社会福祉法人 豊島区民社会福祉協議会
予防的な取組みと人とのつながりで孤立しがちな方を支えたい
掲載日:2025年8月22日
令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画P44~46
  • 組織概要
    ◎「地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)」等の実施を通じて把握したニーズや、単身高齢世帯の増加を背景に、高齢者の日常的な見守りや入院入所・賃貸契約等のサポートを行う独自事業「備えてあんしん支援事業『はれやか』」を2024年7月から開始。
    ◎豊島区内を8圏域に分け、各圏域にコミュニティソーシャルワーカー(CSW)を2名ずつ配置(豊島区から受託)。住民が運営に携わる「区民ひろば」を拠点に、住民や町会自治会、民生委員、福祉施設・事業所、団体や企業などと連携して、個別支援と地域づくりを行う。
    ◎「くらし・しごと相談支援センター」として、生活困窮者自立支援事業の自立相談支援事業等を豊島区から受託し、生活困窮者のくらしや住まい、就労等の相談支援を行う。

 

あらまし

  • 65歳以上の高齢者のうち、人口に占める単身世帯が約4割に上る豊島区。こうした単身高齢者に向けて、豊島区民社会福祉協議会では主に3つの支援を行っています。今回は、豊島区民社会福祉協議会が実施する身寄りのない高齢者の不安に応える取組みの概要から、高齢者だけでなく地域とのつながりが弱い若年層や外国籍の方など、誰もが孤立することのない地域づくりに向けた課題などについてお話を伺いました。

 

身寄りのない高齢者の不安に応える、“安心”して地域で暮らし続けられるために

豊島区の単身世帯の割合は全体の6割に及び、とりわけ65歳以上の人口に対する単身世帯は約4割を占めます。民間賃貸住宅で暮らしている単身高齢者も多く、そうした単身高齢世帯等に向けて、豊島区民社会福祉協議会(以下、「豊島区民社協」)では、主に3つの支援に取り組んでいます。福祉サービス権利擁護支援室「サポートとしま」で行う、判断能力の不十分な方(認知症の高齢者や知的発達・精神などの障害のある方等)に対する「地域福祉権利擁護事業」での支援や成年後見制度の利用支援に加え、コロナ禍以降、新たに概ね65歳以上の高齢者を対象とした「豊島区終活あんしんセンター」の運営と「備えてあんしん支援事業『はれやか』」を始めています。

 

「豊島区終活あんしんセンター」は、単身世帯の増加やコロナ禍による不安の増大などを背景に、2021年2月に区から運営を受託した事業です。介護・葬儀・相続など高齢者の終活に関する相談のほか、もしもの時に自分の想いを正しく意思表示できるしくみとしての「終活情報登録事業」の実施、エンディングノート配布等による普及啓発を通じて、区民の悩みや不安を解消し、今後の生活をより豊かにしてもらうことをめざしています。相談窓口には2023年度1年間で800件近くの相談が寄せられ、相談者の半数以上が、いざという時に頼れる親族が身近にいない単身世帯となっています。遺言や相続といった「もしもの時」を見据えた相談を中心に、住まいや身元保証など、その内容は多岐にわたります。遺言や相続などの専門的な内容は、弁護士等への相談の場を設けたり、「頼れる先がなく賃貸契約の更新ができない」「アパート建替え後の引越し先がない」など、住まいに関する相談であれば、居住支援に取り組む団体につないだりと、内容に応じた情報提供や関係機関等の紹介に取り組んでいます。事業実施にあたっては、相談内容が多岐にわたることが想定されたため、関係機関に相談をしながら、関連の知識や情報を増やしてすすめてきました。

 

また、こうした不安や悩みごとに関する相談のほか、「社会や地域に向けて何かやりたい」といった社会参加に関するご本人の声も窓口には寄せられ、ボランティア担当の部署やシルバー人材センターへつなぐなど、「今の生活をより豊かにする」というセンターの設置目的をふまえて対応しています。

 


“安心”して地域で暮らし続けられる、切れ目のない支援へ

これらの事業を通じて見えてきた、単身高齢者をとりまく状況や課題。身寄りはあっても、いざという時に頼れる親族が身近にいない人が多いことや、高齢期の不安、引っ越しや入退院などの状態変化にあわせてフォローしていく必要性が明らかになりました。

 

豊島区民社協では、そうした背景をふまえ、2024年7月から社協の独自事業として「備えてあんしん支援事業『はれやか』」を開始しました。この事業は、単身高齢者が地域で安心して暮らし続けられるように、契約に基づく「もしもの時」のサポートを行うもので、開始にあたっては、区内の弁護士法人とも相談を重ね、事業化に至りました。社協職員による定期的な電話や訪問による見守りを基本に、特に心配されることの多い入退院時の支援、入所時や賃貸住宅契約時の緊急連絡先となることをはじめとしたサポート、葬儀や納骨といった死後の手続きなど、ご本人の意向に沿って必要なサポートを検討。公正証書遺言により遺言執行人を定めた上で、契約を結びます。

 

事業を開始してから約2か月の間に40 件ほどの問い合わせがあり、2件が契約に向け準備中です。これまでの「サポートとしま」の事業に加えて新たな事業を始めたことで、判断能力が不十分となる前段階からの不安に応えることが可能となりました。また、ひきこもりや精神障害のある同居の子に関する将来の不安等の相談も寄せられ、これを「サポートとしま」で受けとめ、必要な支援につなげるなど、“切れ目のない支援”に結びついていることを実感しています。また、これまで地域包括支援センターや福祉サービスを利用する必要がなかった方、利用したことのない方からの相談も多く、「終活」という切り口から、社協として新たな層との接点が生まれています。

