東社協 母子福祉部会
オール東京でつくる“母子生活支援施設らしさ”
NEW 掲載日:2025年12月8日
2025年12月号 Focus on!

東社協 母子福祉部会
(左から)副部会長 横井 義広さん(リフレここのえ 施設長)、部会長 齋藤 弘美さん(大洋社 理事長)、副部会長 岡田 薫さん(目黒区みどりハイム 施設長)
(写真  東社協 母子福祉部会)

 

あらまし

  • 東京都社会福祉協議会では、「令和7~11年度 東社協中期計画」において“協働”ですすめる5つの「取組みの柱」を設定しています。
    今号では、取組みの柱Ⅳ「福祉で働く人と支える組織づくり」に位置づけられた、令和7年度の母子福祉部会の重点取組みについてご紹介します。

 

母子生活支援施設は、ひとり親であったり離婚を考えていたりする女性が困りごとを抱えている際に、ひと休みして生活を立て直すために子どもと一緒に入居できる集合住宅型の施設です。施設長や職員と関係団体が集まって母子福祉部会の活動をしています。


母子生活支援施設はDV被害者も多く利用するため秘匿性が高く、積極的な情報発信をしづらい傾向があります。また施設数も都内に32のみで、1法人1施設の法人や自治体の中に1か所のみの施設も多くなっています。そのため、法人内で独自に研修を実施することや他法人の情報を得ることが難しく、職員が悩みやつまずきを抱えやすい環境にあります。そのような中、部会では「人材の確保・育成・定着について、部会に設けたすべての委員会で法人・施設の垣根を越えオール東京で取り組むことで、よい情報をシェアし、それぞれの施設が孤立しないように」というねらいで研修・交流等に取り組んでいます。

 

施設や分野を越えた人材の課題への取組み

研修委員会で実施する育成・定着のための勉強会のほか、従事者会や、心理職などの専門職同士の会議では、職員がグループワークで悩みを共有する時間を設けています。「都内に施設が分散し施設数も少ない中、悩みを話し合って乗り越えていく過程や、それを通じて誇りを持って働ける自分たちのアイデンティティをつくっていくことが、育成・定着に必要です」と副部会長の横井義広さんは話します。また、委員会や部会の活動を順番に各施設の中で行うことで、職員が他施設の状況を知ることができるように工夫されています。「『全施設の施設長が全施設の職員を育てている』という意識を持てたら、東京の母子生活支援施設がレベルアップしていくのでは」と副部会長の岡田薫さんは語ります。採用の面からも、母子生活支援施設が大学の授業で取り上げられることはあまりないため、総務委員会が実施する学生・教員向けの見学会では複数の施設を回れるように工夫しているといいます。


加えて、部会では月1回の施設長会で、児童福祉法改正の背景にある動きなどタイムリーな情報を共有しています。また、より理解を深めるために、乳児部会や児童部会など他の部会と協働で勉強会を開くことも。部会長の齋藤弘美さんは、「母子が地域生活をするうえで女性、障害、保育といった要素がつながっているからこそ、他の部会と一緒に勉強をしたり企画を考えたりしていきたい。職員一人一人がそのつながりを活かす意識を持つことで、孤立防止など地域共生社会に向けて一緒に取り組んでいけます」と話します。

 

「家族支援」を強みに母と子を多面的に支えていく

母子生活支援施設についての適切な情報が社会や行政に行き届かない中、入所に至っていないものの潜在的なニーズを持つ人は少なくないと考えられます。近年、部会では研修委員会で行政職員向けの勉強会を実施するほか、制度施策の面でも単独の施設では発信しづらい要望をあげています。国から母子生活支援施設に対して、DV被害者支援のみならずすべての子育て世帯の支援を求める指針も出されている中、正副部会長の3人は改めてそうした方針を部会として発信し、施設の意味づけ・位置づけをしていく必要性を強調します。

 

そんな正副部会長の皆さんは、改めて施設の存在意義や母子支援のやりがいを次のように語ります。「母子生活支援施設はケアワークだけでなくソーシャルワークの要素も大きいことを学生に知ってもらいたいです」と横井さん。金銭面や就労活動のサポート、子どもが通う学校との連携、さまざまな関係機関との調整や手続きなど、母子の地域生活を支えていく中でソーシャルワークは不可欠です。さらに近年は、施設の多機能化として地域支援も求められており、そのためのコミュニティソーシャルワークも強化されつつあります。


また、親と分離され児童養護施設などで育った子どもからは「親も一緒にサポートして、母子が離れなくてよい環境をつくってほしい」という声も多いといいます。母子生活支援施設では、母親を職員が支え、きょうだいとの関係も含めてサポートができます。他の分野にはない、家族を丸ごと支援していく「家族支援」の考え方を大切にすることで、虐待予防やパーマネンシー※の保障など、さらにできることがあるといいます。

 

齋藤さんは最後に、「母子支援の仕事では人生そのものを考えたり学んだりすることができます。自分も他の人に支えられて生きているからこそ、孤立している人たちが『嬉しい』『美味しい』『楽しい』と思える経験をできたり、未来への希望や夢を持つことのお手伝いができたら、という思いで働いています」と話します。

 

母子福祉部会では、このように母子生活支援施設での業務やさまざまな活動・役割について丁寧に伝えていき、多様な人がやりがいを持って母子支援の仕事に取り組める環境をこれからもつくっていきます。

※ 永続的に安心できる特定の大人とのつながり

取材先
名称
東社協 母子福祉部会
概要
東社協 母子福祉部会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/bosi.html
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