社会福祉法人 狛江市社会福祉協議会
子どもたちの学びを地域で支えていく ~狛江市社協による外国人児童生徒の日本語支援の取組み~
掲載日:2024年10月18日

文部科学省によると令和5年度の日本語指導が必要な児童生徒は約6.9万人にのぼり、これ は調査を開始した平成20年度の2倍以上です。このような流れの中、新学習指導要領では「社会に開かれた教育過程」を基本理念に地域と学校の連携・協働が子どもたちの学びの充実につながるとされています。外国人児童生徒の日本語支援を地域の中でも進めるために、社協はどのような関わりができるのでしょうか。保護者を皮切りに地域での活動のうねりを後押しした狛江市市民活動支援センター(こまえくぼ1234。以下「こまえくぼ」という)の取組みを取材しました。

※こまえくぼ1234 狛江市社会福祉協が行政の指定管理で運営を担当しています。

 

社協が地域を誘発 その背景にある思い

こまえくぼに入った「子どもに日本語を教えてほしい」という外国人児童の父親からの相談。この相談をきっかけに市内での日本語支援の必要性を実感した地域福祉課地域総務係の白石さんは、保護者からボランティアを募って日本語支援を開始。その活動が市民主体のものになることをゴールに、当初は社協が先導する形で活動を進めていきました。

 

社協の役割は地域福祉の維持ではなく、地域福祉の推進です。今まさに、こんな困りごとを抱えた子が地域の中にいるということを、保護者をはじめ学校関係者にも知ってもらいたいと思いました」と白石さんは話します。行政サービスだけでは届かない支援が地域にあってほしい。個別支援で終わらせなかった背景には、白石さんをはじめ狛江市社協のこのような思いがありました。

 

スピード感ある活動の背景にあるもの

取材の中で驚いたのは、活動の展開の速さです。最初の相談から約2か月後にはボランティアによる学校での日本語支援を開始。その間、他団体への情報収集、学校・教育委員会との調整、ボランティア募集などの様々な過程があったはずです。「これまで培ってきた学校や教育委員会をはじめとする所管課との関係性があったので、スピーディに進めることができました」とのこと。日々の信頼の積み重ねが活動を後押ししてくれたようです。保護者によるボランティアも口コミなどをきっかけに保護者以外、狛江市民以外にも活動が知れ渡り、徐々に市民主体の活動に移行していきました。

また、様々な機関と関わるなかで、実はそれぞれが外国人児童生徒への日本語支援に対して課題を抱えていることがわかりました。そんな中で市民活動が始まったことも、日本語支援を加速させる要因となりました。それぞれが持つ強みを発揮しながらみんなで外国人児童生徒の学びを保障するには、今起きている課題をキャッチし、時流に合うタイミングでそれぞれをつないでいく社協の役割が大きかったようです。

 

活動を続けていくための形

日本語支援を開始して約9か月後には、市内の半数以上の公立小中学校から依頼がくるようになり、支援の広がりとともに新しい活動(「やさしい日本語翻訳」「ちょこっと通訳」)も生まれていきました。令和6年度から学校での日本語支援は専門の企業に委託され、予算が確保された体系的なものとなりました。市民団体は学校外での日本語支援を担っています。「ときには社協が調整弁となり、市民のみなさんが続けられるよう動くことも我々の役割です」と大山さんは言います。狛江市は全国の市で2番目に面積が小さく地域資源が限られるからか、新しいサービスや仕組みができると依頼が集中することもあるとのこと。そのような狛江市の特性からみても、今の形は市民団体が継続的に日本語支援に関わっていく上で良い形になったと言えるようです。

 

支援をしていく中で見えてきたもの

「日本語支援が必要な市民がいることに対して社協職員として意識しておくべき」と大山さん。これまで日本語が話せない市民と出会っても「こういう人もいるよね」と思いがちで、こんなに外国人児童生徒やその家族への支援が必要だとは思ってもみなかったそうです。令和5年末の在留外国人数は340万人以上と過去最高を更新しています。東京都においても前年末比11.3%増(出入国在留管理庁HPより)となり、今後も増加が予想されます。外国人とともに暮らすことが当たり前になるとともに、彼らが感じる困りごとをともに解決していく力がますます必要になってくると言えます。

 ちなみに以前から学校で行っている「出前授業」において、多文化共生を取り上げることができたそうです。学校で日本語支援を進めている今だからこそテーマにしたいという思いがあったとのこと。福祉教育を通して友達やクラスメイトの多様なバックグラウンドを理解するきっかけが増えていたらいいなと話を伺って思いました。

 

取材を終えて

「活動で関わっている家族が帰国したという話は聞いていません。地域とのつながりができてきて住み続けようと思ってくれているのかもしれません」という白石さんの言葉が印象的でした。ただ日本語を教える・教わる関係でなく、日本文化に触れたり外国文化を伝えたりしながらお互いに知り合う。市民団体の活動はそうした“つながりを楽しむ場”にもなっているそうです。この地域にずっと住み続けたい!この地域が好き!この地域での暮らしが楽しい!そんな気持ちをもった人が増えていってほしいなと感じました。

いつか狛江市内で日本語を学んだ子どもたちが成長し、今度はこの地域で教える立場となり、次の子どもたちの学びを支えていく…そんな未来に思いを馳せる取材となりました。

 

*新しい活動について

①やさしい日本語翻訳…学校の配布物の内容等を、言葉や文の長さに配慮した分かりやす

 い日本語を使用して保護者に伝える活動

②ちょこっと通訳…日本語支援希望者が活動開始前に最低限必要となる日時や場所の情報

等を、在宅ボランティアが支援希望者に電話で伝える活動

(取材日:令和6年9月18日)

【参考資料】

出入国在留管理庁.「令和5年度末現在における在留外国人数について」R6.3.22

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html

 文部科学省.「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果」R6.8.8

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421569_00006.htm

取材先
名称
社会福祉法人 狛江市社会福祉協議会
概要
社会福祉法人 狛江市社会福祉協議会
https://welfare.komae.org/
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