京都社会福祉協議会児童部会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/jidou.html
一般社団法人子どもの声からはじめよう
https://kodomo-no-koe.qloba.com/
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