社会福祉法人 荒川区社会福祉協議会
荒川区ひきこもり支援事業・居場所づくり事業 ごろリンク ~取り組みの紹介~
NEW 掲載日:2025年7月2日

あらまし

  • 荒川区内では、かねてよりひきこもりに関する家族会や、様々な生きづらさを抱えた方々の当事者会が活動してきました。荒川区社協では、“ふれあい粋(いき)・活(いき)サロン”という社会参加や交流、見守り合い、支え合い、孤立の防止、困りごとの発見や相談ができる場として住民の方々が運営する居場所やサロン活動などを、地域福祉コーディネーターが支援しています。サロンや居場所に「つなぐ」、「つくる」、「つたえる」をコンセプトに地域活動を展開するなかで、ひきこもり支援については、荒川区と協働して居場所づくりに取り組んでいます。ここでは、荒川区社協が区から受託している居場所づくり事業“ごろリンク”を紹介します。

 

「ごろリンク」がはじまるきっかけ

荒川区が力をいれている事業の一つに、“ひきこもり支援事業・居場所づくり事業”があります。区の福祉部生活支援課自立支援係に、ひきこもり支援事業として当事者や家族支援の相談窓口である“あらかわひきこもり支援ステーション”が設置されたころ、居場所づくり事業に関しては社協にお願いしたいと令和4年の後半に区から依頼がありました。そのころ社協では、地域福祉活動計画「第4期あらかわ粋(いき)・活(いき)計画(令和5年度~9年度)」において、今後の重層的支援体制整備事業の実施に向けた柱の一つとして、ひきこもり支援を掲げていたところでした。

“ひきこもり支援事業・居場所づくり事業”は荒川区の事業であり、基本的には区民のためのものという想定がありました。しかし、当事者側の視点に立つと、「知り合いに遭うのではないか」といった不安やプレッシャーがあると考え、区外の方も利用できるように区と社協で話し合いを進めました。『社協には、もともと居場所づくりをはじめるためのベースがあった』と荒川区社協の三宅さん。区から依頼を受けて間もない令和5年4月から、居場所づくり事業“ごろリンク”をスタートさせます。家族会や当事者会のみなさんに、どのような居場所が良いかを聞き、「夜間がいい」「駅に近いところがいい」「週末がいい」「強制のないところがいい」など、たくさんの意見を取り入れながら立ち上げました。実際に当事者のみなさんが、動けない日、動きたくない日を「今日はごろーんしている」という表現をされていたため、その「ごろーん」という言葉と、いろいろな人とつながれる「リンク」を掛け合わせて、“ごろリンク”という名称になりました。毎月第二土曜日の夜に定期開催しています。

 

「ごろリンク」ってどんなところ?

『何かしてもいいし、何もしなくてもいい。最初からいてもいいし、遅れて参加してもいい。早く帰ってもいいし、最後までいてもいい。ルールがないようなルールを設けているので、自由度高くやっています』と三宅さん。会議室や和室に座ったり、横になれる空間をつくってごろんと過ごす「懇談会」をはじめ、座談会や講演会などを企画・運営しているのは、荒川区社協の地域福祉コーディネーターです。ごろリンクの参加者は、当事者や元当事者、発達障害や精神障害を持った方などで、年齢層も様々です。初年度(令和5年度)の延べ参加者数は約210名となっており、毎回参加される方から、新規参加者を含め活動内容によって参加する方、区外からの参加者も多くいます。お互いを深く理解しているわけではないため、参加者間でトラブルが生じることもあります。その際は、過度に介入せず、必要なタイミングで声掛けを行うなど、常に役割分担をしながら全体をサポートしています。また、生活のアドバイスなどの個別相談にも応じ、相談先を紹介したりしています。

活動内容のひとつ“調理実習”

 ごろリンクでは年に2回、調理実習を実施しています。簡単すぎず、みんなで作れて達成感が得られるメニューが考えられており、過去には餃子作りを行いました。調理実習には、いくつもの工程があります。食材の買い出し、調理の下準備。メインの調理作業だけでなく、配膳、みんなでの食事、そして後片付け。『調理はいろいろな生活動作にもつながります。こうした経験が就労につながったりと次への一歩になれば…』と三宅さんは言います。なかには、包丁を使ったことがない方もいますが、調理経験のある元当事者の方を中心に、役割を分担をしながら進められていきます。

取材させていただいた日は、おでん作りの日。地域福祉コーディネーターが付き添いながら、近くのお店までおでんの材料の買い出しに出掛けます。はじめにタイムスケジュールをみんなで確認し、手洗い、消毒を済ませ、エプロン、ビニール手袋を装着して準備万端。テーブルいっぱいに並べられた具材を、みんなで分担しながら調理を進めていきます。“包丁で作業している人の後ろを通らない”などの注意事項を守りながら、自分のペースで作業を進める様子、お互いに教えあう様子がみられます。そして、牛スジや魚肉ソーセージも入った「ごろリンク特製の具だくさん!豪華なおでん」が完成しました。作ったおでんをみんなで囲んで食べること。そして最後のあと片付けまでの一つひとつの工程を、参加者同士で協力して行いました。

元当事者の方の割合が多いですが、またいつか当事者に戻ってしまう可能性もある。「見ているだけでもいいよ」というように逃げ道を用意しながらも、“みんなで支えあえる”ことを大事にする空間がそこには広がっていました。

 

課題と今後の展望

 ごろリンクは事業開始から2年目を迎え、今年度も延べ170名近くの参加者がいます。『こうした居場所を必要としている方に情報を届ける広報の向上が課題。今後は“何をきっかけに一歩を動かせたのか”といったリカバリーストーリーが聞ける機会を設けられたら』と三宅さん。「自分ももしかしたら頑張れるかな」と、“自立への自信がつけられる”居場所づくりが目指されていました。

(取材日:令和7年1月11日)

取材先
名称
社会福祉法人 荒川区社会福祉協議会
概要
https://www.arakawa-shakyo.or.jp/
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