
新井 英夫さん
体奏家・ダンスアーティスト。劇作家の寺山修司氏に影響を受けて演劇の道へ。舞台活動とともに、社会包摂に関わる現場でワークショップも展開。2022年筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の罹患が判明するが、その後も活動と発信を継続中。
写真 パートナーの板坂記代子さんと (撮影 渡邉 肇)
あらまし
- 体奏家・ダンスアーティストとして、国内外の舞台に立ちながら、教育や福祉といった社会包摂に関わる現場で幅広い人を対象に身体表現のワークショップに取り組んできた新井英夫さん。
これまでのこと、そして表現や社会に対する思いや考えをお伺いしました。
プラモデルみたいに完成形が決まっているものより、自分で自由に表現することが子どもの時から好きでした。教室で落語を披露したり、お楽しみ会で自作のコントをやってみたり。表現を仕事にしたいと思ったのはずいぶん先ですが、自由に表現することは自分にとってずっと大事なことだったのかもしれません。高校卒業後は演劇部の仲間と劇団「電気曲馬団」を立ち上げて、表現活動をスタート。ただ、劇場に足を運ぶ多くは知り合いで、既存の関係性のなかで演じ手とお客さんが出会うのは面白くないと思って、街中で大道芸をやり始め、その後は駅前広場での投げ銭形式の野外劇に発展していきました。パフォーマンスによって人と人との間に関係性が生まれることに面白さを見出すようになるなかで、1997年にカナダのダンスフェスティバルに参加したことを機に、世代や文化とか障害とかそれぞれの違いを超えて人と人とが出会い直すような場を世の中につくっていきたいと思うようになりました。そんな時に誘いもあって、舞台活動とともに福祉施設等の現場でワークショップをはじめていきました。

間違いも迷いも面白がる豊かさを
ワークショップでは年齢も障害のあるなしも超えてみんなが自由に身体表現をしながら、誰かと何かを一緒にやる面白さを感じてもらうことを大切にしてきました。例えるならお手本のあるプラモデルをみんなでつくるのではなく、材料を自分が提供するので、飛行機をつくる人がいてもいいし、オブジェをつくる人がいてもいい。“どれもみんな面白いよね”っていうような場をめざしています。誰かと一緒にやるからこそ予想できない面白い出口に行き着いたりして、こういうのって悪くないな、面白かったなぁ…と感じ合える時間になっていれば一番いいなと思います。コスパやタイパが優先されるAI時代に、間違ったり迷ったり、試行錯誤したりすることを面白がれるのはきっと人間だけができることだから。そうした寄り道や道草のような豊かな時間をつくっていきたいです。

誰もが表現することを諦めないでいられる社会に
2022年にALSの確定診断を受けてから、これまで以上に“にもかかわらず面白く生きる”ことを大切にしています。例えば、身体が不自由“にもかかわらず”笑いながら自由に生きたい!とか。マジョリティからみたら「無理だよ〜」みたいなことでも、実はどんな状況の中でも面白いことを人間は見つけられるんじゃないかと考えています。
アートだけじゃなく幅広い意味での日々の暮らしの中の表現もそうで、服を選ぶとか、これを食べたいとか、そういう気持ちをどんどん諦めてしまうと、その人らしさを実感することがなくなっていっちゃうと思っていて。というのも電動車椅子を使うようになったある時、夕日が背後から照らしているのに気づいて振り向いて見たら嬉しくて泣いちゃったんですよ。車椅子を押されている時は「ちょっと止まりたい」とか遠慮して言わなくなっていて、何か月も我慢していたことをその時気づきました。障害があっても病気になってもそういう自分らしさの表現を諦めないでいられる社会にしたいんです。だから自分は障害者とか健常者とか、サポートする/されるとかじゃなくて、一緒に遊んだ仲間みたいな感じで人と人とが出会い直せる場を生み出していきたいです。それぞれの「常識」から生まれた人と人の壁をほぐすことができるのが、表現やアートとか遊びの可能性だと実感しているので。
そして壁がほぐれた先にいつか、障害があっても頑張っているおじさんじゃなくて、ワークショップで一緒に遊んだのは面白いおじさんだけどよくよく考えたら障害がある人だった…みたいな感じで学校などで子どもたちに出会い直せる日が当たり前になったら相当嬉しいんじゃないかなぁ。









