豊島区居住支援協議会
官民の密な連携体制で、安心して住み続けられる地域へ
NEW 掲載日:2025年6月27日
2025年6月号 連載

 

 

 

としまNPO推進協議会 柳田 好史さん、豊島区都市整備部住宅・マンション課 佐々木 枝里子さん、住宅・都市問題研究所 吉岡 祐代さん、まち処計画室 小口 優子さん/(後列左から)豊島区福祉部福祉総務課入居相談グループ 山本 康介さん、豊島区都市整備部住宅・マンション課 戸田 圭亮さん、豊島区福祉部福祉総務課入居相談グループ 玉井 俊行さん

 

 

あらまし

  • 住宅の確保が難しい住宅確保要配慮者に対し、地方公共団体、居住支援団体、不動産関係団体等で構成され、それぞれが連携しながら住まいの支援を行う居住支援協議会(以下、協議会)。今号では、東京都内の中でも2番目に早い2012年に協議会を立ち上げ、今年で14年目となる豊島区居住支援協議会の取組みを取材しました。

 

相談窓口を福祉部に移管  

民間の賃貸アパートやマンションに暮らす単身高齢者の割合と、空き家率が23区で最も高い豊島区。空き家の解消と居住支援への活用を目的に豊島区居住支援協議会が設立されました。協議会の事務局は、豊島区から住宅・マンション課と福祉総務課、NPO法人、住宅と都市問題の専門家として住宅政策コンサルタントの三者共同で運営しています(図)。豊島区で地域活動を支援してきた実績のあるNPO法人が中間支援組織として加わることで、事務局へ直接寄せられる住まいの相談にも柔軟に対応できるのがメリットのひとつです。

 

図  豊島区居住支援協議会の概要

 

協議会の設立当初を振り返り、豊島区住宅・マンション課の戸田圭亮さんは「当初、区の入居相談に関する窓口は庁内の住宅課にありましたが、業務を行ううちに入居前だけでなく、入居後の生活まで見据えた福祉的な支援が必要なケースが増えていきました」と話します。そして、2021年に区の相談窓口を福祉部の福祉総務課に移し、区と協議会の入居相談の窓口を一本化しました。住まいの相談や公営住宅の申し込みは福祉総務課、不動産事業者、オーナーからの物件活用の相談は住宅・マンション課が対応しています。入居相談窓口は庁内の福祉総合フロアにあるので、住まいの相談に加え福祉的な相談にもワンストップで対応できるのが特徴です。

 

事務局では毎月会議を行い、テーマ別のワーキングも発足するなどスムーズな運営体制を築いています。また、豊島区で地域活動を支援してきた実績のあるNPO法人が加わることで、協議会へ直接寄せられる住まいの相談も柔軟に対応でき、相談者にとっても相談のハードルが下がるのもメリットです。

 

支援団体との連携体制  

庁内の相談窓口や協議会に寄せられた相談は、内容に応じて居住支援を行う団体へつないでいます。協議会では、居住支援に取り組む区内外のNPO法人や民間業者等に働きかけ、協力団体として登録してもらう登録制度を設けています。事務局メンバーで中間支援組織の、としまNPO推進協議会代表理事の柳田好史さんは「現在、登録団体は17団体で、あえて登録制度をとり“ゆるやかな連携”というスタンスで協力体制を築いています」と説明します。としまNPO推進協議会に加わるまち処計画室の小口優子さんは「高齢者、障害者、低所得者などさまざまな分野で支援に携わる団体に登録いただき、多様なニーズへの幅広い対応が可能になっています」と話します。

 

相談者への切れ目のない支援体制を築くには、支援団体同士の連携も欠かせません。協議会では、居住支援団体同士の情報共有や連携体制強化のために交流会や意見交換会を実施しています。入居相談窓口を担当する豊島区福祉部福祉総務課の玉井俊行さんは「圧倒的に単身高齢者からの相談が多い。今のところ、居住地区を問わないならほぼすべてのケースで住まいの確保が可能になっています。民生委員やコミュニティソーシャルワーカー(CSW)へ必要に応じてつなぎ、入居後も安心して暮らすためのサポートも行っています」と手ごたえを話してくれました。

 

“居住支援”への理解促進のために  

協議会では、国の「住宅セーフティネット制度」に先駆けて2013年から豊島区独自のポータルサイト「としま居住支援バンク」を運営。これは、空き家を福祉的な用途で活用したい不動産事業者やオーナーが物件を登録でき、住まいを探している人向けに物件を検索できるシステムです。また、住まいを提供する不動産事業者やオーナーを対象に、居住支援制度のしくみや理解促進のための「居住支援セミナー」を年に1回行っています。

 

空き家を福祉的な用途で活用したいオーナーと、活用事業者とのマッチング、改修にかかわる費用の助成などを行う区の空き家利活用事業とも連携し、登録団体の空き家利活用事業者への登録の促進も積極的に行っています。

 

2022年に作成した「としま居住支援ガイドブック」を2024年に改訂。協議会や「としま居住支援バンク」の説明、登録団体による居住支援サービスの一覧表、これまでの居住支援活動で蓄積されたさまざまな心配事に対する解決策などが一冊にまとまっています。

 

住まいに困っている方や居住支援団体、不動産事業者やオーナー向けにも参考になる内容になっていて、居住支援の普及啓発活動もすすめているところです。戸田さんは「現在、『としま居住支援バンク』の空き家登録数が15戸となかなか伸びていかないのが現状。居住支援の制度や居住支援協議会を知らないというオーナーもいらっしゃって、まだまだ理解の促進が足りないなと痛感しています。不動産事業者やオーナーにも、協議会としてどう支援できるか引き続き検討したい」と今後の課題を話します。

 

住まいに困る人たちの一番の味方でありたい

玉井さんは「協議会の取組みを通じて、住宅と福祉の垣根を超えてどう協働していくかということを考える第一歩になりました。まずはお互いの分野をさらに理解し、スムーズな連携体制を築くためのしくみづくりを考えていきたい」と話してくれました。住宅政策コンサルタントで住宅・都市問題研究所の吉岡祐代さんは「住宅の専門家として、制度などの細かい部分に対応できることが、私が協議会に加わる意義だと思っています。住まいの支援をこれからも続けていけたら」と話します。

 

最後に柳田さんは「住むところがなければ人は生きていけません。住まいの確保だけでなく、安心して住み続けられるためのサポートを検討していくことも協議会の重要な役割です。特に高齢者の方々は、『こんなことで相談していいのだろうか』『相談してもどうせダメだろう』と思っている方が多い。どうか気軽に相談してほしいです。これからも住まいに困っている方々の一番の味方になれるよう、支援を続けていきたいです」と語ります。

 

誰もが安心して地域で暮らし続けるために、豊島区居住支援協議会はこれからも、住宅分野と福祉分野の両面からさまざまな支援の輪を広げていきます。

取材先
名称
豊島区居住支援協議会
概要
豊島区居住支援協議会
https://kyoju-shien-toshima.com/
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