東社協 特例貸付担当
東京都における緊急小口資金等特例貸付フォローアップ支援事業の“今” ~一人ひとりが安心して暮らせる地域社会の実現をめざして~
NEW 掲載日:2026年3月10日
2026年3月号 NOW

あらまし

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で減収や失業等により生活が困窮した世帯を対象に実施した緊急小口資金等特例貸付(以下、特例貸付)。
    今なお経済的な困窮から抜け出すことができず、償還が困難な借受人に対して必要な支援を行うフォローアップ支援の取組みをすすめています。
    今回は、東京都内の社会福祉協議会におけるフォローアップ支援事業の“今”を紹介します。

 

フォローアップ支援事業実施の背景と内容

2022年10月28日付厚生労働省事務連絡「緊急小口資金等の特例貸付の借受人へのフォローアップ支援について」により、特例貸付の借受人のうち、償還(※1)が困難な借受人や償還が免除された借受人、償還免除申請等の案内に未応答の借受人に対して、必要な支援を行うことが示されました。具体的には、償還猶予(※2)の相談支援、自立相談支援機関をはじめとする関係機関へのつなぎ、アウトリーチによる生活再建に向けた支援等の取組みを行うことが求められています。

 

通知を受けて、東京都社会福祉協議会(以下、 東社協)では、借受人に対して現在の生活状況を把握するための調査票や救済制度の案内等を送付してきました。償還猶予や償還免除につながる人が多くいる一方で、案内にリアクションがなく、償還が滞っている人が存在しています。

 

東社協では、生活再建のための支援が必要な借受人に適切なフォローアップ支援を行うことを目的に、区市町村社会福祉協議会(以下、区市町村社協)向けの「緊急小口資金等特例貸付の借受人へのフォローアップ支援事業実施要綱」を作成しました。

 

区市町村社協では、本実施要綱を基に、全ての地区が実施する「基本事業」と手上げ方式により実施する「任意事業」を行いながら、借受人へのフォローアップ支援を推進しています。

 

区市町村社協におけるフォローアップ支援

区市町村社協の「基本事業」では、相談があった借受人に対して、必要な制度案内や他機関へのつなぎ等を行います。具体的には、償還が難しいといった相談があった借受人に対しての猶予や免除の手続き支援、猶予が適用された人への見守り支援、償還が免除された人を自立相談支援機関につなぐこと等を行っています。

 

「任意事業」では、主に社協側からアプローチするプッシュ型の支援を行いますが、区市町村社協ごとにその対象者や取組み内容は異なります。具体例としては、区市町村社協独自のアンケートの実施、対象別に内容を工夫した手紙や通知の送付。それから、手紙に対してリアクションがない借受人への架電を通じた現状の把握ならびに猶予等の救済制度の案内等が挙げられます。複合的な生活課題を抱えている場合には、自立相談支援機関につなぐこと等により、生活再建に向けた支援を行います。社協内の権利擁護担当や地域福祉コーディネーターと連携して支援にあたっている社協もあります。

 

また、手紙による案内や架電に未応答の借受人に対して、訪問を行っている地区もあります。令和7年度は3つの社協がモデル地区として訪問事業を行いました。実際に借受人と会うことができた件数は多くありませんが、つながりづらい人や、今まで全く反応がなかった人とつながることができた等の効果が挙げられています。

 

これらの取組みをすすめていく中で、今後の区市町村社協におけるフォローアップ支援、とりわけ任意事業では、どういった意図でどの借受人に対してアプローチをしていくのかを考えることが必要となります。そのためにも、日々の相談内容や対応記録等を積み重ねていき、それらを分析していくことが求められています。

 

「特例貸付フォローアップ支援事業情報交換会」の開催

2025年12月12日、各地区におけるフォローアップ支援の実施状況を区市町村社協間で共有し、都内全体のフォローアップ支援の推進を図ることを目的に「令和7年度 特例貸付フォローアップ支援事業 情報交換会」を開催しました。

 

前半は、新宿区、府中市、多摩市の3社協が、取組み内容やフォローアップ支援をすすめるうえで大切にしていること、関係機関との連携等について実践報告を行いました。新宿区社協からは、訪問事業、アンケートの実施、区内の食料支援団体・パントリー実施団体の情報交換会について、府中市社協からは、自立相談支援機関との連携、フォローアップ支援通信、金融ジェロントロジー研究会との業務契約(セミナー・個別相談会の開催)について、多摩市社協からは、架電や手紙の工夫、自立相談支援機関と連携した出張相談会、社協内外の連携について報告がありました。

 

後半は、グループに分かれて、自地区で取り組んでいる内容やフォローアップ支援を行う中で感じたこと等を共有しながら、来年度に向けて取組みの参考やヒントとなる情報交換をしています。

 

当日は31地区の社協から45名の職員が参加。「他地区の取組みを参考にしてみたい」「日頃の悩みや思いを共有することができたのは良い機会だった」等の意見が参加者からは出ていました。本情報交換会は、都内全体に取組みを横展開していくために、来年度も開催を予定しています。

 

 

「フォローアップ支援事業のヒアリングと取組み事例集」の発行

東社協では、8か所の区市町村社協にフォローアップ支援の取組み状況のヒアリングを行いました。ヒアリングでは、各社協の特徴的な取組みや取り組む上での思い等を聞き取ることができ、 東社協としても来年度のフォローアップ支援の方向性を考える良い機会となりました。特例貸付については、貸付時に「社協が行うべき相談支援とセットとなった貸付ができなかった」という思いがありましたが、フォローアップ支援を通じて、ようやく社協らしい支援ができているという感想も聞かれました。

 

今後、ヒアリング先の取組みを都内全体に共有することで各地区での取組みに活かすことを目的に「特例貸付フォローアップ支援事業 取組み事例集」を発行します。各社協のフォローアップ支援の内容や任意事業を実施するに至った経緯、取組みの効果や今後の方針等を記した事例集になっています。

 

特例貸付フォローアップ支援事業 取組み事例集

 

一人ひとりが安心して暮らせる地域社会の実現をめざして

フォローアップ支援の取組みを開始して数年が経過しますが、特例貸付の利用後も生活に困窮している人は今もなお地域に存在しています。また、個人だけでなく、世帯で複合的な生活課題を抱えている場合もあるため、他機関との連携を密に行いながら、生活再建に向けた支援を行うことが求められています。あわせて、未応答の借受人が多く存在する現状においては、今まで以上にプッシュ型の支援を行うことが必要になります。

 

こうした支援を積極的にすすめていくことは、経済的困窮に対する支援だけではなく、地域の中で生きづらさを抱えた人や、身寄りがない人との関わりをつくることにもつながります。“何かあったら社協に—”。そうしたつながりをフォローアップ支援を通して広げていき、社協ならではの取組みをすすめていくことで、一人ひとりが安心して暮らせる地域社会の実現をめざしていきます。 

 

※1 お金を返すこと
※2 返済を遅らせること

 

福祉広報2024年4月号記事「新型コロナ特例貸付~貸付の記録と今後~」はこちら

特例貸付にかかる調査報告書はこちら (特例貸付制度の概要等もご確認いただけます)

取材先
名称
東社協 特例貸付担当
概要
東京都社会福祉協議会 貸付事業
https://www.tcsw.tvac.or.jp/shikin/index.html
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