- 組織概要
◎1980年1月、京都で「呆け老人をかかえる家族の会」として本部が結成。報道等を通じて全国に共感と活動への機運が広がり、その年のうちに東京でも「つどい」が開催され、同年8月に東京都支部の結成へとつながる。東京都支部を含め全国47都道府県に支部があり、約9,500人の会員が励まし合い、助け合って「認知症になっても安心して暮らせる社会」をめざしている。
◎2024年8月時点で、東京都支部の活動を支える世話人は16人。世話人の全員がボランティア。会員は、認知症の家族や本人、専門職など約380人。
◎東京都支部の事業として、「つどいの開催」「支部報の発行」「電話相談」の3本柱で活動をすすめている。また、認知症への理解を広める啓発活動や行政への要望・提言なども行っている。
あらまし
- 1980年に京都で結成された「認知症の人と家族の会」。「会員のつどい」「支部報」「電話相談」を活動の3本柱として、認知症当事者やその家族への支援、認知症への理解促進のための啓発活動などを行っています。近年、認知症を取り巻く社会状況が刻一刻と変化する中、地域や社会に求められていることは何か。結成の変遷や活動内容に触れながら、「認知症への正しい理解」のために必要なことや、地域や社会への期待などをお聞きしました。
東京都支部の結成と変遷
「認知症の人と家族の会」(以下、「家族の会」)の本部は、1980年1月に京都で結成されました。私たち「東京都支部」も同年8月に結成し、以来、「認知症になっても安心して暮らせる社会」をスローガンに44年間、活動を続けています。
1992年、「家族の会」は国際アルツハイマー病協会に加盟しました。1994年9月に、毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」とすることが制定されましたが、このタイミングで、会の普及活動もスタートを切りました。2004年には国際アルツハイマー病協会の国際会議が日本で開催され、その後、当時の「痴呆症」から「認知症」へと呼び方が変わりました。また、2005年には「認知症を知る1年キャンペーン」があり、こうした流れが、社会の中で認知症のことがより知られるきっかけになったと思います。今日の、認知症の人と家族に対する支援のあり方や考え方は、長年活動を継続しながら私たちが当初から大切にしてきた思いであり、政策などにも反映され、現在では社会にも浸透してきたように思います。
東京都支部の活動を支える「世話人」は現在16人。全員が家族を介護する経験者で、ボランティアです。25年ほど前までは、世話人の多くは専業主婦でしたが、その後少しずつ、社会福祉士・ケアマネジャー等の有資格者やグループホームの立ち上げ経験がある人など、福祉・介護業務に携わっていて、なおかつ介護家族という仲間が増えてきました。ほかにも、「定年退職後にボランティア活動をしたい」と考えて東京都支部の活動に参加している人もいます。そうしたさまざまな経験を生かして、一人ひとりが問題意識を持ちながら、コツコツと活動を続けてきているところです。
会員には、認知症の本人や介護家族、専門職も含まれ、毎年380人前後を推移しています。会員になった当初は親の介護家族だった方が、親を見送られた後もなお、活動を支えてくれたりしています。また、親世代の介護のあとに、配偶者の介護が始まった方がいたりと、長いお付き合いの会員もいます。
ヒアリングの様子
認知症の当事者や家族の声を拾い、社会に伝える活動
東京都支部の活動の3本柱は「つどい」「支部報」「電話相談」です。「会員のつどい」は月に1回、東京ボランティア・市民活動センターの会議室を借りて開催し、毎回10名程が参加されています。介護家族が男女問わず参加され、日頃の悩みを共有する場となっています。また、「オンライン会員のつどい」「本人のつどい」「終末期を考えるつどい」、そして「オレンジカフェ」もそれぞれ隔月に開催しています。
「支部報」は2か月に1回発行しています。つどいに参加できない方にも、つどいの様子や認知症の人やその家族の声を「支部報」で届けることで、自分を重ね合わせたり、気づきを得たりするツールとしても役立てていただいているようです。
「電話相談」は、全国の支部に先駆けて1982年に開設し、2022年までの40年間で33,161件の相談が寄せられています。開始当初から電話相談の内容を記録し、その内容を分析し、10年ごとに報告書を発行しています。また、年に一度、「世界アルツハイマー月間(9月)」の記念講演会の開催や、テーマごとの勉強会をしたりもしています。電話相談の状況を記録することに加え、講演会や勉強会の記録も報告書として残すことで、その時々の認知症を取り巻く社会の変遷や、時代を経ても変わらない考え方をたどることができる貴重な資料となっています。
認知症介護家族の当事者としては、会の活動に参加するまでは「なぜ私が…」という、いわば“被害者意識”で過ごしていたこともありましたが、講演会などで認知症の本人たちが自分の思いについて声を上げ始め、その声を聴くようになったことで「認知症の人はこんな思いでいたのか」と衝撃を受け、本人の思いに至ることの大切さに気がつきました。
