社会福祉法人清瀬市社会福祉協議会
地域の関係団体とつくる子どもたちの居場所 ~大学生・保育園・民生児童委員・社協のつながり~
掲載日:2024年6月27日

あらまし

  • 地域には社会福祉法人や福祉関係団体、民生児童委員、学生などさまざまな団体や人々がいます。社会福祉法人のネットワークが立ち上がっている区市町村も多くなってきました。
  • そんななか今回は近隣の大学生から持ち込まれた提案から地域の関係者にも声をかけて居場所づくりをおこなった清瀬市社会福祉協議会のお話を伺いました。

 

(左から)清瀬市社会福祉協議会 福祉総務課 地域福祉係員、奥山課長、新井事務局長、富田係長

 

きっかけは大学のゼミ生から持ち込まれた相談

清瀬市の野塩地域にある「のしお一丁目保育園」では、月2回16時半~18時までの夕方の時間に気になる家庭の小学生の居場所事業「きこりぐま」を実施しています。この居場所ができたきっかけは、清瀬市社会福祉協議会に日本社会事業大学の学生たちが持ち込んできた居場所づくりの提案でした。

この学生たちは大学の先生の調査結果をもとに、ゼミの授業のなかで清瀬市内の4地域に子どもの居場所をつくることを目指して、令和3年5月に清瀬市社協を訪れました。はじめは子ども食堂のような居場所をイメージしていた学生たちでしたが、当時はコロナ禍でもあり、人が集まる居場所で食を提供することがまだ難しいと感じられる時期でした。そのため、相談を受けた清瀬市社協地域福祉係は、別地域ではすでにある子ども食堂とつなぐなどの助言を行いましたが、野塩地域には資源が少なく、小学生の登下校を見守る活動をしているグループにつながるのはどうかと提案を行ったものの、居場所づくりを目指している学生たちにはあまり響かなかったそうです。そのため、居場所を行う場所を探すことになりました。そのなかで野塩地域にある保育園が卒園児の集まりで借りている近隣の自治会集会場を有料で貸してもらえることが分かりました。しかし学生たちが話し合いをするために借りても賃料がかかってしまうため、無償で話し合いができる場所を探していた時に、近くにあるのしお一丁目保育園へ声をかけたことがのしお一丁目保育園との出会いでした。

のしお一丁目保育園で行う学生たちの話し合いには保育園の先生も入っていただきました。その話し合いで先生方に子どもの居場所の重要性が伝わり、「居場所自体も保育園でやらないか」と先生から提案をいただいたことで「きこりぐま」の居場所づくりが進み始めました。

 

保育園を会場とした「気になる家庭の子どもがありのまま過ごせる居場所」として

居場所づくりの話し合いには、清瀬市社協から民生児童委員にも声をかけ入ってもらいました。ほかにも子ども家庭支援センターやスクールソーシャルワーカーに説明するなどを経て、令和4年7月に子どもの居場所「きこりぐま」が始まりました。

はじめは保育園を卒園した子どもたちのなかで、子どもだけで夕方の時間を過ごすのではないか、親御さんが疲れているのではないかという気になる家庭の子どもに、保育園の先生から声をかけて居場所に来てもらうところからスタートしました。その後子どもたちが友達を連れてきたり、近くを歩いている様子の気になる子どもに声かけることもありました。
現在「きこりぐま」に来ている子どもたちは小学校低学年を中心に7~8名です。子どもたちは宿題をする、大学生たちと遊ぶ、部屋のなかを走り回る等、やりたいことを自由にやりながら過ごしています。危険なことでない限り「○○をしなさい・やめなさい」という声かけは行わず「ありのまま」の子どもたちの姿を大切にしています。運営スタッフは発案の日本社会事業大学の学生たち、また話し合いに入ってもらった民生児童委員が担っています。清瀬市社協はスタッフ会議に参加する、フードバンクからおやつを提供する等の側面支援を行っています。学生たちが行事保険を申込みに来た時に様子を聞いたり、社協に実習生が来た際には居場所を見学に行くこともあるそうです。また保育園の先生方も活動している日にはお茶やおもちゃを持ってきてくれるなど気にかけてくれています。

 

地域の関係団体・関係者がかかわりあうことで

この居場所づくりを行うなかで、「のしお一丁目保育園の存在が大きかった」と地域福祉係の富田係長は話します。はじめは学生たちの話し合いの場所をお借りするだけの予定が、今では保育園が子どもたちの受付をしてくれる等主体的にかかわってくれています。これは清瀬市内の社会福祉法人のネットワークである清瀬市社会福祉法人社会貢献事業協議会をつうじ、ネットワークでだけでなく個々の社会福祉法人でも地域公益に関する活動を行いたいという意識を保育園側が持ってくれていたからではないかと感じています。また、地域に身近な保育園に学生たちが出入りすることで、保育園に関心をもってほしいという思いもあったそうです。

そして、この保育園と現在スタッフとしてかかわってくれている民生児童委員さんははじめは顔が見える関係ではなく、この事業をとおしてつながりました。地域の関係者がつながることで、支援の幅がひろがったこともよかったことのひとつだと語ります。

清瀬市社協としても、社協の事務所がある地域とは少し離れた野塩地域で、保育園や民生児童委員、また最初に相談した自治会の会長等と地域の子どもたちの課題を共有し、この居場所が立ち上げたことで資源開発につながったといいます。子どもたちが「きこりぐま」で安心して楽しそうに過ごしているのを見て、この場の必要性を感じています。

 

これからも地域を支えつづけていくために

「きこりぐま」は自由に過ごす居場所となりましたが、子ども食堂や大人が見守る場などニーズに応じて必要とされる居場所は変わってくるはずです。清瀬市社協では地域福祉コーディネーターを令和5年度から配置していますが、現在1名の配置となっています。地域にあわせたニーズをキャッチするために今後人数を増やしていきたいと考えていますが、簡単なことではありません。あわせて人材育成の課題も懸念されます。また「きこりぐま」は現在のところ親御さんの了承をとれた子どもたちが来ていますが、親御さんとの連絡がうまくいかない家庭など、つながりきれていない子どもたちへの支援も考えていく必要があると富田係長は話します。今回のような実践をかさねながら、地域の関係団体と力をあわせながら、中学校卒業など支援が途切れやすいタイミングでもつながり続けられるよう、教育関係者等とも一緒に取り組んでいけるようになっていきたいと今後の展望をもたれていました。

 

(取材日:令和6年2月5日)

※取組みの内容及びご紹介している皆様の部署・肩書きは取材当時のものです。

 

取材先
名称
社会福祉法人清瀬市社会福祉協議会
概要
社会福祉法人清瀬市社会福祉協議会http://www.kiyose-f.net
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