
B型事業所の利用者が働くホテル
下町の情緒が今もなお残る墨田区京島。ここの「キラキラ橘商店街」に、2025年10月、就労継続支援B型事業所「旅のワンダ」とホステル「1つの風景」、多目的スペースを設けた多機能福祉拠点「TACHIBANA TERMINAL」がオープンしました。「福祉を起点に、観光・まち・文化をつなぐ」ことをめざし、障害者施設で宿泊事業を展開しているのが大きな特徴です。きっかけは運営母体である日常福祉合同会社共同代表兼、「旅のワンダ」施設長の堀直人さんがゲストハウスを運営していた経験から。堀さんは宿泊業のタスクとB型事業所の生産活動に親和性があると感じていたそうです。「宿泊業なら利用者に高い工賃が払えるのではと考えたのも一つの理由です。それだけではなく、宿泊業はタイムスケジュール通りにすすむシングルタスクなので訓練がしやすく、かつ希少性も鑑みて、宿泊業をメインにしたB型事業所をつくろうと考えました」と背景を話してくれました。
例えば、身体に障害がある人ならパソコンでの予約管理、人と接することが好きな人はチェックイン業務、ルーチン作業が向いている人は掃除など、利用者が障害の特性に合わせてさまざまな役割を担いながらホステルを運営しています。ホステルは1~4人部屋が各1室の全4室で、週末は予約で埋まるほど好評です。多目的スペースはアート展の開催やイベントの貸し出しなどで地域の人たちにも広くひらかれています。

サービス管理責任者の中村隆幸さんは、「最初は『この作業内容はちょっと難しいかな』と思っていた方でも実際に携わってもらったら、予想以上の対応をしてくれたことがありました。可能性は日々変わっていくし、職員側はそれを見落とさないでいようと思いました」と話します。支援員の高山翔伍さんは、「始まったばかりなので自分たちで場をつくっている感覚があります。そのおかげで利用者の新しい一面を知れますし、利用者の魅力をどう引き出せばいいか考えるきっかけにもなっています」と手ごたえを語ります。支援員の滝大雅さんは「利用者からは『雰囲気がいい』といってもらえています。施設の雰囲気や職員の空気感をいいといってもらえるのはとても嬉しいです」とそれぞれ話します。

福祉のまちづくりをここから発信していく
「TACHIBANA TERMINAL」全体の敷地は400㎡と広大で、現在はその半分ほどしか使用されていません。堀さんは、はじめからすべてが設計された建物にしたくなかったといいます。「利用者にとって安心できる場所でありつつも、望めばいろいろな人と交流ができ、偶然や化学反応を楽しめる場所でありたいと思い、あえて“余白”のある場所を残しています。実はこの場所でクラフトビール工房を作ろうと構想中です。クラフトビールを通じて、ただごちゃまぜになるのではなく、障害のある人たちが自分の意思でいろいろな人と関われるしかけを考えています」と今後の展望を話してくれました。最後に堀さんは「“まち”という全体を見た時、B型事業所だけでは障害がある人の生活を支えきれません。一人ひとりの困り事を見ていって、障害福祉サービスだけではなく、時には福祉の枠にとどまらない、解決のための活動をする。そんな“まちまるごと福祉”の拠点のような存在になりたいですし、それが結果的にまちを良くしていくアプローチになることが理想です」と想いを語ってくれました。
これからも「TACHIBANA TERMINAL」は、地域の福祉を豊かにするための活動を展開していきます。
https://tachibana-terminal.studio.site/








