- 組織概要
◎2001年12月26日法人設立。東京都町田市で、特別養護老人ホーム2か所を運営するほか、グループホーム、短期入所施設、デイサービスセンター、居宅介護支援事業所、訪問介護、訪問看護、介護予防・日常生活支援総合事業、地域包括支援センターなど、高齢者福祉に関するさまざまな施設・事業所を運営している。
◎また、「地域共生社会事業」として、「共生社会推進室」を設け、法人全体で“地域づくり”に取り組んでいる。
あらまし
- 町田市鶴川地区を拠点に、高齢者に関するさまざまな事業を展開している社会福祉法人 悠々会。悠々会では地域づくりも事業のひとつとして捉え、5年前に「共生社会推進室」を設置。居住支援事業や外出困難者のための送迎サービス、ひとり親家庭を対象とした配食サービスなど、世代や分野を超えた事業に取り組んでいます。社会福祉法人として地域づくりに取り組む想いや今後の展望などについてお話をお伺いしました。
地域のニーズに応えるために
社会福祉法人 悠々会(以下、「悠々会」)は、町田市の小田急線「鶴川」駅近くにあります。現在、主に特別養護老人ホームや地域包括支援センターなどの高齢者福祉施設・事業所を経営しています。悠々会のある町田市では、市内10地区で「地区協議会」が設置されています。地区ごとの特性や資源を活かして、地区の課題解決に自ら主体的に取り組む団体のネットワークです。悠々会をはじめとする鶴川地区の社会福祉法人も「鶴川地区社会福祉法人連絡会」として、鶴川地区協議会の構成員となっています。また、鶴川地区には「鶴川地区社会福祉協議会(以下、「地区社協」)」も組織されています。悠々会の陶山(すやま)慎治理事長は鶴川が“地元”。この地区で生まれ育ち、長年、消防団や民生委員、学校のPTAなど、さまざまな地域活動に携わってきました。そして、鶴川地区協議会や地区社協の立上げや運営にも深く関わっています。「障害の有無に関わらず年をとるなら鶴川・子育てするなら鶴川」を合言葉に、鶴川地区をより住みやすい地域にしようと活動しており、法人としてもこれらの活動に関わる中で、自然と地域の状況やニーズが見えてきます。
鶴川地区協議会が開催する「3水(さんすい)スマイルラウンジ」は、実施から既に10年ほど。毎月第3水曜日に鶴川地区内にある大学のホールを会場として、まなびのひろば、おやこのひろば、くらしのひろば、ボランティアのひろば、囲碁・将棋コーナー、折り紙教室・手芸教室、スマホ何でも相談、無料法務相談といった多様なプログラムを実施しており、地域住民の交流の拠点となっています。高齢福祉・障害福祉・子ども福祉、保健所やNPO法人、ボランティアや生涯学習の団体など、多分野がかかわり、地域住民の相談を受けています。
また、1年ほど前から鶴川地区協議会と地区社協が協力して行う新しい取組みとして、「ハッピーフライデー」を始めました。「ハッピーフライデー」は毎月月末の金曜日に市民センターを会場として、さまざまなテーマでの講座や何でも相談会を実施しています。こちらの取組みも「みんなでつながろう」という思いで始めました。「3水スマイルラウンジ」も「ハッピーフライデー」もイベント終了後に関係者で情報交換会を実施しています。「3水スマイルラウンジ」の情報交換会はオンラインでの会議ですが、地域のキーパーソンを紹介しあったり、多分野が連携して取り組んでいる事例を共有しあったりするなど、関係団体が地域への理解を深めています。
「3水スマイルラウンジ」、「ハッピーフライデー」チラシ
社会福祉法人として“地域づくり”に取り組む体制
悠々会では介護保険を中心とした事業を実施していますが、収入の20%は、介護保険以外の地域づくりなどの事業から得ることを目標としています。“地域づくり”も悠々会の事業のひとつとして内外に捉えてもらいたいと考え、職員には採用時から「大事なステークホルダーは“地域”である」ことを伝えています。地元の人が入所していたり、働いているということは、地域住民みんなが悠々会のことを知っているということ。そのため“今”の悠々会を地域住民に知ってもらい関係をつくることで、地域住民を助けるだけでなく、助けてもらえる存在でもありたいと考えています。
こうした思いから、法人として5年ほど前に「共生社会推進室」を設置しました。設置のきっかけは、理事長が民生委員として活動する中で出会った、住民からの「精神障害のある生活保護を受けている人に、地域から出て行ってもらいたい」という相談でした。そのような排除につながらないよう、住まいに困った方が引っ越してきてその地域に住むところから関わっていけるおせっかいな住まいをつくりたいと思い、「あんしん住宅」の事業実施につながりました。悠々会が居住支援法人となり、住まいに困る方に法人が借り上げた物件を貸し出す事業で、利用者は、見守りシステムや買い物・通院等のサービスも使えるなど、地域で安心して暮らすことができる形です。
“地域づくり”は特別な部署がやることではないことを職員に実感してもらうため、悠々会では全部署の事業計画に「地域貢献・共生社会づくり」という項目を設けています。その部署でできる地域づくりの事業を考えてもらうとともに、事業実施上の制約があるなどして、具体的に地域づくりに取り組みにくい部署は、その部署から見える地域課題から必要な取組みを構想し、共生社会推進室に事業を委託することができるようにもしています。
現在、共生社会推進室では、①「フリーモビリティ(買い物や外出に困っている方を対象とした電気カートによる送迎サービス)」、②ひとり親家庭を対象とした「配食サービス」、③「あんしん住宅」、④地域支援組織の運営を支える「サポート・コーディネート」といった、世代や分野を超えた事業を展開しています。地域に出ていくことで、地域の困りごとやニーズを拾いあげることが悠々会を知ってもらうことにもつながり、将来の利用者確保にもつながっていきます。“地域づくり”を明確に部署名に打ち出したことで、職員への理解促進もすすみました。
