「中野みんなのスペースIrys」ボランティアスタッフ かなでさん
Irysでの活動のほか、大学院でも臨床心理学分野で
性的マイノリティに関するテーマを研究している。
また、Irysでの活動をきっかけに他団体でも
性的マイノリティの居場所事業のボランティアに参加している。
あらまし
- 性的マイノリティ当事者やそうかもしれないと感じる若者が主に集まる居場所で、学生ボランティアスタッフとして活動するかなでさんに、活動に至るきっかけや社会への想いについてお話を伺いました。
大学で権利についての学びに出会い、当事者意識に気づいた
地方出身ということもあり、高校生まではジェンダーやセクシュアリティの知識を得られる場が全くなく、考えたこともありませんでした。反対に、上京して入った大学はジェンダー論などの授業が充実していて、そうした学びが当たり前に保障され、人目も気にしなくてよいような環境でした。最初に女性の人権や戦時性暴力に関する授業を受けたとき、「人権」そのものの存在やそれが侵害されている環境があること、そうした環境が構造的なもので、訴え出てよいものだということを初めて強く感じました。授業では大学のジェンダー・セクシュアリティセンターも紹介され、学生スタッフがそこを訪れる人の話を聞くなどの活動をしていると知り、自分にも何かできるのではと思いました。そんなときにボランティアサイトで見つけて応募したのが「中野みんなのスペースIrys(アイリス)」のスタッフでした。
そのように積極的に動いたのは、ジェンダーや人権について学ぶうちに自分の中に共感するところや当事者意識があることに気づき、このことを考え続けていきたいと感じたからだと思います。
「困っている人を助ける」ではない。互いが互いの支えになる場
Irysは、メインターゲットを「中野近郊に住んでいる、性的マイノリティ当事者やそうかもしれないと感じる中高生」としつつも、参加の際に年齢や地域による制限はありません。「お互いのあり方を尊重しよう」「言いたくないことは言わなくていい」といったグラウンドルールを守りながら、スタッフとおしゃべりをしたり、本を読んだりお菓子を食べたりと自由に過ごせるオープンデーを偶数月末の土曜日に開いています。活動頻度は高くありませんが、ゆるやかなつながりだからこそ、普段の人間関係では言えないことを言いやすい良さもあります。スタッフや、想いを共有できる仲間と会えるセーフティスペースとしてなるべく長くあり続けたいと思っています。そのために、スタッフ自身も燃え尽きず、Irysを居場所にできることを大切にしていて、季節イベントの企画もスタッフがやりたいことを軸に考えるなど工夫をしています。
集まったみんなでその年のやりたいことを考えたり。
夏には扇子づくりを楽しみました!
活動の中で参加者の方のお話や悩みを聞くことがありますが、ボランティアは「与える」立場ではない、「困っている人を助ける、教える」意識ではやりたくない、と私は考えています。Irysのスタッフと参加者の関係も固定的なものではなく、何とか日々を生きている個人の姿を参加者の方に見せてもらい、こちらの気持ちが救われることもよくあるのです。
弱い立場に置かれた人に、真っ先に支援が届く社会に
Irysが中高生に焦点を当てているのは、性に関するアイデンティティの自覚が生まれやすい一方で、自分に必要な情報や居場所にアクセスしづらい年齢だからです。他にも、性的マイノリティであることに加えて障害を伴っている、家族を頼るしかないなど、交差的な抑圧を受けている人、弱い立場に置かれた人がいます。そうした人への支援が何よりも先に届く社会であってほしいと願っています。
現在は大学院で臨床心理学を専攻し、卒業論文から一貫して性的マイノリティに関するテーマを研究しています。Irysで活動することで「こうした場に来る人たちに研究成果を還元したい」という明確なモチベーションが保てています。日本の臨床心理学分野で性的マイノリティの存在が想定されていることはまだとても少なく、知識がない医師やカウンセラーもいます。こうした状況を改善するために例えば海外の状況をまとめるなど、今後も研究をさらに深めつつ、Irysのために尽力し続けたいです。
スペースには性的マイノリティについての本やフリーペーパーも
https://www.instagram.com/minnnano_irys/
