瑞穂町社会福祉協議会 地域支援係長兼権利擁護センターみずほ係長 社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員 池谷牧雄さん
制度の狭間や人をつなぎ、地域の方たちが望む暮らしを支える
掲載日:2024年12月19日
2024年12月号 福祉のおしごと通信

2024年12月号福祉のおしごと通信写真

                 社会福祉法人瑞穂町社会福祉協議会 

              地域支援係長 兼 権利擁護センターみずほ係長 

            社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員 池谷牧雄さん

 

あらまし

  • 瑞穂町社会福祉協議会で働く池谷牧雄さんに、社会福祉協議会(以下、社協)の仕事の魅力や、係長の立場から、部下、組織への思いなどについてお話を伺いました。

 

本人が望む生活に向け、意思決定を支えた出会い

多摩地域に生まれ、小さい頃から、祖父や親戚との関わりの中で育ちました。高校での将来の進路選択で、身体を動かせてコミュニケーション力が活かせる仕事として福祉職を意識するようになり、福祉系大学に進学しました。

 

大学3年生の時に入った地域福祉を専門とするゼミでの学びや、市社協での実習・アルバイトの経験から、住民の方と関わり、幅広い相談に対応する社協職員の仕事ぶりや雰囲気を知り、卒業後は社協で働きたいと思うようになりました。人口規模が大きい区部ではなく、人との距離が近く、地元や実習先に地域性が近い市町村部の社協で働きたいと思い、たまたま縁あって約20年前に瑞穂町社協に入職しました。

 

瑞穂町社協の正規職員は現在、14人です。多くの町村社協同様、一人の職員が複数の事業を担当するため、幅広く相談支援の力が養われる環境だと思います。

 

今も記憶に残る出会いがあります。約10年前、地域福祉権利擁護事業を入り口に、妻と離婚し、自暴自棄になり支援を拒否する独居の高齢男性と関わりました。親族や近隣との関わりもほぼなく、家の中は散乱しお酒を多飲する心配な状況でした。関わりを続け半年後、何とか診察につなげたところ、生命に関わる病気が発覚しました。本人は、治療を受けたくないと、はじめは手術も拒否されました。それでも、私はそれが本当に本人が望む生き方とは思えず、何度も自宅に通ううち、「もう少し生きたい」という本心が聞けました。これを機に覚悟を決めて手術を受け、退院後には福祉サービスを利用するようになり、劇的に生活が改善されました。その後、入所施設に入られるまで、数年間、自宅で本人の叶えたい生活を送られました。

 

信頼関係を築き、支援につなぐまで長い時間がかかりましたが、何とか本人と関係をつくろうと何度も自宅を訪問していることを報告していた上司もその関わりを後押ししてくれ、心強く思っていました。本人の意思決定を支えながら望む暮らしを実現する社協職員の役割を自覚できた、印象深い出会いです。

 

係長としての姿勢やあり方に悩んだことも

係長になり3年目です。はじめは自分なりの係長像があり、何事にも率先して行動力や指導力を発揮すべく頑張りましたが、その態度が部下の不満や部下との温度差を生んでいると感じるようになり、悩みました。なるべく仕事を任せ、よかったところを評価するようにすると、徐々にコミュニケーションが良好になり、部下からの相談や進言が増えたことは、自分の働き方や姿勢を考える上で、大きな気づきになりました。以前の自分は、部下が自分で最後まで責任をもって仕事に取り組む上での障壁にもなっていたのでは、と振り返っています。

 

係長の役割は、組織の調和を保ち、組織と職員をつなぐことだと思います。一人ひとりが替えのきかない職員だからこそ、ワークライフバランスも保ち、皆が力を発揮できる職場にしたいと考えています。

 

現在、町内6地区で新しい出会いやつながりをつくる「地域つながり推進連絡会」や、福祉や人のつながりを大切にする意識の普及啓発活動「みずほつながりたい」に重点的に取り組んでいます。

 

「みずほつながりたい」は、職員が係横断で協力してシンボルマーク制作に取り組みました。そのデザインを決めていく過程では、紆余曲折ありましたが、若手職員が活躍してくれ、前にすすめられたことが印象深い出来事です。完成後、イベントや講座、会議などさまざまな場面でバッジやシールを配布し、好評をいただいています。これから町の中にこのマークを貼る事業所やバッジを付けた方が増え、さらに広がることで、地域福祉への意識を高めていきたいと思っています。

 

また、食糧支援の「ささえあいフードリレー」にも取り組んでいます。地域に必要な活動として、住民の方や企業・団体から提供いただいた食品を活用し、社会福祉法人連絡会とも連携しながら配布しています。回を重ねるごとに利用者が徐々に増加しており、困っている方の多さに気づくとともに、そうした方に届く事業になってきていると思います。

 

町なかや福祉のイベントなどいろいろな場面で、私を社協職員だと認識して声をかけてくださる地域の方が増えていると実感することがあり、嬉しく思っています。一方で、福祉に関わる方以外には、社協があまり知られていないことも感じており、課題だと思っています。今後もこうした地域福祉の土壌づくりや制度の狭間のニーズに対応する新たな事業にも積極的に取り組み、「社協があるから地域が豊かになった」と思ってもらえるよう、皆で力を合わせていきたいと思います。

取材先
名称
瑞穂町社会福祉協議会 地域支援係長兼権利擁護センターみずほ係長 社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員 池谷牧雄さん
概要
社会福祉法人瑞穂町社会福祉協議会
https://mizuho-shakyo.com/
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