- 組織概要
◎東社協の知的発達障害部会は、都民が暮らす都外施設も含め、約500の知的発達障害児者を対象とする施設・事業所が会員となり、児童施設分科会、入所施設分科会、通所施設分科会、地域支援分科会のいずれかの分科会に所属し、活動しています。総会、役員会のもとに経営研究会、利用者支援研究会、専門委員会、特別委員会があり、施設種別や職種・テーマ等に応じた活動を行っています。
◎知的発達障害部会では、事業計画の冒頭に「利用者主体の支援」を重点目標として掲げています。この「利用者主体の支援」を体現する部会活動が「本人部会」であり、また、その活動を支援する「本人部会支援委員会」の活動です。知的発達障害のある当事者本人の声を部会活動や施策提言等に反映させ、社会に発信していくという方針の下、2010年に発足しました。
あらまし
- 東社協の特別委員会として活動を行う「本人部会」。知的障害者本人が委員となり、主体的に活動できることを目的に設置されました。また、「本人部会支援委員会」は、会員施設の施設長や従事者が委員となり、「本人部会」をサポートしています。今回は、「本人部会」「本人部会支援委員会」の取組みから、当事者本人の声を聴き社会へ発信していくことへの意義や、真の‟本人主体”とはどうあるべきかなどについてお話をお聞きしました。
本人が本人らしく。“本人主体”の部会活動をサポート
「本人部会」は特別委員会として部会活動に位置づけられ、知的発達障害のある当事者本人が委員となり、自ら主体的に動き、参加し、主張することを目的としています。また、専門委員会の一つである「本人部会支援委員会」(以下、「支援委員会」)は、「本人部会」が真に障害のある当事者本人が主体となって活動できるよう、サポートする委員会です。会員施設の施設長や従事者が委員となり、年10回、第3土曜日に開催される本人部会の定例会議の運営サポートや、本人部会が企画する行事や活動の実施に向けた支援、部会総会や「東京大集会※」などのイベントで行われる、本人部会からの意見表明のサポートなどを行っています。
本人部会のメンバー(以下、「本人委員」)は、自宅やグループホーム・入所施設で生活している方、日中は企業で就労している方、就労継続B型事業所や生活介護事業所を利用している方など、暮らしの場も日中の過ごし方なども多様です。毎回の定例会議には15名ほどの本人委員が参加していますが、話すことが好きな方、意思表示が苦手な方、その場にいることで満足感を得られる方など、参加の目的も異なるさまざまな方が集まり、情報交換や交流をしています。支援委員会の委員(以下、「支援委員」)は、そうした一人ひとりの参加のスタイルやペースを尊重し、会議では次第や議事録の作成、議題の細かな中身の説明などを担い、場の調整役として「話していいんだ」という雰囲気づくりを大切にしながら、「本人部会は自分たちの活動だ」という実感を本人委員に持ってもらえるよう、本人の主体的な参加をサポートしています。言葉にすることが難しい方もいますが、それでも何らかの形で意思表示ができるよう、例えば写真付きの資料の中から指差しで選択してもらったり、「○×」で回答できるようにしたりと、多様な参加のあり方を工夫しています。
コロナ禍では本人部会の活動を休止していましたが、コロナ禍があけ、2023年度に活動を再開した際には、本人委員みんなで久しぶりに集まれることをとても喜びました。そして、本人部会としてやりたいことを考え、意見を出し合いながら、バスで外出するイベントを自分たちで企画しました。支援委員も本人委員の希望を実現するため、さまざまな手配などをサポートし、楽しく企画を実施することができました。その後、2024年度の取組みを考える場において、本人委員の中から「今年は楽しんでばかりだったが、次は“部会らしい”活動をしたい。まじめな勉強会をしたい」との意見が出ました。「確かにそうだ」という声が多くあがり、みんなの関心の高かった「お金のこと・暮らしのこと」をテーマとした勉強会を実施することが決定しました。支援委員としては、本人部会への参加を重ねる中で本人委員の活動に対する理解が深まり、その結果として、このような発言が出される場に育ってきたのだと考えています。
本人部会の定例会議についても、本人委員同士の付き合いが長くなったこともあり、支援委員が積極的に関与しなくても、ある程度、自分たちですすめていくことができるようになってきました。しかし、声の大きい方の意見だけが反映されそうな場面や、決めるべきことを決める場面など、要所要所でのサポートは必要です。「支援者」と言われる人はともすれば障害のある当事者に対し、考え、迷い、決定する主体は本人であることをつい脇に置いて、物事を先回りして考えがちです。また、障害のある当事者の中には、子どもの頃から“こうした方がいい”というような答えを示されることや、決めてもらうことが当たり前のような環境や雰囲気の中にいたことで、意思表示することに慣れていない方も多くいます。支援委員はそのことを十分に意識し、支援委員の提案が「誘導」につながったり、「最善の答え」と捉えられ、本人委員が考えることを阻害したりしないよう、常に原点の「みんなで話し合って決める」に立ち返ることを大切にしています。
本人委員にとって、家族とも普段利用している施設の職員とも異なる人間関係を持てる本人部会は数少ない“第3の場”です。支援委員から見て、心の潤いを得られる場であり、社会とのつながりを持てる場になっていると感じています。特に、就労している方の多くは社会との関わりが職場内だけに限定されてしまいがちで、本人部会が“戻って来られる場”となり、生活のエネルギーにつながっている様子も見られます。中には、月1回の定例会議をとても楽しみにされ、話したいことが山積みで、集合時間の1時間以上前から会場に来られる方もいます。いろいろな経験を持つメンバーとの交流が、生活の広がりにつながっているようです。また、日頃の生活環境とは離れたところで話を受けとめてくれる支援委員に対し、自分の気持ちや趣味のこと、施設や仕事での出来事など、さまざまなことを遠慮なく話してくれ、いい関係が築けてきたと感じています。そして、支援委員を安心して信用できる存在として認めてくれていると思うからこそ、より一層、本気で向き合い、誠意をもって応えていかなくてはならないと考えています。
