Ⅲ 「重層的支援体制整備事業」と大田区社協の取組み
1 大田区社協がめざすのは、相談支援~参加支援~地域づくりのサイクル
大田区社協の地域福祉コーディネーターは、重層的支援体制整備事業では「参加支援事業」と「地域づくり支援事業」を受託していますが、実際には地域福祉コーディネーターの活動には「個別支援」の相談も増えています。地域福祉コーディネーターや社会福祉法人協議会などによる取組みも「包括的相談支援事業」や「多機関協働事業」との関わりが大きくなってくると考えられます。
令和5年度の上半期は地域福祉コーディネーターに相談のあった96ケースのうち、「相談のきっかけ」は「食料支援」が30件(31%)と最も多く、「社協内部から」も20件(21%)、「アウトリーチ先」も13件(14%)とみられます。
また、ケースの7割に当たる67ケースに「孤立している」という状況がみられました。「地域からの孤立」「家族からの孤立」が多く、合わせると約半数の方が近しい人や場所で孤立しています。
困りごとを複数抱えている方は令和4年度と同様の8割ですが、4年度よりも一人あたり0.74個の困りごとの重なりが増えており、より課題が複雑化・複合化している状況がうかがえます。「困りごと」の内容では、「経済的困窮」が21%と最も多く、次いで「状況や課題の整理」が14%、「家族関係」が12%、「就労」が12%、「食料」が10%、「住居」が8%と続きます。
なんらかの資源につないだケースは74ケースとなっていますが、つなぎ先が「公的機関」では「生活福祉課」が22%と最も多く、「JOBOTA」が14%、「地域包括支援センター」が12%、「社協内部」が12%、「保健所」が8%と続きます。つなぎ先が「地域の資源」では、「地域活動団体」がいずれも72%で、その半分は「居場所」に関するもの、「民生委員」が15%となっています。
また、令和5年度上半期に相談のあった96ケースのうち、「参加支援」を行っているケースは3割にあたる29件。令和4年はこの割合が13%だったので、その割合は高まっています。「参加支援」の内容では「活動参加(地域)」が32%と最も多く、「就労支援」も23%と多くみられます。重層的支援体制整備事業の「多機関協働プラン」につないだのは3件ですが、「参加支援プランの作成」を行ったものはまだなく、どのような流れでプランを作成するかは今後の課題といえます。「参加支援」をすすめていくにあたっては、社協の地域福祉コーディネーターは一人ひとりに応じたオーダーメイドによる支援が必要と考えています、社会とのつながりを回復していくうえで重視しているのは「役割の付与」です。出かける場所があることが社会参加とは限らず、その人自身が何らかの役割をもつことができることが大切と考えています。
令和5年度上半期の「地域支援」の活動件数を地区別にみると、4つの地区のうち、昨年に地域福祉コーディネーターの人事異動が多かった地区が今年度は活動が倍増し、今年度に人事異動が多かった地区では逆に活動が減少する傾向がみられました。このことからも地域福祉コーディネーターの活動には引き継ぎやチームづくりに一定の時間も必要なことがうかがえます。連携する関係者では「住民」「非営利団体」と直接関わる件数が増えている。重層的支援体制整備事業における「地域づくり支援」では、これまでに取り組んできた、地域の課題を共有し合う「プラットフォームづくり」を強化していく予定です。
包括的支援体制を整備するための手法の一つである重層的支援体制整備事業が大田区で実施される中、大田区社協では、その柱である「相談支援」「参加支援」「地域づくり」の3つの支援が途切れないよう接着剤となり、リング状に発展するようなネットワーク化をしていく役割をめざします。
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