また悠々会では、「悠々会ボランティアセンター」も設置しています。もちろん、悠々会の利用者が地域住民と関わることによる、利用者の社会性の向上を目的としていますが、加えて、地域住民の生きがいづくりも目的のひとつに位置づけています。悠々会ボランティアセンターに登録することをはじめの一歩として、鶴川地区協議会のサポーターになったり、町田市社協のボランティアセンターに登録し鶴川地区を越えて活動したりなど、地域活動への“参加”の入口となっています。
悠々会では今後、「共生社会推進センター『みんなの保健室』」の設置も計画しています。地域住民にひらかれた、より身近な相談場所として、また鶴川地区社会福祉法人連絡会の拠点として、さらに地域住民がオンライン診療を受けられる場所にできないかと考えています。『みんなの保健室』へのアクセスは、悠々会がすでに実施しているフリーモビリティを活用して、この場所まで来れば、福祉の専門職や世界中の医師と気軽につながれる居場所としても検討しています。
こうした地域づくりの事業は、なかなか利益が生まれるものではありません。しかし、地域にある社会福祉法人のブランドとして、地域に尽くしていきたいと考えています。そして、第一種社会福祉事業の枠組みだけで考えず、厚生労働省の補助金以外の助成金や寄附も積極的に活用していくことや、持続可能な事業にしていくための利用料設定など、財源も工夫し、黒字経営にもこだわっています。
今後に向けても、あんしん住宅事業のなかで死後事務委任を有料で事業化できないか、高齢者自身がACP(人生会議:自分の将来の医療およびケアについて専門家と話し合い、自分で意思決定する)を考えていく機会がもてないか、ショートステイ事業を活用して、いわゆる「8050」世帯の50代の子ども側の支援ができないかなど、さまざまなアイディアで新たな挑戦を続け、地域課題への取組みを広げていく予定です。
「地域のみんなでつながろう」を広げたい
理事長の陶山さんや共生社会推進室室長の鯨井孝行さんは、このような地域共生社会づくりを行うこと自体が、社会福祉法人の存在意義だと考えています。新しいことに取り組むことも「まずやってみる」を大切にしています。スタートダッシュを切ってみて、無理そうだったら修正する、それでも難しければやめる、ということももちろんあります。悠々会が地域住民に知られていることで、新しい事業にも取り組みやすく、こういう面でも地域との関係ができていると助けられます。また、新しいことを形にしていくときには、“誰と一緒にやっていくか”というキャスティングを重視しています。新しく始める事業が、「何かしたい」と思っている若い人とつながるきっかけになることもあります。
福祉に関わる職員は、制度や分野で自身の業務に制限をかけてしまうこともありますが、ニーズを抱えるすべての人に関わるという視点も必要だと考えています。また、その人のすべてに関わるということも重要です。鯨井さんら、「あんしん住宅」の担当職員は、経済的な課題・仕事・学校・引越しなどさまざまな分野に関わり、本人と一緒に窓口や機関を「たらいまわされる」こともありますが、それが本人を支援するということだと考えています。町田市の行政は、福祉の所管課だけでなく、住宅や交通など、分野を超えた協力体制をとってくれるので、とても助かっています。
悠々会では、これからも社会福祉法人として、ユニバーサルデザインやインクルーシブの視点を大切にした「まちづくり」を担っていく考えです。例えば、再開発をすすめるまちづくりの会議に障害当事者を巻き込んだり、年齢を重ねて車の運転が負担となったヘルパーでも、送迎のしくみをつくり、訪問ヘルパーとして活躍できる環境をつくったり、福祉車両を活用して日中は地域の高齢者の買い物支援、夕方は地域の子ども達の塾や習い事の送迎を行うことなども可能なのではないかと、構想しています。
以前は専業主婦や自営業者など、比較的時間の融通がつきやすい状況の方が、地域のことを考え、地域活動に取り組んでいましたが、現在は会社などで働く人が増えています。地域づくりは、地域住民が主体である必要はありますが、住民に責任を負わせるのではなく、社会福祉法人が後ろ盾となることで、より活動に携わるハードルが下がり、スムーズに活動ができるのではと考えています。
今後、東社協というネットワークの場を活かして、まずは、地域公益活動をやるという手前で、社会福祉法人がつながっていくことを願っています。社会福祉法人同士が連携を取り合い、貴重な福祉人材が働き続けられるような取組みや、福祉の人材バンクができるといいのではないでしょうか。待機児童が減り保育園が少なくなっていくという出来事について、保育分野だけでなく、高齢分野や障害分野でも一緒に考えていきたいです。この「地域のみんなでつながろう」という思いが、他の地域にも広がっていくことを願っています。

左:理事長の陶山さん、右:共生社会推進室・室長の鯨井さん
ヒアリング実施概要
- 日 程:2024年10月10日(木) 場 所:社会福祉法人 悠々会
お話を伺った方:理事長 陶山 慎治さん
共生社会推進室 室長 鯨井 孝行さん
※本稿は、令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画策定にあたってお話を伺った際のヒアリング記録です。
https://www.yuyuen.com/