意思表出の支援を通じて、本人の声を聴き、改めて自分たちの支援を問う
暮らしの場も生活スタイルもさまざまな当事者の方たちが、自分の経験や考えを発言し、それを支援者や社会と共有していくことには大きな意味や価値があります。支援委員にとって、本人部会の活動を支えることは、意思決定支援における「意思形成支援」や「意思表出支援」を実践することでもあります。
本人部会の活動の大きな柱として、知的発達障害部会の年3回の総会や、毎年開催される「東京大集会」などに登壇し、本人委員自らの思いを意見表明する活動があります。支援委員は、本人委員の話したいことについて一緒に台本づくりをしたり、事前に練習し、緊張を和らげるような働きかけをしたりしています。この取組みを開始した当初は、大勢の人が集まる場で障害のある当事者本人が登壇し話しをするということは、支援者も想像していない場面でした。当初は話せる方はかなり限られていましたが、現在は登壇する方が徐々に増えています。障害特性上の難しさもありますが、こうした場で話せる方が増えてきたのは、発言の機会があり、日頃の活動を通して人前で自分のことを話す経験を積み重ね、力をつけてきたからこそだと感じています。
意見表明と言っても、「社会がこうあるべき」というような問題提起や強い主張をしているわけではありません。“自分のこと”や“いまの自分の暮らし”を知ってもらうような内容であることが多いです。総会等に出席している多くの施設長や職員にとって、本人委員が語る“自分のこと”は、新たな気づきや支援者としての大きな学びになっています。また、「本人の存在や思い・暮らしが確かに見えているか」を問いかけ、支援にあたって本人を置き去りにしないことを改めて意識させてくれる機会になっています。
本人が本人らしく参加・活躍する機会を
本人部会への参加のきっかけは、本人部会を知る施設職員に紹介されたり、誘われたりという場合が多く、実際に活動に参加してみて、その場の居心地の良さや主体的に参加することの楽しさを感じた方が継続的に参加しています。本人委員の高齢化が少しずつ進んでいるため、より多くの多世代の方に本人部会に参加してもらいたいと考えていますが、本人部会の存在やその場の雰囲気を知らない支援者が多いのも現実です。会員施設宛に定期的にメンバー募集のお知らせを送っていますが、「うちの利用者には参加は難しいだろう」といった職員の判断により、本人の手元まで届かないことも少なくありません。また、本人に届いたとしても、参加には交通機関を使っての移動なども伴うため、付き添いが手配できず、参加が実現しない場合もあります。
施設の理解がある場合には、社会参加の一環として本人部会への参加をサポートしてくれますが、まだまだ情報が届いておらず、こうした場の必要性が十分に認識されていないと感じます。障害のある当事者本人の社会とのつながりや参加の機会を広げていくために、本人部会のような活動を広げ、意義のある取組みであることを知ってもらうことが必要です。また、同時に、通所していない日の利用者の地域での暮らしに思いを馳せ、‟つながりを広げていく意識”や“地域を見ていく目”をもった職員を増していくことが、本人の暮らしを豊かにしていくことにつながります。
支援委員会では、今後、知的発達障害部会で開催するイベント「心をつなげる福祉マラソン」において、本人委員にボランティアとして参加することを提案しています。障害のある当事者がボランティアとして楽しく関わる姿を見せることで、イベントに参加する会員施設の利用者や職員に、本人部会のことを知ってもらうきっかけになると考えています。また、今後は、医療的ケアが必要な方など、自主的に集まることが難しい方へは訪問するなど、参加の対象を更にひろげていくことも考えています。そうした取組みを通じながら、本人も支援者もともに楽しんでいる姿が、部会活動の中心にあることが当たり前のことになればと思っています。
2023年度の「東京大集会」の発表の中で、本人委員が「障害のある人のことを、社会にもっとよく知ってもらいたいです」「自分のことを知ってもらうために、私たちも、もっと外に出ましょう」「ただ施設やグループホームをつくればよいのではなく、いろいろな人がいるのが当たり前の社会になってほしい」と話しました。これは誰かに言わされたものではなく、本人の心からの思いです。
支援委員会としても、こういった本人の思いを受けとめ共有しながら、これからも真摯に本人と向き合い、いろいろな暮らしや可能性を支えたいと思います。
※「東京大集会」
知的発達障害部会など、障害関連の6団体による実行委員会形式で開催。障害のある都民が住み慣れた地域で充実した人生を送れるよう、また障害児者支援活動に従事する人が誇りを持てる未来に向け、多様な立場からの施策提言を行っている。

左から)本人部会支援委員会 髙橋さん、松下さん
ヒアリング実施概要
- 日 程:2024年9月11日(水) 場 所:東京都社会福祉協議会 第一事務室
お話を伺った方:委員長 松下 功一さん(は~と・ピア2 施設長)
委員 髙橋 加寿子さん(たんぽぽ 施設長)
※本稿は、令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画策定にあたってお話を伺った際のヒアリング記録です。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/chitekisyogai.html








