(社福)豊芯会 ハートランドみのり施設長・「てあとるみのり」総監督 椙田佳生さん
演劇を通じて得られる成長が、次のステージにすすむきっかけになればいい
NEW 掲載日:2024年12月27日
2024年12月号 くらし・今・ひと

             社会福祉法人豊芯会 ハートランドみのり施設長 

             「てあとるみのり」総監督 精神保健福祉士

                 椙田佳生(すぎたよしお)さん

 

あらまし

  • 社会福祉法人豊芯会の地域演劇交流事業を担う劇団「てあとるみのり」。
    その総監督であり、脚本や音響などを手がける椙田佳生(すぎたよしお)さんに、劇団を立ち上げたきっかけや劇団員への想いなどについてお伺いしました。

 

 

高校3年生で演劇に目覚める

幼い頃から目立ちたがり屋で、漫画を描いたり、一人でバンドをつくって友達に聞かせたりと、とにかく表現することが好きでした。演劇との出会いは、高校3年生の春。演劇部だった友人から急遽ピンチヒッターを頼まれ、観客の前で初めて演技をしました。自分の演技でお客さんが笑ったり、拍手をしてくれたりすることに感動し、演劇の面白さに目覚めました。すぐに演劇部に入部し、大学も演劇学科にすすみました。


大学卒業後は友人とアマチュア劇団をつくり、アルバイトをしながら演劇活動を続けていましたが、いったん演劇から離れ就職することに。しかし5年ほどで退職し、これからどうしようと考えていた時期に、精神保健福祉法が施行され、精神保健福祉士という資格が新しくできたことを知りました。「今までやってきた演劇が役に立つことがあるのでは」と何か予感のようなものを感じ、資格が取れる専門学校に入学しました。

 

実習先での演劇プログラムが好評に

精神保健福祉士の実習先である精神科病院のデイケアで、患者さんと一緒に演劇を用いたプログラムを実践したことがありました。患者さんからは「面白い」「またやりたい」と好評で、職員の方からも「こんな反応は初めてです」などの嬉しい言葉をいただきました。この経験から「演劇を通じて、障害のある方の『変わりたい』『何かしたい』といった気持ちに寄り添えるのではないか」と確信しました。その後、アルバイトやボランティアという立場で継続的に演劇の発表を行いながら無事、精神保健福祉士の資格を取りました。実習を終えてからは縁あって社会福祉法人豊芯会の当時の理事長からお誘いいただいて現在の職場に入職し、2008年に「てあとるみのり」を立ち上げました。


「てあとるみのり」は、知的障害や精神障害のある方や法人の職員、学生、地域住民の方などで構成された劇団です。現在までに27回の主催公演を行い、今年で設立から17年目を迎えました。てあとるみのりには、演劇に興味があり自分で調べて来てくださる方や病院や保健所などから紹介されて来られる方もいます。皆さん、始めは想像以上に本格的な劇団であることに驚かれますが、それぞれの立場、経験、特性などに合わせて参加できるのが特徴のひとつです。私は総監督を務めながら脚本、演出、音響なども手がけています。はじめは4~5人だった参加者も少しずつ増えていき、現役の劇団員の方や地域の方も参加をしてくれるようになりました。障害のある方と稽古をしていると、自分では思いつかない表現をしてくれることがあり、「こういう考え方があるんだ」といろいろなことに気づかされ、日々勉強になっています。

 

てあとるみのりを立ち上げるまで脚本を書いたことがなかったのですが、個性豊かな人たちの魅力を演劇で活かすには、既存の脚本ではなく自分が書かなきゃいけないという使命感のような気持ちで脚本を書き始めました。劇団員に舞台上でいかに輝いてもらえるかを一番に考えながら創作活動をしています。

 

好きなことに全力で取り組んで人は成長する

「人は変われる」が劇団の理念です。ただ演じるだけではなく、お客さんからお金と時間をいただく以上は、時には厳しい稽古にも向き合わなければなりません。障害のあるなしに関わらず、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちの中で、自分にできることは何かを考えて役割を全うし、仲間と協力しながら全力で演劇に取り組む。そうすると達成感が得られ、結果が評価されることで自己肯定感も高まります。そして、さらに良くしたいという工夫に変わり、人として成長していきます。自分が演劇と出会って人生が変わったように、劇団員にも演劇を通じて自信をつけてほしい。てあとるみのりではそれが実現できると信じて劇団を続けてきました。

 

これからも演劇を通じていろいろな人たちと交流をしていきたいです。この活動がさらに広く認知されるようになったらなお嬉しいですね。

 

てあとるみのり第28回公演「AI TRANSFORMATION」

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  • AIと人間の共存共栄による、よりよい世界の創造をめざすSF物語。大塚の萬劇場にて2025年2月5日(水)~9日(日)公演。
取材先
名称
(社福)豊芯会 ハートランドみのり施設長・「てあとるみのり」総監督 椙田佳生さん
概要
社会福祉法人豊芯会 
地域活動支援センターⅢ型 ハートランドみのり
https://housinkai.or.jp/guide/tabid/72/Default.aspx

てあとるみのり
https://housinkai.or.jp/guide/theatreminori/tabid/87/Default.aspx
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