あらまし
- 東京都内62区市町村には9町村に11の島があります。そのひとつ、御蔵島の人口は約300人。竹芝桟橋から客船で、または調布飛行場から三宅島を経由するか羽田空港から八丈島を経由して飛行機とヘリコプターで行くことができます。「東京都内にあるものがない、東京都内にないものがある、そのどちらも魅力です」と教えてくれたのは、今回取材をした御蔵島社協の江川幸(ゆ)希(き)識(のり)事務局長です。事務局長の経歴を伺いながら島暮らしの実態をお聞きしました。
事務局長に就任、そして移住にいたるまで
海外での国際協力関係の仕事を経て日本にもどり、介護職に就いた江川さん。未経験の仕事に奮闘しながらも経験を積んでいくなかで、「頑張りすぎてしまったんだと思います。」と振り返ります。海外にいたときの環境との違いにもやもや、そしてうずうずしていたタイミングで御蔵島社協の事務局長の求人募集があり、これだ!と思い応募、そして移住を決めたそうです。令和6年5月から事務局長として勤務しています。
村の人々は「つかず離れずのほどよい距離感で見守ってくださっています。放置されているとは感じないし、困ったことがあったら助けてくれますね。」とのこと。「何か用事を済ませるときも東京都内に行くこともあるからか、島だから住民同士の距離が近いというわけでもないのかもしれないです。」と感じているとのことでした。
御蔵島で働いて感じる“らしさ”
事務局長に着任されてもうすぐ1年。法人の運営に関する多岐にわたる業務をこなしていくことはもちろん、介護職の経験をいかし社協が行う介護(予防)サービスに準ずる事業(訪問介護や配食サービス等)も担当します。「御蔵島村に来る前にも介護職に携わっていましたが分刻みのスケジュールでした。こちらでは時間の余裕ができ一人ひとりに丁寧に対応できているように感じます。」と江川さんはいいます。一緒に働く職員もほとんどが移住者だからか、“御蔵島村の外から見た視点”も持ちながら業務を進めたり、気軽に相談してくれたりと風通しのよい関係性が助かっているとのこと。「余力があるのも魅力だなと思うし、島らしい速度で細く長く続けていくのがいいのかな」と感じているそうです。
「できたらいいな」と思うことはあるけど…
住民からのニーズもあり、できたらいいなと思うことのひとつがショートステイのような事業です。旅客船で約50分(ヘリコプターで約10分)の距離にある三宅島にある特別養護老人ホームではショートステイ事業を行っていますが、島内で同様の事業を持続して実施することができるのか日々悩んでいるそうです。
住民のためにもっとできることがあるかもしれない。とはいえ、既存の事業の安定的な運営も含め、専門性をもった職員不足のため手が回りきらないという状況に歯がゆさもあるようです。専門性をもった求人募集に力を入れるとともに、採用と移住支援は一体的な動きのため御蔵島村役場とも連携して住居の確保もサポートしていきたいとのことでした。併せて、資格取得への支援なども通じて職員一人ひとりがスキルアップしながら働き続けられるような制度づくり、環境づくりにも力を入れていくとのことでした。
平成医療福祉グループの理学療法士が活躍されています!
令和4年の伊豆諸島の利島を皮切りに、令和5年には御蔵島、青ヶ島にも理学療法士が派遣されています。この派遣の取組みは利島村社協の三田貴弘さんが発起人になり始まったとのこと。その経緯を三田さんにお聞きしました。
*note「東京都御蔵島 離島のリハビリ探検記」
*A moment of | 離島プロジェクト
御蔵島:https://youtu.be/mMwyXNp7_jY
利 島:https://youtu.be/J1q2DdMPw
青ヶ島:https://youtu.be/LbbrV05z5tI
御蔵島村で介護保険サービス事業を実施するのは現状難しく、いかに要介護・要支援状態となることを未然に防ぐかがポイントです。そのため、社協が行う事業の積極的な利用の呼びかけや、理学療法士によるリハビリ支援の継続が欠かせません。御蔵島村や診療所、保健師らと協働し、島民同士が助けあい御蔵島で住み続けられる支援を御蔵島社協として継続できることがますます求められているのだと思います。「ないものをうらやむのではなく、あるもので何ができるかを考える」柔軟な発想とその環境を楽しめる心意気がある方で、以下募集内容に合致する方はぜひ御蔵島社協での勤務を考えてみませんか?
取材を終えて…
“無理せず頼れるところは周りに頼りながら、自分の強みを上手に活かしていこう。”職員のみなさんにはこうしたことを日々伝えているそうです。
トライアンドエラーの精神でこれまでの人生の選択をされてきた江川さん。ご自身がいろいろな経験をされてきたからこそ、職員も安心してチャレンジできる土壌があるのだろうと思います。取材を通して江川さんのお人柄に触れ、住民と局長との温かいやりとりの光景が目に浮かびました。今回はオンラインでの取材でしたが、いつか私も御蔵島を訪れてみたいと思いました。
*東京都総務局「東京宝島」内の御蔵島紹介ページ
https://www.t-treasureislands.metro.tokyo.lg.jp/know/mikura/index.html
(取材日:令和7年2月12日)