 

若者が孤立する前に、地域とのつながりをどう紡いでいくか

高齢者だけでなく、池袋という繁華街をもつ豊島区には、全国から若者が集まり、若年層の単身世帯も多く暮らしています。豊島区民社協が区からの委託で運営する、生活困窮者自立相談支援事業の窓口には、コロナ禍以降、若者からの住まいの困りごとや経済的な困窮状態についての相談が増加しました。継続的な就労が困難で家賃が払えなくなったり、SNSやゲームで知り合った人を頼りに上京したものの、うまくいかずにいきなり困窮状態に陥った方が来られたりします。また、社協の共生社会課に配置されているコミュニティソーシャルワーカーの元にも、若者支援団体を通じて20~50代の制度の狭間にいる状態の方についての相談が寄せられますが、生活保護以外の選択肢やつなぎ先がほとんどないのが現状です。相談者の中にはコミュニケーションに難しさを感じる若者も多く、彼らが相談や支援の窓口にたどり着くまでの関わりや、手続きを丁寧にサポートすることが必要になっています。

 

若者の場合、他の世代と比べて、接点を生み出すことや、関係を切らさずにつながり続けることが難しい状況になることが多いです。学校を卒業すると、意図しなければ人とのつながりが限られてきます。「友達がいない」「友達をつくる場がない」という声は相談者からよく聞きます。学生の時に不登校になり、そのまま仕事に就かずに家にいて、そのまま長い期間が経過し、親が高齢で亡くなってからはじめてその存在がみえてくる。こうした8050問題のようなケースは、近所に住む人からの相談によりわかることが多く、社協だけでは気づくことができません。近所の人は、実は不登校の時点から気づいていることも多く、早い段階からいかに地域との接点を生み出すかが重要になってくるといえます。

 

一方で若者は、社協がこれまで展開してきたような小地域ベースの地域づくりにはなじまない現状もあります。趣味やオンラインを通じてなど、若者のニーズをふまえながら、小地域にとどまらない広域的なつながりの場を生み出していくことが求められます。これは、私たち社協だけではもちろん難しいため、地域の行政や企業、民間のさまざまな団体とともに、どう接点を生み出していくかを一緒に考えていかなければなりません。ボランティアセンターで推進するテーマ型のつながりや、ゆるやかな地域活動といった“多様なつながり方”が広がることで、若者が地域から孤立せず、何かあった時には頼れるような、そんな地域をめざしていきたいと考えています。


福祉が一人ひとりのすぐそばにあり、自分と他者に目を向けられる地域へ

増加する単身世帯だけでなく、区人口の約12%を占める外国籍住民や8050世帯、障害のある子を持つ世帯など、地域には潜在的に孤立しやすい層が存在します。豊島区民社協では、そうした層に対して、これまで地域で活動する団体や関係機関、ボランティアと連携・協働しながら対応をすすめてきました。

 

地域の社会資源と連携した取組みの一例

●NPOや弁護士事務所等と協働し、コロナ禍の特例貸付を利用した外国籍世帯を対象に、フードパントリーの取組みなどを通じて、継続的な関わりを続けている。
● 子どもが環境に左右されることなく、学びの機会をもてる地域をめざして、子どもの学習支援等を行っている団体・機関でネットワークを組み、ボランティアの協力を得ながら、母子世帯などの子どもたちへの対応を行っている。
● 生活困窮自立相談支援窓口を利用する高齢者のうち、同居する子どもがひきこもり状態や無職であったり、そのことで本人の生活が立ち行かなくなっている場合には、生活困窮者自立相談支援窓口に併設されている、ひきこもり相談窓口の相談員と連携しながら対応をすすめている。

 

こうした取組みの一方、まだまだ必要な情報やアプローチが行き届いていなかったり、トラブルとして表出してからその存在や抱える問題が明らかになったりする現状があります。地域で暮らす誰もが孤立することなく、安心して暮らし続けるために、地域関係者と一緒に予防的な取組みもすすめていく必要があると考えています。「終活」の取組みのように、体力や気力が落ちてからではなく、早期から自分のことを考える・決めておくような、予防的な取組みを世代に関係なく当たり前のものにしていくかが課題です。

 

そのためには、誰にでも福祉の情報がすぐそばにある状況を常につくっておくことや、専門職だけでなく、地域住民が周囲の変化に早期に気づき、追い詰められてしまう状態になる前に、その気づきを共有し、何ができるのかを一緒に考えていく地域づくりが重要です。すでに地域の関係者によりすすめられている、サロン活動や居場所づくりの活動等を通じた予防的な取組みに関わりながら、これまで以上に幅広い方々とのつながりの中で、「社協として何ができるのか」を考え続けていきます。

 

豊島区民社協の皆さん

 

ヒアリング実施概要

  • 日 程:2024年9月13日(木)   場 所:豊島区民社会福祉協議会
    お話を伺った方:地域福祉課長 小林 純子さん
            権利擁護支援担当チーフ 天羽 瞬一さん
            権利擁護支援担当チーフ 星野 貴輝さん
            共生社会課長 田中 慎吾さん
            コミュニティソーシャルワーク担当チーフ 宮坂 誠さん 
            自立相談支援担当チーフ 佐藤 浩美さん

※本稿は、令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画策定にあたってお話を伺った際のヒアリング記録です。

取材先
名称
社会福祉法人 豊島区民社会福祉協議会
概要
豊島区民社会福祉協議会
https://toshima-shakyo.or.jp/
タグ
関連特設ページ