社会福祉法人 調布市社会福祉協議会
積極的なアウトリーチと個別相談を地域づくりにつなげる取組み。8圏域における地域福祉コーディネーター事業を中心に、各分野の専門性を活かす。―調布市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2024年6月28日

Ⅱ 重層的支援体制整備事業の実施状況

(1)重層的支援体制整備事業実施前の取組み

 調布市では、平成30年度から令和2年度に国のモデル事業である「地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業」の「地域力強化推進事業」と「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」を実施しています。

 地域力強化事業では、地域福祉コーディネーターによるアウトリーチに力を入れて取組みました。また、地域福祉コーディネーターの具体的な取組み事例としては、制度の狭間であるひきこもりの方への支援として、ひきこもり家族会、当事者会、女子会の立ち上げなどがあります。子ども食堂のネットワーク化のように、圏域内で対応を終わらせずに市域全体につなげる取組みもすすめました。多機関の協働による包括的支援体制構築事業では、圏域別専門職ネットワーク会議を開催しました。圏域別専門職ネットワーク会議は、地域福祉推進会議や地域福祉計画に必要性があげられている会議です。圏域内の専門職の顔の見える関係をつくり、円滑な連携体制の構築のために、8つの圏域ごとに地域福祉コーディネーターが開催しています。地域福祉コーディネーターの周知にもなり、地域からあがってきた制度の狭間のケースなどを共有することで、各機関において幅のある支援が期待できるようになりました。

 

 相談支援包括化推進会議は調布市主催の会議です。行政と民間の相談支援 のセクションが集まり、年に数回定例で開催してきました。管理職級による推進会議(本会議)と係長級による部会から成り立っています。以前から開催されていた会議ですが、今後は、重層的支援体制整備事業の支援会議、重層的支援会議としても開催されることになりました。

重層的支援体制整備事業の実施に向けて、調布市と調布市社協の間では、毎月の定例会や地域福祉推進会議、相談支援包括化推進会議開催時などに打合せを重ねてきました。また、調布市社協内の取組みとして、相談事業の部署を集めて、市の福祉総務課による重層的支援体制整備事業に関する研修会を実施しました。

 

(2)調布市の重層的支援体制整備事業の各事業の特徴

 調布市社協は、重層的支援体制整備事業の5つの事業すべてを受託しています。それぞれ既存の事業を発展させて実施しています。

 

① 相談支援包括化推進会議と多機関協働事業

 調布市では、重層的支援体制整備事業実施前から定例で開催していた「相談支援包括化推進会議」を残し、その機能を活かして多機関協働事業の会議としました。管理職級による本会議と係長級による部会がありますが、令和5年度は7月に合同で開催し、重層的支援体制整備事業の事業説明を行いました。10月の会議は、定例会議の委員ではなくケースに関わるメンバーを集め、重層的支援体制整備事業の支援会議と重層的支援会議に位置づけて、それぞれ1件ずつケースを検討しました。ケース検討は部会で行い、本会議は支援会議の報告と重層的支援会議のプランの承認の場としています。令和6年2月の部会も支援会議として開催し、3月の本会議に報告をします。

 相談支援包括化推進会議は、今後も重層的支援体制整備事業の会議としてだけではなく、これまで通り定例の会議としても開催します。支援会議は、今のところ随時開催ではなく、この定例会議の中で開催することになっています。ケースが出てきたタイミングで開催できるほうが望ましいとも考えられますが、 

調布市内では、カンファレンスの開催のために関係機関に声をかけやすい状況になっているので、緊急に検討する必要があるケースについては、重層的支援体制整備事業ではない会議で対応をしています。それでも、支援会議には、通常のカンファレンスには参加しない機関も集まり、さまざまな視点を持った方の意見をもらうことができるので、複雑化・複合化した課題は支援会議で検討できるといいと言います。なお、重層的支援会議は随時開催となっています。

 調布市社協は多機関協働事業を受託しており、令和5年度において、支援会議は市が主催し、重層的支援会議は調布市社協が主催して実施しています。また、両方の会議とも、市と社協が協力して開催しています。

 

国のモデル事業「地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業」の「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」で開催してきた「圏域別専門職ネットワーク会議」は、調布市社協の地域福祉コーディネーターが主催で、必要に応じて開催しています。

 

② 包括的相談支援事業

 既存の事業である地域包括支援センターの運営(高齢者支援室)、障害者相談支援事業(障害福祉課)、利用者支援事業【基本型】(子ども政策課)、保育コンシェルジュ(保育課)、ゆりかご調布事業(健康推進課)、調布ライフサポート(生活福祉課)が位置づけられています。主な取組み内容は、包括的な相談の受け止め、多機関協働事業へのつなぎ、多機関協働事業による継続的な支援が行われている際の包括的相談支援事業との連携、多機関協働事業による支援終結時の包括的相談支援事業へのつなぎもどしです。調布市社協が実施している事業の中では、地域福祉コーディネーター事業、調布ライフサポート(生活困窮者自立支援事業)、障害者地域活動支援センタードルチェ、こころの健康支援センター、子ども若者総合相談事業「ここあ」にて、包括的相談支援を行います。

