(社福)江刺寿生会
障害のある方たちが安心に避難できるために必要な支援
掲載日:2018年7月19日
ブックレット番号:7 事例番号:78
岩手県/平成30年3月現在

事業所に戻るのに4日間もかかった

江刺寿生会の業務執行理事・施設長の久保田博さんが、東京開催の会議のため出張した日に、東日本大震災が起こりました。久保田さんは江刺寿生会の事業所へ戻ろうと動くも、東北新幹線の運転は停止され、東北自動車道は通行止めにより、帰宅困難となりました。

この時点で、岩手県奥州市の事業所への連絡は取れませんでした。震災1日目と2日目は東京に2泊、3日目は飛行機で羽田空港から秋田空港へ移動し、秋田市内のホテルで泊まり、4日目にレンタカーで秋田市内から盛岡市へ移動しました。

ようやく盛岡市の県社協と障がい協事務局がある「ふれあいランド岩手」に到着したのは、4日目の16時でした。事業所へ戻るまでに要した時間は、発災から4日間もかかりました。

この間、通信機器の状況が悪く、奥州市の事業所と障がい協事務局との連絡が取れない状況が続いていました。

 

組織の連携を活かす

久保田さんは「当時、私が障がい協と知福協の会長を兼務していたこともあって、岩手県社協やその他の障害者団体との情報連絡、支援活動、救援物資の提供などのさまざまなやりとりは、スムーズにすすんだ」と話します。

震災4日目、久保田さんは障がい協事務局に直接出向き、障がい協と知福協の役員へ電話連絡し、連絡が取れて参加できる役員のみで、6日目に「緊急役員会」を開催しました。今後の対策を早急に協議するためです。協議内容は、関係施設の被災状況の把握方法、被災地の支援活動の方法などについてです。

 

ふれあいランド岩手で開催されたこの役員会は、後の「東日本大震災障害者支援活動推進プラットホーム会議」(以下、プラットホーム会議)として、行政、支援団体が自由に参加できるシステムに変化していき、その後70回程度開催されました。

プラットホーム会議は、県社協障がい協がまとめ役の役割を果たし、「(1)参加資格の条件はなく参加自由、(2)各団体の活動状況を情報提供する、(3)他団体を批判しない」とルールを定め、運営されました。

 

経験から学んだ課題と取組み

久保田さんは、障害者事業所の施設長、障がい協および知福協の役員として、震災の経験を通して、さまざまな課題を感じ、現在もそれらの課題の解決に向けた取組みをすすめています。

 

課題の一つ目は、災害発生時の情報収集の難しさがありました。震災直後は、携帯電話などの通信機器が使えず、事業所の被災状況を把握することが大変困難でした。

実際、把握する方法として、衛星電話や時々通じる携帯電話、メールなどで被災状況を把握することしかできませんでした。そこで、県内3エリア(陸前高田市を含む気仙地区、山田町を含む釜石地区、宮古地区)に分けて、連絡可能な施設を中心に県社協の障がい協へ情報の集約を図ることにしました。

何かが起こる前に、事業所間の情報収集のための連絡方法を構築しておくことが必要でした。そのため、「岩手県社会福祉協議会障がい者福祉協議会 ○○ブロック協議会会員事業所・施設間における災害時相互支援協定書」(※資料1)を近々締結する予定です。

 

課題の二つ目は、有事の際「福祉事業所には、ガソリンなどを優先的に確保できるシステム」の構築する必要性です。

江刺寿生会の事業所では、ガソリン、軽油不足から送迎サービスを再開できるまでに1週間かかりました。送迎サービスを実施する事業所の多くは、業務や支援活動に支障をきたしました。ガソリンや軽油は、ひとり暮らしの障害者、高齢者などの要配慮者の安否確認するための移動手段として、また、自宅での暖気管理をしながら健康を保持するためには、絶対に必要なものであります。

 

取材先
名称
(社福)江刺寿生会
概要
(社福)江刺寿生会
http://esashijyuseikai.or.jp/
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