そのほかにも、アンケート調査を通じて、介護の困りごとや本人や家族の思いなどを聞き、報告書としてまとめ、関係各所へ届けています。回答には、本人や家族から、たくさんの言葉が綴られています。自分の思いを外に発信する機会がなく、声を聞いてほしい人や溢れ出る思いがたくさんある人がいることが見えました。こうした認知症介護の現状の「生の声」を届け、社会に広く知ってもらいたいと考えています。
認知症基本法の施行と新たな「認知症観」
認知症を取り巻く社会状況の変化としては、2004年の認知症への呼び方の変更のほか、2000年の介護保険制度の創設、また、その後の変遷の中で提唱された地域包括ケアシステムの構築などは、社会のしくみの大きな変化であると思います。また、国の認知症施策として、2012年に「オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)」、2013年に「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」がつくられ、その中の7つの柱において、はじめて「認知症の人やその家族」の支援について触れられました。2014年10月に「日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)」として、国内初の当事者組織が結成されたことも大きな動きでした。そうした社会や制度施策の動きも、多くの、本人や家族などの当事者の会の結成や、活動の後押しにもなったと思います。
そして、2023年6月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」、いわゆる「認知症基本法」が成立し、2024年1月に施行されました。
認知症基本法の基本理念や基本的施策の中には「国民が共生社会の実現の推進のために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深められるようにする」とありますが、この「正しい」とは一体何でしょうか。
私たちの活動を通じて感じていることは、社会の中では、認知症の症状が見られ始めた初期段階での情報が少ないことや、認知症に対する偏見・恐れがまだまだあるということです。認知症と一口に言っても、初期段階の状態と進行段階の状態では大きく違いがあります。それと同時に、環境要因によって症状や進行の程度に大きな差が生じることも、まだまだ知られていないように思います。偏見や恐れを抱くのは、進行した段階の認知症の状態を想像されることが多いこと、そして症状の進行に関する知識や情報が少ないからではないかと思います。
そうしたことから、本人も家族も「認知症であることを認めたくない」という気持ちを持ち、初期の段階で必要な情報や関係機関へつながることを難しくさせています。そして、困り果てた家族がようやく専門職につながる頃には、症状が進行していたり、家族関係が悪くなってしまっていたりということもあります。認知症という言葉の「イメージ」から、本人や家族が変化していく状態を受容しない、拒否するがあまりに、さまざまなことが悪循環につながってしまうこともあるということです。
人は誰しもいつか必ず老いていくように、そして、老いていくと人は足腰が弱ることがあるように、認知機能も低下していくということを理解し、受け入れることが大事だと思います。どれだけ認知症の症状を学んで「正しい知識」を得たとしても、それと「認知症を受け入れる覚悟」を持つことはまた別で、しかし、それこそが重要だと感じています。認知症施策推進基本計画においても、「新しい認知症観」が明記されました。認知症は誰もがなりうる、多くの人に身近なものであり、認知症になっても自分らしく暮らし続けられる社会を実現していくことが求められます。
認知症基本法の施行で、東京都やそれぞれの自治体でも、認知症施策に関する計画の策定がすすんでおり、東京都支部にも、認知症の実態を知る者・家族当事者としての参画など、お声掛けいただくことが増えています。ほかにも、企業や医療機関など、さまざまな方から、協力や連携の話をいただくことがあり、社会全体の関心が高まっていることを感じます。
私たち東京都支部はこれからも、本人も家族も、それぞれの人生をどう「自分らしく」生きられるか、ということを大切に考えていきたいと思っています。そのために、認知症を取り巻く現状を少しでも広く理解してもらえるよう、3本柱の活動を中心に、取り組んでいきたいと思います。

左から、松下さん、大野さん、石黒さん
大野代表は1999年から活動に参加。
「活動に参加したことで社会の状況も自然と
知ることができた」と話します。
ヒアリング実施概要
- 日 程:2024年8月20日(火) 場 所:公益社団法人 認知症の人と家族の会 東京都支部
お話を伺った方:代表 大野 教子さん
副代表 松下 より子さん
世話人 石黒 秀喜さん
※本稿は、令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画策定にあたってお話を伺った際のヒアリング記録です。
https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=375








