あらまし
- さまざまな事情から、家庭で育てることができない乳幼児を24時間365日受け入れ、見守り続ける乳児院。都内に11か所ある乳児院で構成される 東社協「乳児部会」は、時勢に応じた調査研究や研修実施、提言活動等に取り組んでいます。当部会には職種ごとの研究会があり、今回は各施設の心理職による「心理研究会」の活動を紹介します。]
心理職のあり方を模索する場
乳児院における心理職は、子どもたちの心身の発達状態の把握や心理的ケアをはじめ、保護者のケアや親子関係の調整、より良い支援に向けた他職種へのコンサルテーションなど、専門性に基づく支援のみならず、子どもたちとの関係構築、そして支援現場に大切な多職種連携を支えています。心理職の勤務形態や配置は施設で異なり、全国的にみてもその数は多いといえません。「一般的な乳幼児支援と異なる」「教科書だけじゃわからない、応用が求められる」と、心理研究会の齊藤さんと麻見さんが話すように、乳児院という環境下で心理職として取り組む固有の難しさが多くあるといいます。だからこそ、20名を超える心理職が定期的に一堂に会す心理研究会は、専門職同士で学び合える貴重な機会であり、乳児院での心理職のあり方をそれぞれが模索する重要な場になっています。
心理研究会と乳児院の相互作用をめざして
家庭支援・心理研究会を経て、2013年に設けられた心理研究会は、年4回程度と限られた場である中、各職員の課題意識や関心に基づくテーマをもとに情報交換や研修、事例検討を行っています。2023年度は「ライフストーリーワーク」をテーマに、外部講師も招きながらみんなで学び、考える時間を過ごしました。
特に2015年から数年にわたるPCAGIP法による事例検討の研究は、心理研究会として大切にしてきた取組みといえます(下図参照)。「チームで養育を考える乳児院で生かせるのでは」というメンバーの提案を機に、みんなで学ぶことから始めて各施設でも試行し、現在は乳児部会の研修で毎年実施され、ケースカンファレンスに取り入れている施設もあります。
PCAGIP法による事例検討(乳児部会心理研究会「乳児院におけるケース
カンファレンスー新しい事例検討法 PCAGIP法の取り組みー」から作成)
このように、心理職としての専門性だけでなく、子どもの養育にみんなで取り組む現場のあり方も問い続けてきた心理研究会。設置当初から参加している麻見さんはこれからの研究会について、「乳児院はまさに過渡期にあり、求められる機能や役割、そのあり方が変わってきています。社会が変わりゆく中で、心理職としてどうあるべきなのか。都内施設で働く仲間として、一緒に考えていけたらと思っています」と話します。続けて、乳児院で働いて4年目となる齊藤さんは「新たなメンバーも増えていて、参加する誰にとっても満足度の高い研究会をめざしていきたいです。研究会で得たものをそれぞれが乳児院に持ち帰り、また研究会に持ち寄るといった循環ができれば」と研究会への想いを明かします。
2024年度の研究会テーマは「観察」。心理職として、どんな視点で日々子どもたちを見ているのか。色々な学びを経験した心理職がつどい、情報交換することから始めていきます。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/nyuji.html