(社福)高槻市社会福祉協議会
見えないニーズを支援につなぐ ~「見えにくい災害」と言われた大阪府北部地震~
掲載日:2019年1月9日
大阪府/ 平成30年12月現在

地震に続き、9月には台風21号もあり…

こうして取組んだ666件の活動実績のうち、「破損した屋根瓦の応急処置(=ブルーシートを張ってほしい)」というニーズが238件ありました。それ以外のニーズでは「倒れた家財道具等の片づけ」「崩れたブロック(ガレキ)の整理」などでした。

 

前述の「負けてたまるか大作戦」では、それまではなかなか見えにくかったニーズも災害ボランティアセンターへ上がってきました。山田さんは「例えば、普段はあまり出入りしない部屋の家具が傾いてしまったが、自分では直せない。でも、今すぐ片づけないと困るわけではないというケース。でも、お話をおうかがいすると、『家具が傾いているのを目にすると、地震のことを思い出してしまう…』という不安な気持ちがあることがわかる」と話します。「不安な気持ち」というニーズ。それは、可視化されにくいニーズです。一見、日常生活を取り戻していても、「あれからよう寝られへんねん…」といった気持ち。それらを見つけることは容易ではありません。こうしたケースは特に独居の高齢者などで見られました。

 

また、必ずしも今回の地震によって片付けが必要になったわけではないのだろうなというケース。そんな家の中の状態が見つかることもありました。それらは平時には潜在していたニーズでした。地震を通じてそれが地域の中にあることがようやく見えてくることもありました。

 

屋根にブルーシートを張る作業は、「災害時要援護者名簿に掲載されていた家庭」については自衛隊が対応することになりました。しかし、それ以外のお宅でもニーズが多いことがわかったため、思い切って災害ボランティアセンターでもブルーシート張りに対応することにしました。ただし、高所の作業で危険度が高いため、経験豊富な技術ボランティアの方たちに講習を受けてもらって協力してもらうことにしました。また、講習会を開いて、市内の工務店等に長持ちする張り方を知ってもらいました。

 

こうした活動を経て発災からは半年が経過しましたが、今なお、高槻市内にはまだまだブルーシートを張った家屋が多くみられます。また、今回の地震で小学校のブロック塀が倒壊して児童が亡くなったこともあり、11月には市内の小中学校の全てのブロック塀を撤去することになりました。

 

山田さんは「地震の後、9月4日に関西地方に台風21号が上陸し、被害が広がった家屋もある。災害ボランティアセンターで張ったブルーシートも台風で飛ばされてしまった。数か月もつ張り方を講習してもらったが、そもそも屋根などを修理できる業者が足りず、一部損壊のご家庭は年単位での順番待ちになっている」と話します。

 

高所の作業になる屋根のブルーシート張り

 

ブルーシートを張った家屋の修繕はまだ年単位で時間がかかる見込み

 

市内の小中学校ですすめられているブロック塀の撤去

 

福祉施設と災害ボランティアセンター

高槻市社協では、30年ほど前から社協が事務局を担う「高槻市民間社会福祉施設連絡会」を通じて施設相互の連絡調整を図るとともに、地域に開かれた施設としての取組みを推進してきました。

 

地域福祉課主査の小島博之さんは「69の施設がこの連絡会に参加している。今回の災害では、残念ながら連絡会を通じた施設間での相互支援はできなかった。でも、地震の後は、災害のことを共通の課題として話題に上がるようになっている」と話します。そうした中、被害が少なかった市の北部にある保育所が発災の翌日に「何か自分たちにできることはないか?」と社協の地域福祉課に連絡をくれました。そこで、災害ボランティアセンターへ保育園の職員がお手伝いに来てくれることになりました。山田さんは「支援に来られた方にはボランティアの送迎をお願いした。市外から来てくれていたボランティアが多かったので、土地勘のある地元の施設職員が助けてくれたのは、本当に助かった」と話します。

 

今回の経験を活かし…

高槻市社協地域福祉課ボランティア・市民活動センターの小島英子さんは、「市内にはもともと大学が複数ある。学生やボランティア団体は、それまではそれぞれに活動していたが、今回の災害支援を契機に新しいつながりもできてきた。共通の目的があると、一緒にやりやすい。技術系のボランティアも今回の災害があるまでは接点がなかった」と話します。地域の高齢者自身の災害に対する意識も高まりました。地区福祉委員会等による日ごろの声かけや見守り活動の大切さが災害を経験して改めて確認されました。

 

一方、今回の災害では被害が点在化するゆえに、災害ボランティアセンターを運営しながらも、社協の通常業務を動かしていかなければなりませんでした。高槻市社協では、災害ボランティアセンターを立ち上げてから22人の職員を災害支援業務に投入し、非常勤職員たちが通常業務を運営してくれました。大阪府内の社協からも常時5人ほどが応援に来てくれました。それでも、あまりにもやることが多く、高槻市社協の職員自身がなかなか外に出て支援活動ができない状況でした。そうしたことから、災害時の社協活動に優先順位をつけるBCPを確立することも今後の課題です。

 

 

取材先
名称
(社福)高槻市社会福祉協議会
概要
(社福)高槻市社会福祉協議会
http://ta-city-shakyo.com/
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