(社福)照治福祉会 摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園
早朝保育の被災、翌日以降の保育 そして、子どものためにも必要な親へのケア
掲載日:2019年1月9日
大阪府/ 平成30年12月現在

右から

社会福祉法人照治福祉会理事長・摂津峡認定こども園園長 大谷 智光さん

浦堂認定こども園園長 濱崎 格さん

 

 

平成30年6月18日(月)に発生した大阪府北部地震は、午前7時58分という通勤通学の時間帯に起きた地震でした。保育園にとっては、早朝保育の時間。また、月曜日に発生した地震という点では、翌日以降の保育をどうするかも課題となりました。そうした中、災害時の子育て家庭に潜む課題も見えてきました。

 

早朝保育の時間帯、子どもたちは落ち着いて園庭へ避難

大阪府高槻市の「摂津峡認定こども園」では、地震が発生したとき、在園児115人のうち38人の子どもがすでに登園していました。朝の合同保育の時間帯でした。職員は子どもたちに防災頭巾をかぶせ、園庭へと避難させました。

 

社会福祉法人照治福祉会理事長で「摂津峡認定こども園」園長の大谷智光さんは、当日をふり返り、次のように話します。「この時間だから10人の職員がすでに出勤して園内にいた。朝7時から早朝保育を行っており、もう30分早い時間帯に発生していたら、もっと少ない4人の職員だけで子どもを避難させなければならなかった。幸いにも7時45分からの勤務、8時からの勤務の職員がいたのでよかった」と話します。そして、「子どもたちは避難訓練のときと同じように、落ち着いて行動していた。むしろ、大人である私たちの方が、この後どうするか?園舎は使えるのか?お迎えは大丈夫だろうか?と、いろんなことを考えてしまっていた」。

 

そして、同じ法人の照治福祉会が運営する「浦堂認定こども園」では、より多くの子どもが発災時に園内にいました。在園児184人のうち93人の子どもがすでに登園していました。園長の濱﨑格さんは「避難訓練は、園庭に避難するというところまでしかやったことがなかった。その後、園舎に『戻れる場合』、『戻れない場合』というシミュレーションはしたことがなかった」と話します。

 

両園とも、園舎を目視で確認して「大丈夫」と判断できたので、子どもたちを園舎に戻しました。また、幸いなことに、ガス、電気、水道がすべて通じていました(9月の台風では浦堂認定こども園が停電)。同じ高槻市内でも、建物にひびが入った保育園が2~3か所あり、特に震源に近かった市の南部では、発災後、1週間ほどはガスや水道が通じませんでした。他市の保育園では、炊き出しで給食を提供したという事例も残っています。

 

大阪府高槻市北部の山間にある摂津峡認定こども園

 

高槻市北部で摂津峡認定こども園よりも市街地側にある浦堂認定こども園

 

翌日以降、運営を再開すべきかどうかを判断

「摂津峡認定こども園」では、保護者の3分の1ほどは大阪市内へ電車で通勤しています。そのため、地震が発生した時間帯は、すでに電車で移動していた保護者も当然いました。

 

発災から1時間が経った午前9時2分のこと。市から園に連絡がありました。それは「今日は休園して、子どもたちを帰してください」というものでした。これまでも公立保育園については市として災害時に統一した対応を行なわれていましたが、今回の地震発生の当日については民間の認可保育園に対しても、公立保育園と同様に統一した対応を求めることになったようです。

 

そこで、保護者に一斉メールで休園にすることをお知らせしました。その際、「子どもたちは無事です。安心して気を付けてお越しください」と付け加えました。知らせを受け取った保護者たちは続々と子どもを迎えに来ました。地震で電車が運休したので、1時間半かけて歩いて迎えにきた方もいました。「子どもの無事を確認したい」。そんな親としての強い想いが、迎えにきた方々の雰囲気に感じられました。おおむね午前11時にはすべての児童が引き取られました。

 

午後遅くになって、大谷さんと濱崎さんはようやく顔を合わせて今後のことを相談することができました。登園していなかった家庭の安否も確認でき、両園ともガス、電気、水道は維持できていたので、翌日は「協力休園」という形で園児を受入れることにしました。「協力休園」とは、仕事や家庭の事情がある方を優先的に預かり、それ以外に仕事は休めるなど子どもを預けなくても大丈夫な方には家庭での保育に協力いただくというものです。その趣旨は、余震の心配もあるので、できるだけ安全を確保する、また、まだ不安な中なので親子一緒でいることができるのであれば…という意味がありました。夕方には園メールに登録していない保護者に手分けして電話で連絡しました。そのとき、話すことで安心する保護者の様子も感じられました。

 

また、そうした対応と合わせて職員体制も検討しなければなりませんでした。子どものいる職員や家屋の状況により休ませるべき職員は誰かを検討し、翌日の受入れ体制を整えていきました。

 

市からの連絡もあったので、市内の保育園は、発災した6月18日(月)は、公私立とも全ての保育園(認定こども園を含む)が臨時に休園して、すでに登園していた児童の引き渡しを行いました。しかし、翌日以降は、園によって対応が分かれました。

 

公立保育園(認定こども園を含む)は、民間保育園に比べて古い建物も多かったこともあり、翌日の19日(火)と20日(水)とも安全確認、危険箇所等の応急修繕等を行うため全園が休園し、発災から4日目の21日(木)に再開しました。一方、民間保育園(認定こども園を含む)はそれぞれの園で運営が可能かを判断し、その結果、翌日の19日(火)は6園、20日(水)は28園が運営を再開しました。

 

取材先
名称
(社福)照治福祉会 摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園
概要
(社福)照治福祉会 摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園
http://shojifukushikai.jp/
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