- 組織概要
◎児童養護施設は、児童福祉法41条に定められた児童福祉施設。保護者の不在や虐待など、保護者からの適切な養育を受けられず、養護を要する児童が、児童相談所の措置により入所する。子どもたちを公的責任下で保護・養育するとともに、子育て家庭を支援する「社会的養護」のしくみに位置づけられた施設の1つ。
◎児童養護施設「二葉むさしが丘学園」は、東京都が運営する都立施設として開設・運営されていたが、2010年に社会福祉法人 二葉保育園に運営が移管。本園の改築、グループホームやファミリーホームの新設を経て現在に至る。
◎本園の建物は、「事務棟」と4つの寮で構成される「児童棟」、地域の方も利用できる体育館や開放的なテラス、広い園庭がある。また、高年齢児の退所に向けた訓練等を行うため、一般的なアパートのようなつくりの「自活訓練室」、親子での生活を体験できる「親子交流室」も備えている。入所児童は、男女別に年齢縦割りのユニットにおいて、個室で生活している。
あらまし
- 児童養護施設「二葉むさしが丘学園」では、社会的養護のニーズを地域に知ってもらう場として「オープンふたば」を2018年にスタートさせました。施設をひらいて地域とつながることへの思いや、これからの児童養護施設に求められていることなどについて伺いました。
失敗も含めて自立しても困らないよう“普通”の生活を支える
児童養護施設に入所している子どもたちの中には、どこかに出かけたりといった特別なことに限らず、1日3食食べることや部屋を掃除したり、毎日入浴したりすることなどの“普通”の生活を経験しておらず、生活に必要なことを知らない子どもが多くいます。また、相手の表情から気持ちを読み取れなったり、人との距離感がうまく取れなかったりするなど、コミュニケーションに課題を抱えた子も以前より多くなっています。自分自身の好きなことを知らず、生きることへの意欲が感じられない子どももいます。
そのため、二葉むさしが丘学園では、子どもたちが生活の中で必要な力を得られるよう、支援しています。自分と他人との区別をつけ人と適切な距離感で関わること、自分の気持ちを知りきちんと伝えることなども、日々の生活で関わる中で教えています。また、ケアニーズの高い子どもが増えている状況の中で、必要に応じて専門的・治療的なトレーニングも行っています。
二葉むさしが丘学園の園庭と園舎の一部
児童養護施設の役割として、まずは施設から実親家族のもとに帰すことを第一に考えていますが、家族のもとに帰ることがかなわない場合、子どもは高校卒業などを機に施設から社会へ自立することになります。在園期間は年々短くなっており、平均5年程度です。小さな頃に児童養護施設に入所した子どもは在園期間が短いですが、中学生くらいになってから入所した子どもは、家庭に戻すことが難しく、施設から社会に出る傾向があります。入所のタイミングによっては受験が目の前ということもありますし、自宅のある生活圏から遠く離れて入所することもあるので、施設から通える高校などの進学先を一緒に考え、受験勉強や入試手続き、進学・就職などを支えていきます。
退所後は自立して生活していかなければなりません。しかし、失敗することを事前に想像できず、退所後に一人暮らしをしていく中で、バランスのよい食事が用意できず不健康になったり、近所の人にゴミの捨て方を注意されたことからゴミを捨てられなくなり、結果的に“汚部屋”になってしまうなど、挫折することもあります。
そのため、実際に退所する前に一人暮らしの生活を体験し、失敗も経験できる環境が必要だと考え、子どもの様子に応じて、施設内の「自活訓練室」を活用します。内部はアパートの一室のようになっており、施設内の移動の導線も他の児童とは分かれており、外部への行き来も別階段でできるため、一人暮らしに近い状況で生活できます。訓練中は1週間単位で、週末に職員と振り返りを行い、最大で1か月ほどの一人暮らし体験をします。特に高校生は、学校が終わった後にアルバイトをすることが多いため、適当になりがちな夕食をどのようにとるかは重要です。忙しいときは、インスタントラーメンにパック野菜を炒めたものをのせるだけでも栄養はとれることなど、生活の知恵のようなことも含めて、必要だと思うことを体験とともに教えています。

子どもたちが暮らすユニットの食堂スペース
社会的養護のニーズを地域に知ってもらう
