社会福祉法人 大田区社会福祉協議会
15名の地域福祉コーディネーターを配置し、区の多機関協働事業の単位となる4つの基本圏域ごとに社会福祉法人のネットワークの活動等とも連携 ―大田区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2024年6月28日

Ⅱ 地域福祉コーディネーターの活動実績の可視化

1 地域福祉コーディネーターが行う「個別支援」と「地域支援」

 

大田区社協では、『地域福祉コーディネーター活動報告書』を作成し、地域福祉コーディネーターの活動を可視化しています。そこでは、「個別支援」の統計と「地域支援」の統計を分けて記載しています。例えば「個別支援」では生活困窮、精神疾患や病気、家族関係の相談のほかに、ゴミ屋敷や8050問題、ペット問題、不登校の問題等、分野を問わずさまざまな相談を受けられることを紹介しています。また、「地域支援」では、子ども食堂の立ち上げ支援や地域の話し合いの場づくり、買い物難民地域での移動支援等の支援を紹介しています。この二つの支援について、実際には地域福祉コーディネーターは一体的な支援と捉えて取り組んでいますが、地域住民等にわかりやすく見えるように工夫して分けています。その分け方は、地域福祉コーディネーターの主観の部分もありますが、ボランティアをしたいという相談でも、個人の継続的な相談については個別支援、地域の居場所に関するボランティアであれば地域支援に分けるなど、地域福祉コーディネーター自身がどちらに重きを置いているかを大切にしています。また、「個別支援」の分析では、個人のケースを取り上げるのではなく、「困りごと」に注目して分析を行っています。令和4年度の報告書では、複数の困りごとが絡まりあっている方が8割を超えています。このような複数の困りごとをもつ方への支援として、訪問や相談窓口への同行を行い、「これまでどこにも相談したことのない方の85%が地域福祉コーディネーターの相談をきっかけに相談機関や地域の活動につながりました」と報告されています。

「地域支援」では、情報提供や他団体へのつなぎ等の単発の支援ではなく、継続的な支援を行ったケースを分析しています。活動内容について、令和4年度の報告書では「電話」が1,716件、「訪問」が1,810件とほぼ同数の活動になっていましたが、令和5年度の上半期時点では「訪問」での支援が活動内容の約70%を占めており、地域福祉コーディネーターが地域に出向いて活動を行うことがより活発化しています。

 

 

2 「参加支援」への取組み

令和4年度報告書では、「地域支援」でかかわった個別の相談のうち、27名に「参加支援を行った」と報告されています。ひきこもりがちな方を地域の居場所につなげた支援、不登校で外出が難しいお子さんに得意なアクセサリーづくりを依頼し、地域のお子さんにお渡しするなどの支援が具体例として挙げられています。そのほかにも「ほほえみごはん事業」(=ひとり親家庭への食支援と見守り活動を通じて地域の方々とのつながりをつくることを目的としている事業)の利用者がボランティアを行う側にまわるなど、支えたり支えられたりする関係性をつくっていたり、切手ボランティアを通じて年齢や病気に関係なく誰もが活躍できる地域の場をつくっているなど、積極的に参加支援を行っています。

令和4年度の報告書のタイトルにもあるように孤独・孤立することのない誰もが豊かに暮らせる地域をめざして地域福祉コーディネーターが既存の制度では難しいニーズにも、ご本人の想いと地域の居場所をつなげることで新たな役割を生み出すなど、社会とのつながりづくりに積極的に取り組んでいます。

 

3 記録のとり方

大田区社協では事務局内でサイボウズを使用しており、地域福祉コーディネーター同士も主にサイボウズを使用してコミュニケーションをとっています。

また、記録の作成については、行政が重層的支援体制整備事業の記録についてカナミックを使用することになっているため同じく使用しています。ただし、それをボランティアセンター等の別部署では使用できないこともあり、あわせてエクセルでも集計を行っています。今後は社協全体での共有をめざし、キントーンの導入も検討中です。

 

4 地域住民と地域福祉コーディネーターの活動を共有するために

このような地域福祉コーディネーターの取組みについて、活動報告書を作成するだけでなく、1年間の取組みを報告し、区民と共有する場として年に1回「地域福祉コーディネーター等実践報告会」を行っています。この報告会は自治会の方、民生委員、地域活動団体、社会福祉法人職員等関係者だけでなく地域住民なら誰でも参加することができ、また、行政職員の参加もあります。地域住民に地域課題を「我が事」として捉えてもらえるよう、地域福祉コーディネーターだけが報告するのではなく、地域住民と一緒に報告することにも取り組んでいます。地域住民の方に伝えることを第一に考え、専門用語は使わず、わかりやすい表現で報告することを心がけています。

 

取材先
名称
社会福祉法人 大田区社会福祉協議会
概要
社会福祉法人 大田区社会福祉協議会
https://www.ota-shakyo.jp
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