(社福)福島県社会福祉協議会 福祉サービス支援課
福島における福祉施設の被災と支援
掲載日:2017年11月30日
ブックレット番号:1  事例番号:8
福島県福島市/平成24年3月現在

福島県では、原発の事故により次々と避難地域が拡大したため、避難した福祉施設も利用者ごと避難先を転々としたり、何とか避難できても、体育館などの一般の人と同じ避難所で過ごした施設がほとんどでした。施設利用者の高齢者や障害者にとっては移動するだけでも大きな負担であり、十分な設備や資材のないままの避難生活が強いられました。

 

3月12日には福島第一原発から半径20㎞圏内に避難指示、15日には2030㎞が屋内退避となり、物流のストップによる食糧不足に陥りました。30㎞圏内にあって避難した入所施設は23施設(特養・養護老人ホーム14、障害児者施設8、救護施設1)。その利用者の定員は1千524人に及びます。また、後に計画的避難区域となり、村民が避難した飯舘村では、特養「いいたてホーム」が村に残り続けています。

 

高齢者施設では利用者を分散させて避難

避難した高齢者福祉施設への支援では、県内で被害の少なかった県老施協会津支部の施設長たちがいち早く行動し、支援物資を届け、利用者の受入れに尽力しました。3月16日には、避難先で一般の人と過ごしていた施設利用者にエアマットや清拭用品、経管栄養用とろみ剤などを届けに行きました。その時点で多くの施設がオムツや下着の替えを必要としていました。

 

次に急務となったのが、入所者の受入れ先の確保です。支部の施設に呼びかけて、17日から受入れを始めて会津支部だけで147名を受け入れました。福島県社協福祉サービス支援課長の村島克典さんは、「まとまって安全に過ごせる場所の確保が困難な中、高齢者の命に関わるので、利用者を分散して避難する状況となった。受入れ側はデイサービスのスペースも使って、受け入れてくれた」と話します。同一法人内のユニットケアの個室にもう一人ずつを受け入れることでしのいだ特養もありました。その後、9月末に緊急時避難準備区域が解除されて、分散した利用者が再開した施設に戻っている施設もあります。

 

また、避難市町村の要介護認定の申請が急増。浪江町では震災前の3.9倍となりました。在宅の高齢者も避難生活の長期化と家族環境の変化によりニーズが増大しています。サービスの確保は重要な課題です。

 

障害児者施設は利用者がまとまって避難

原発から30㎞圏内の障害児者入所施設は、群馬県の国立のぞみ園と千葉県の鴨川青年の家に利用者・職員がまとまって避難しました。300人以上が避難した鴨川青年の家では、その生活環境が課題でしたが、1123日に相馬市にある保養所に約70人の施設利用者が帰ることができました。他の利用者も3月までには、いわき市の公共施設や田村市の仮設住宅へ戻ることができました。

 

一方、通所施設では「利用者が避難した体育館にいることが難しく、自分たちの事業所にすし詰めの状態で過ごした」と、福島県社協福祉サービス支援課の川村博さんは話します。県社協が県内の避難区域外の施設を対象に実施したアンケートでは、震災に伴う新たな利用者を受け入れたのは障害児者入所施設で62人、救護施設で18人となっています。ショートステイの位置づけで受け入れています。これらの方は震災前には通所事業だけを利用していました。また、川村さんは「就労系事業所での受入れは一人しかなかった。避難先の市町村の日中活動に結び付けようとしても、新しい人間関係になじめなかった」と話します。

 

児童養護施設に特有の被災

県内に児童養護施設は8つ、浜通りには2つです。県社協児童福祉施設部会は、6月10日に県に対して「児童養護施設の安全確保」を要望しました。子どもの生活する施設では除染の徹底、日中活動が制限されているストレスも課題となっています。

 

そして、緊急時に安全な場所に避難できる先を計画的に確保する必要があります。その際、措置された児童を預かる施設として避難の判断を施設長が独自にどこまでしてよいかも課題です。いわき市の「いわき育英舎」は今回の震災で県内の須賀川市に施設ごと避難しましたが、児童相談所も被災していたため、自らの判断で避難することも覚悟した状況がありました。こうしたことをふまえて部会では、施設における避難マニュアルの作成をすすめています。

 

被災施設の情報発信を県社協が支援

物資が不足した被災当初、被災した施設が足りない物資は何かを外部に発信する手段が課題となりました。県社協では、各施設に連絡を取り、食料品、日用品、介護用品など、施設ごとに不足している物資への支援をホームページで呼びかけました。物資を届けてくれる方が直接、施設に連絡をとる方式で、被災施設の情報発信を県社協が集約しました。

 

長期的かつ深刻な課題 ~福祉人材の確保

福島県内の福祉人材の確保は深刻な状況です。震災前に0.5倍程度だった有効求人倍率は2倍近くにまではねあがりました。震災だけでなく原発事故の影響が大きく、職員の離職とともに、新たな職員の確保が困難となっています。

 

現場を支える若い世代の確保は不可欠です。除染と安全の基準を徹底し、安心できる職場づくりを早急にすすめることが、福島の福祉にとって大きな課題となっています。

 


 

取材先
名称
(社福)福島県社会福祉協議会 福祉サービス支援課
概要
(社福)福島県社会福祉協議会
http://www.fukushimakenshakyo.or.jp/
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