地域の中にある児童養護施設として、現在は、日常的に地元サークルへ体育館の貸し出しを行ったり、屋外のテラスのようなスペースを近隣住民に自由に利用してもらうなど、地域とのつながりを大切にしています。都から移管を受けた経緯から、運営開始当初は、地域の住民や学校・民生委員などの地域関係者とのつながりが薄い状況がありました。当時、地域支援コーディネーターとして働いていた職員の「地域の方に施設のことを知ってもらいたい」「地域と施設がつながりたい」という思いから、2018年に「オープンカフェふたば」をスタートしました。地域の住民をはじめとする多様な方々に参加してもらい、施設や社会的養護の子どもたちについて広く知ってもらう、出会いと対話の場です。
社会的養護や子どもの問題に取り組むNPO等をゲストに迎え、定期的に開催し、民生委員や青少年対策協議会の方・地域活動をしているNPOの他、里親になることを考えている方や、弁護士・医療関係者なども参加しています。今後は、児童養護施設での仕事に興味のある学生などにも、もっと参加してもらい、社会的養護が必要な子どもたちに対し、自分たちが何をできるのかを考えるきっかけの場にもしたいと思っています。
また、二葉むさしが丘学園としては、結果や成果を見通して地域活動に取り組んでいるというよりは、とにかく場をつくることを意識し、まずは地域とつながるという思いで取り組んでいます。その取組みが地域の方の「誰かのために何かをしたい」というニーズや、持っているスキルを活かすプラットフォームにもなっていくといいと思っています。「誰かのために」の「誰か」を知ってもらうために、施設をひらいて子どもたちの姿や現状、必要と思う支援を伝えていくことが大事だと思います。
以前、つながりのあったバス会社の方に、「福祉施設は、企業や地域に手伝ってもらうこと・支援してもらうことを『申し訳ない』と受け身になる必要はない」と言われた経験があります。現場のニーズとボランティアしたい側のニーズをつなげていくことが施設の役割であり、支援することが社会貢献をする企業にとっても意味がありメリットなんだと言われました。現場にとって必要なことを伝える中で、支援する側もされる側にも、双方にメリットが生まれるという視点は、非常に心に残っていて、今の活動にもつながっています。
実際、こうした地域への取組みをすすめていく中で、意図せず、本来業務に活きるつながりもできています。「オープンカフェふたば」に参加している方などを通じて、地域の方から土地提供の話しをいただき、法人が常々から取り組みたいと考えていたグループホームを開設・運営することができました。また、地域の方の畑で子どもが一緒に畑作業をしたり、地域とのつながりが広がっています。施設を地域にひらいていくことは、理解者を増やし、法人の本来業務にもつながることを実感しています。
世代や施設の種別などを超えて社会資源としてつながる
我々の世代の職員は、児童養護施設は子どもたちにとって「最後の砦」であり、「生活を保障していく場所」だと言われてきました。自分が仕事を続けていく限りはその考えを大事にしたいと思っていますし、これまでにどのような思いや取組みがあって、そのもとに児童養護施設が成り立ってきたかを次の世代の職員に伝えていきたいと思っています。
その一方で、これからの社会の中で、児童養護施設のあり方や役割は変わっていくこともあるのではないでしょうか。国が家庭養育を優先する考えを示す中で、児童養護施設は、よりケアニーズの高い、専門的な治療機能を持つ施設という位置づけに変化していく可能性があると思っています。社会的養護の一つである里親のサポートも、児童養護施設にとって大きな役割です。
2024年4月の改正児童福祉法の施行により、さまざまな支援がシームレスになりました。「22歳年度末まで」という児童養護施設の入所年限はすでに撤廃されています。東京都社会的養育推進計画の見直しもすすめられていますが、今後、どのような支援のあり方が良いのか、児童養護施設だけではなく、乳児院や母子生活支援施設など関連の深い施設や、シェルターや児童養護施設退所後の相談支援を行っているNPOとの連携もより重要となります。
福祉はある意味“隙間産業”です。常に縦割りの制度の隙間をどのように埋めていければよいかと考えていますが、1つの施設・1つの部会だけでできることには限界があると思います。NPO法人など他の主体も含めて、それぞれが貴重な社会の資源であり、お互いにつながるために、東社協にはつなぎ役も期待したいし、そうした存在や役割が求められていると考えています。

施設長の菅原さん
ヒアリング実施概要
- 日 程:2024年9月5日(木) 場 所:児童養護施設 二葉むさしが丘学園
お話を伺った方:施設長 菅原 淳史さん
※本稿は、令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画策定にあたってお話を伺った際のヒアリング記録です。
https://www.futaba-yuka.or.jp/int_musashi/








