東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT)
令和6年能登半島地震における東京DWAT(東京都災害派遣福祉チーム)の取組み
掲載日:2024年8月5日
2024年7月号 NOW

あらまし

  • 東京都災害派遣福祉チーム(以下、東京DWAT(※1))は、災害時に避難所や福祉施設へ派遣され、被災者の福祉ニーズに応じた支援を行います。この度の令和6年能登半島地震では、東京から初めての派遣が行われ、石川県輪島市内の避難所に計30名のチーム員を派遣しました。
  • ※1 DWAT…Disaster Welfare Assistance Teamの略

 

東京の災害時要配慮者支援とDWAT

東社協では、2017年度より東京都から委託を受け、「東京都災害福祉広域支援ネットワーク」を構築し、平時から東京都や区市町村、東社協(事務局)、区市町村社協、東社協施設部会、福祉専門職の職能団体が連携して、災害時の活動体制構築に向けた取組みをすすめ、災害対策の強化を図ることをめざしています。

 

2022年度末には、国や他の自治体の動向等をふまえ、東京においても「東京都災害派遣福祉チーム(以下、東京DWAT)」を設置し、翌年度からチーム員の登録研修を本格的に開始しました。

 

DWATは、都道府県単位で組織されるチームで、所定の研修を修了した福祉施設職員や福祉専門職等で構成されます。被災自治体からの要請により避難所や福祉施設へ派遣され、医療などの他のチームと連携して、災害時要配慮者への福祉的支援を行います。全国では8,000人を超えるチーム員が登録されています。

 

東京DWATの輪島市への派遣

全国社会福祉協議会は、厚労省から委託を受け、「災害福祉支援ネットワーク中央センター(以下、中央センター)」を運営し、被災地からの要請に基づき、全国的なDWATの活動調整等を担っています。

 

令和6年能登半島地震では、1月1日の発災後、石川県からの要請に基づき、5日から全国での派遣調整が行われました。8日には金沢市内に設置された1.5次避難所へのDWAT派遣が開始され、下図の通り、順次、奥能登地域に活動を広げました。東京では、東京DWATチーム員に派遣の意向を確認するとともに、現地の被害状況やDWATの活動状況などを随時チーム員へ情報共有しました。

 

引用:中央センター作成資料

 

1~2月は過去に活動経験のある道府県のDWATが中心に派遣されましたが、3月からは活動先の拡大に伴い、全都道府県にDWATの派遣要請が出されました。東京DWATは輪島市へ派遣されることとなり、下表のとおり、2月29日から3月29日までの期間、市内4か所の一般避難所に30名のチーム員を派遣しました。

 

3月末までに全国から1,200名を超えるチーム員が派遣され、4月以降は金沢市内の1.5次避難所でのみ少数のチームが活動を継続していましたが、6月末をもって、すべてのDWAT活動が終了となりました。

 

 

表 東京DWAT派遣先(輪島市内)

 

輪島市におけるDWATのミッション

東京DWATの輪島市における最初の派遣先は、門前中学校内に設置された一般避難所でした。3月当初、門前中学校には約170名が避難しており、対口支援(※2)で入った行政職員が避難所運営を担っていました。また、「JMAT(※3)」や「JRAT(※4)」といった医療チームが市内の避難所を巡回したり、国際医療ボランティア団体「ジャパンハート」の看護師が2~3名のローテーションで長期滞在し、避難者の健康管理を支えていました。

 

第1クールのリーダーを務めた有賀弘さんは「門前中学校は発災当初、自主避難所として住民が押し寄せ、集落ごとにまとまって生活していました。段ボールハウスだったので、どこにどんな世帯がいるのかを市も把握できていない状況でした。そのため、避難者名簿をDWATにも提供してもらえるよう避難所の運営者へ依頼するところから活動を始めました」と言います。

 

また、発災から2か月が経過する中、避難者の心労も蓄積し、健康状態の悪化や最悪の場合は段ボールハウス内での孤独死など、さまざまなリスクが懸念されました。そこで、第2クールからは、輪島市内に入っていた8都県のDWATによる定期ミーティングが始まりました。その中で、輪島市内におけるDWATのミッションが、避難所内の要配慮者情報を市につなぎ、生活の場が仮設住宅などへ移行しても福祉的支援が継続される環境づくりの支援であるとの共通認識を深めました。第2クールリーダーの岩田雅利さんは「DWATの役割が具体化されたことで、急展開ながらも他のチームと同じ方向を向きながら、避難所内のマッピングと要配慮者のアセスメントをすすめられたと思います」と、活動を振り返ります。

 

第5クールからは、門前中学校における要配慮者の把握がおおむね完了したことから、中小規模の避難所へ派遣先が変更され、避難所内のキーパーソン(民生委員や町内会長等)と連携し、要配慮者の情報把握に取り組みました。第6クールリーダーの岩田有佳乃さんは「DWATのミッションと避難者のニーズに乖離があり、時にはもどかしい思いをすることもありましたが、DWATの役割はあくまで『地元での支援につなぐ』ことであり、被災地が自分たちの力で復興に向かえるよう支援することの大切さを改めて感じました」と、DWATが果たすべき役割とその難しさについて語ります。

 

※2 対口支援(たいこうしえん)…大規模災害で被災した自治体と支援側の自治体がパートナーとなり、復興における各種支援をするための手法
※3 JMAT…日本医師会災害医療チームの略。避難所等での医療活動を通じて被災者の命と健康を守り、地域の医療復興を支援するチーム
※4 JRAT…日本災害リハビリテーション支援協会の略。災害時における被災者の身体的・精神的な回復をサポートし、自立生活ができるよう支援を行うチーム

 

段ボールハウス(門前中学校)

 

「連携と協働」によりめざすもの

業種や職種、経験なども異なるメンバーでチームを組み、さまざまな関係機関や支援団体と一緒に被災地支援を行うためには、なによりも「連携と協働」が不可欠でした。今回の派遣では、施設長などの管理職経験者がリーダー役として他機関との連携やメンバーの統率を担いました。他のチーム員もそれぞれの専門性を発揮して、「福祉なんでも相談コーナー」での対応や、避難所内での体操やレクリエーションの開催、不安を抱える被災者への傾聴など、あらゆる場面で活躍しました。

 

また、今回のDWAT活動では、支援に入る都道府県DWATがチームで活動ができるよう、各活動地域における「地域リーダー制」が導入されました。
東京DWATでは今回の経験をふまえ、今後、チーム員養成や支援体制の強化を図りつつ、東京での大規模災害を想定した平時からのつながりと、外部支援を受け入れる受援力を高めていくことをめざしていきます。

 

2024年度も10月と1月の2回、「東京DWATチーム員登録研修会」を予定しています。東京都における災害対策の強化に向け、ご関心のある方は、ぜひご参加ください。

さまざまなチームとの協働

取材先
名称
東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT)
概要
東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT)
https://www.tcsw.tvac.or.jp/saigai-nw/tokyodwat.html
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