 

③ 地域づくり事業(地域づくりに向けた支援事業)

 既存の事業である市の高齢者支援室の介護予防普及啓発事業、地域リハビリテーション活動支援事業、10の筋力トレーニング自主グループ化支援、生活支援体制整備事業、障害者福祉課の地域活動支援センター事業、子ども政策課の子ども家庭支援センターすこやか、プレイセンターちょうふ・せんがわ、児童青少年課の子育てひろば事業(連携型)、市の福祉総務課の地域づくり事業(地域福祉コーディネーター事業)、地域福祉ファシリテーター養成講座が位置づけられています。主な取組み内容は、世代や属性を超えて交流できる場や居場所の整備、個別の活動や人のコーディネート、多分野がつながるプラットフォームの展開です。調布市社協が実施している事業の中では、地域福祉コーディネーター事業による地域づくり支援、生活支援コーディネーターによる地域づくり支援、障害者地域活動支援センタードルチェによる居場所、こころの健康支援センターによるプログラム、子ども若者総合相談事業「ここあ」による居場所・学習支援を地域づくりなどが該当します。

 地域福祉ファシリテーター養成講座は、三鷹市・小金井市・武蔵野市・調布市の4市の行政と社会福祉協議会が近隣の大学と開催している講座で、地域活動を企画・コーディネートする地域福祉の担い手創出を目指しています。また令和5年度より、講座修了生のフォローアップの位置づけで、修了生が社協職員と一緒に、地域向けの勉強会の企画運営、講師選定及び打合せ、チラシ作り、当日のファシリテート等を行い、講座で学んだことの実践と地域福祉コーディネーターの働きかけの視点を体験する機会として実施しています。

今後の地域づくり事業は、地縁による取組みと「ひきこもり」や「ひとり親」のようなテーマ別の取組みの両方をすすめていくことや企業、郷土博物館、住宅、環境、教育など福祉以外の部署と連携し、インフォーマルな資源が福祉とつながっていくことが期待されます。

 

④ 参加支援事業

 地域福祉コーディネーター事業の中で実施します。主な取組み内容は、資源開拓・マッチング、定着支援・フォローアップ、地域における福祉サービスとの連携、生活支援コーディネーターや市民活動支援センター、こころの健康支援センター、子ども・若者総合支援事業「ここあ」との連携などです。

 多機関協働事業及び参加支援事業におけるプランを通して、対象者の社会参加におけるニーズを丁寧に聞き取り、既存の地域資源へのつなぎや既存の地域資源の機能拡張、新たな地域資源の創出に向けて、積極的なアウトリーチを通して、地域づくりに寄与する個人や団体、取組み主体と関係づくりを行っています。また日頃の地域福祉コーディネーターや生活支援コーディネーター、ボランティアコーディネーターの連携による地域内の活動支援(地域づくり)、こころの健康支援センターや子ども・若者総合支援事業「ここあ」等とも個別ニーズ・地域ニーズの共有、マッチングを行うことで、参加支援先の充実につなげられるように進めています。

 

⑤アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

 地域福祉コーディネーター事業の中で実施します。主な取組み内容は、支援関係機関等との連携を通じた情報収集、事前調整・関係性構築に向けた支援・同行支援、地域包括支援センターや地域支え合い推進員との連携などです。複雑化・複合化した課題は、窓口で待っていても相談には来ません。地域福祉コーディネーターは、これまでも積極的なアウトリーチを重視してきましたが、これからもどんどん必要な場所に出向いて支援を行います。また、支援が必要な方のアウトリーチだけでなく、地域の課題をコーディネーターにつないでくれる人とつながるためのアウトリーチも行っています。

 

(4)今後の展望

 調布市の重層的支援体制整備事業は、地域福祉コーディネーター事業をはじめとした、これまで調布市社協が取り組んできたことを活用して実施しています。

 本事業の実績報告の調整はこれからです。例えば、地域福祉コーディネーター事業としての参加支援は、1つのケースのために実施するのではなく、地域づくりの延長の中で行っています。以前から社協が取り組んできたことも含めての評価となるよう、市と課題を共有し、実績の考え方を整理していく必要があります。

 これまで調布市社協が取り組んできたことを積み重ねていくとともに、さらに社協内部での本事業の理解を深めて、各部署が専門性活かして、地域福祉コーディネーターと一緒に地域づくりに取り組めるといいと感じています。

 

  • 【冒頭写真】
  • (後列左から)地域福祉コーディネーター 中村竜さん/地域福祉コーディネーター  目黒雄輝さん/地域福祉コーディネーター 三浦雅史さん
  • (前列左から)地域福祉コーディネーター 長谷川紀江さん/地域福祉コーディネーター 柴垣涼子さん/地域福祉コーディネーター 武田侑香里さん/地域福祉コーディネーター 乙黒隆一さん

 

(ヒアリング日:令和6年2月16日)

※取組みの内容及びご紹介している皆様の部署・肩書きは取材当時のものです。

取材先
名称
社会福祉法人 調布市社会福祉協議会
概要
社会福祉法人 調布市社会福祉協議会
https://www.ccsw.or.jp
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