株式会社Wellsideランドリー 代表取締役 山田 麻理子さん
ビジネスで地域課題を解決する、みんなが「助けられ上手」な社会になればいい
掲載日:2025年5月13日
2025年5月号 くらし今ひと

 

株式会社Wellsideランドリー 代表取締役 山田 麻理子さん
「Wellsideランドリー」を運営。幼い頃から本や漫画が大好きで、

ランドリー内に置く本の選定にも活かされている。

 

あらまし

  • 「Wellside」とは「井戸端」という意味。その名のとおり、誰でも気軽に立ち寄れ、地域のコミュニティとしての役割を担うコインランドリーの発起人である山田麻理子さんにお話を伺いました。

 

育児でコインランドリーの魅力を発見  

地元大阪から上京して夫と出会い、そのまま東京の北区で暮らしています。そのため、地縁がない状態で子育てをスタートしました。いわゆる「ワンオペ育児」で困っていたときにコインランドリーを使い、その便利さに気づきました。また、普段の家事では何とも思わないのに、重い洗濯物を持ってコインランドリーに行ってくれる時は夫がかっこよく見えたり(笑)して、だんだんとハマっていきました。

 

その後、親との同居を始めたこともあり、子どもが寝た後に夫と二人で深夜のコインランドリー巡りをするのが趣味になりました。深夜だとオーナーさんに会うことはないのですが、おしゃれに特化したお店や置いてある雑誌のチョイスが面白いお店など、お店ごとに色があることに気づきました。

 

「コミュニティビジネス」×「コインランドリー」が実現するまで  

通ううちに、「いつか自分もコインランドリーを運営したい」と思うようになり、「ビジネス」「独立」など調べるうちに「コミュニティビジネス」という言葉に出会いました。

 

コミュニティが生まれるようなコインランドリーをつくり他の人にも使ってもらいたいと考えたときに、人とつながる可能性があるコインランドリーは「コミュニティビジネス」の要素があるのではと思い、今のかたちへとつながりました。  

 

私は「自分と同じ40歳代の女性は人に頼るのが下手だな」と感じていて、家電を取り入れるなどのライフハックよりも、何かに頼るという意味ではコインランドリーは一番ハードルの低いもの、という思いがあります。コインランドリーが洗濯を手伝ってくれるから“私の時間”が手に入る。コインランドリーは人を助けられるサービスだと思っています。時間が30分あると家ではつい他の家事をしてしまうけれど、コインランドリーではその間に手帳を書いて自分の気持ちを整理したり、スマホで動画を見たり、いい息抜きの時間になります。  

 

その後、地域の方々の協力も得て応募した北区の「ビジネスプランコンテスト」で「Wellsideランドリー」が受賞しました。次男が保育園に入園できなかったことをきっかけに北区を出ようかと考えたのですが、どこに行っても同じかもしれないと一度立ち止まって、子育て関連の説明会に参加しました。そこでは区が提供する小学生の放課後の居場所支援や、同じ子育て中の方が始めた子ども食堂があることを知り、制度として魅力的に感じました。その子ども食堂を支援しているお店が商店街にあったということもあり、商店街に店舗を出したくて紹介してもらったのが今の店舗です。

 

もともとはカフェとして使われていた関係で販売窓口や台所があり、そこを上手く利用したくてレンタルスペースを設けました。勉強会やPTAの集まりなどに使ってもらったりしています。近くの中学校の体操服の取次店としても場を活用しています。将来的には、何か美味しいものを提供できるようにしたいです。ただ、私は家事が苦手なので、誰か料理が得意な人が来てくれたらいいなと思い、そのためにつながりをひろげるような活動をしているところです。すでにこの付近に2軒あるけど、コインランドリーが大好きなので、ここをコインランドリー商店街にしたいんです。

 

実は「ビジネスプランコンテスト」を受賞したタイミングで大病を患い、それをきっかけに「今私がいなくなったら子どもたちに縁のある人がいないな」と気がついて、それからは縁づくりに必死でした。「自分がいなくなっても子どもが生きていける社会」が実は取組みの裏テーマだったりします。

 

これからも「居ないけど居る」を大切に  

最終的には女性向けのシェアハウス、おばあちゃんだけのシェアハウスをつくりたいです。1階にコインランドリーがあって、洗濯物をたたむサービスも提供できるようなイメージです。

 

育児を経験して「最後に助け合えるのは女性同士なのでは」と感じましたし、統計的には女性の方が長生きなので、旦那さんに先立たれ、その後残された女性同士で集まったら楽しいんじゃないかなと。ほかにも近くの団地にあった薬局の配達サービスをヒントに、散歩ぐらいの速度で動くロボットに洗濯物を乗せて高齢の方と一緒に歩いて帰るようなことができないかなど、アイデアはいろいろ浮かんでいます。

 

周りからも期待していただいていると感じたのは、近くの団地に住んでいる方から「うちの方でもやってよ!」と声を掛けられた時です。まだ先の話ですが大きな団地をカバーできるようになったらなと思っています。

 

これまでの地域活動を振り返って、周りの応援なしでは今はなかったと思います。ビジネスとしてやることで私から提案できることもあるので、うまくいかないこともあるけれど、まだまだここから広めていきたいと思っています。私は常駐はしていませんが、オーナーとして、お店に来てくれた人に「あなたが大切だよ」という空気が伝わるような場所をめざしています。

取材先
名称
株式会社Wellsideランドリー 代表取締役 山田 麻理子さん
概要
Wellsideランドリー
https://wellsidelaundry.com/
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